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僕はきっと疲れているのだろう。
目の前には白く、フワフワした翼を折りたたんだ美しい少年がいた。
髪は金髪、瞳は綺麗な水色、その恵まれた容姿からは美しい声が言葉となって紡がれている。
「お姉ちゃんお姉ちゃん!ここに変なのがあるよ!」
その声に反応してやって来たのは、彼にそっくりな女の子。しかし彼女は彼と違い、髪の毛が肩甲骨辺りまでの長さだった。
「ホントだ!なにこれ!可愛くない!」
失礼な…
僕は可愛い人形だ。
「お姉ちゃん…そんなこと言ったらこれが可愛そうだよ!」
美少年くんも酷いな!!!僕をこれ扱いとかさ!
美少年くんは軽々僕を持ち上げると、自分のズボンのポケットに僕を詰め込んだ。
この子たちは天使達。製作者が作った天界に住む種族。
白くて綺麗な羽根はふかふかのふわふわで、基本的な移動手段はほとんど羽根をつかっている。
そしてなにより、彼らは神様に使えており、色々なルールで縛られているのだ。
天使聖約125項
天使は神から与えられた力以外の力を持ってはならない。
神が特に厳しく取り締まっているこの聖約は、天使達を苦しめた。
武力も知恵も神力も全て神に制限されていた。
これに逆らったらすぐさま処刑。
そうでなくても、わがままな神に処刑されることが多い天使達は、どんどん数を減らしていた。
特に、見た目が美しくない天使。
天使には様々な見た目のものがいた。
目が3つあるもの、腕が無数に生えてるもの、たてがみのあるもの、角が生えてるもの、足が八本あるものなど、数少ない天使でも、レパートリーだけはどの種族よりも多かった。そして、天使の全てに共通するのはただひとつ、白い羽根だけだった。
そんな天使たちは、たった一人の神に逆らう力もない。神はそれだけ強い力を持っていた。
何千人の天使が集まっても勝てないくらい桁違いな力を。




