番外・お后様になりたい!
私は王弟の娘、パスティーカ。
王都“デュラム”からパレッティナ皇帝トマーズの元へ嫁いで来たばかりだ。
まず外見は想像していた王様とは違いとても若い。
ふくよかでも、長い髭があるわけでもない。
間違った表現にはなるが可も無く不可も無く、毒にも薬にもならない雰囲気の方だ。
「最悪だ…!」
面会が済み、なんとなく皇様と二人で窓を眺めていた。
すると突然呟いたトマーズ皇に何事だろうと視線をやっていると、そのまま頭を抱えて沈黙してしまったのである。
「確かに兄の代わりに皇帝になるとは言った」
「はっ、はい…?」
以前父にトマーズ皇の兄君にあたる方は恋仲の女性の為に王位を譲られたと聞いた事はあるが、本当だったのか。
「僕は兄上を応援します!とも言った」
「あの?」
あっけにとられているとまだ愚痴があるらしい。
しかし私に言っているわけでもないだろう。
「だが僕も位などいらんのだ…」
「え!?」
私的な一人称は僕なのか、等どうでもいいところが気になってしまった。
「まさか本当に皇子の座を捨てて嫁さんとナカムツマジークなっちゃうなんて思わないじゃん!!思うわけないじゃん!!」
「トマーズ様!?」
壁に頭をガンガンと打ち付けている。
「うるせえ!!その名前嫌いなんだよ!!」
名前をお呼びしただけでキレられるとは思いもしなかった。
「…皇帝陛下お口が悪…素敵なお名前じゃありませんか」
どうやら陛下は普段は真面目な方なのに、頭に血が登ると口調が荒くなるようだ。
そういえば頭もまるでマグマのように赤い色をしている。
この国は白髪や金髪しか生まれないと噂されているが、違うのか。
「ふーん…お世辞にしても褒めすぎだろう」
「そんな…」
「気を使わなくてもいいんだぞどうせ腹の中ではトマト野郎とせせら笑っているんだろ」
なんて、この方は卑屈すぎるのだろうか。
「微力ながら私は貴方をお支えします」
「という馴れ初めがあるとかないとかだ」
「この親にしてこの子ありというやつですね」