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番外水面に移る

「おめでとう」

妹は明日許嫁と結婚する。

姉として祝福の言葉をかけた。

私は結婚出来ないから羨ましい。

そんな想いを隠しながら。

「私は嫌よおめでたくないわよ姉さん」

二歳下の妹、エステールは大袈裟に手を振ると、嫌悪の表情を見せた。


私の済む家は代々龍色水晶(りゅうしょくずいしょう)、別名エレメンタルクリスタルを使える家系で力の強い女児は水晶を守護する家系から結婚相手を選ぶ。

毎度守護する家を変える仕来たりがあり、私の妹は力が強く正式な後継ぎ、だから水の水晶を守護する家の男性が夫になる。


長女なのに、私に力がなかったばかりに、嫌な役目を妹に押し付けてしまった。

日々そんなことを考えて、悲しみに暮れていた。


結婚式当日、花嫁になるはずのエステールがいない。


「まさか婚約者に逃亡されるとは」

妹の夫になる筈だったヴィタンさんは苦笑いを浮かべている。


「代わりに姉である私が謝罪致します」

「いえ」

頭を下げようとするも制止された。


「私は構いませんが両親がなんと言うか…貴女はご結婚しておられますか?」

結婚式当日に許嫁に袖にされたことよりも、一族の心配をするなんて。

自分がなくてまるで私と似ている。

そんなことを思ってしまう。


「いえ、まだですが」

私は力が弱く、そして争いになる血族を二つにしない為、結婚を禁じられているから生涯独り身だ。

同じ年の友人達は次々恋人を作る中、私は誰からも隔離されていた。


暖かな家庭など、指命、シキタリ、伝承には存在しないのだ。


「では貴女と結婚させてください」

「それは貴方が私と、ということでしょうか?」

妹が放棄したのなら私が継ぐ、それは願ってもない話だ。


「この状況からでは妹御の代理、そう思われても仕方がないですが…」

「わかりました」

彼が最期まで言う前に了承の返事をする。


「自分で聞いておいておかしな話ですが、いいんですか?」

なんだかヴィタンさんは冷や汗をかいている。

一体どうしたのだろう。


「貴方の妹に対する気持ちは知りませんが、妹が貴方を想っていなかったなら妹から姉に乗り換えたなんて思いません」

「はい、個人的な好意は皆無です。まったく、ありません」


「姉さん結婚してしまうんですか?」

「ええ、ここから去るわけではないのだからヴェルタァクも寂しくないわ」



――――彼女の幸せは彼にとっての失恋の日だった。

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