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俺は俺だ。
それがあの人の人形であっても。
あの人に落とされて数日が経った。
俺は拾われた。
俺らと同じようにあの人に作られた種族に。
巨人、他の種族は彼らの事をそう呼んでいる。
彼らはとても穏やかで優しい。
神力は持っていないが、純粋な力がとても強く、自己治癒力も高い。
そしてなにより、彼らは神という種族と対等に渡り合うことができた。
しかし、穏和な彼らは神が何かしない限り何もしない。
元々どの種族よりも平和主義なのだ。
だから俺も彼らと共にいるのは心地いい。
他の人形は、めんどくさい主に連れ回され大変だろうが、俺はのんびり彼らを観てるだけでいい。
この時が続けばいいと思う。永遠に。
でも、世界は甘くない。
神は何度も天使を従えて彼等に喧嘩を売ってきた。
それだけならまだ良かったんだ。
だって、それだけなら天使が減るだけで済んだから。
何かが彼等をかき乱した。
俺はそれがなんだか知っていたけれど、関わることはしたくない。
それにこれは彼らの仕事、俺の仕事は観ることだから。
俺等の観たものは自動的にあの人へ送られる。
そうやってあの人は世界を観る。
もし本当にやばかったならあの人自身が動くはずだから、俺は動いてはダメなのだ。
俺は俺だ。
たとえ俺があの人の作った人形でも、
動くことが許されなくとも、
尊い平和を願っていても、
俺の中にある力が暴れ回り、抑えるのが大変でも。
だから俺は涙を流す、静かに誰にもバレないように。
感情という名の力は、いつも俺を俺だと認識させてくれる。




