大団円~extragoodlast
ティードラァを退けて一週間が経過して、このまま何事もなく、日常に戻れると、私達は確信していた。
「倒したはずなのにまたドラゴンが!?」
今朝方、パパはドラゴンの気配を感じたらしい。
そうして全てを狩ったと言っている。
ドラゴンを放つのはティードラァ
なのだけれど、彼はたしかに消えた筈。
「ドラゴンといったらアイツしかいないけどさあ、本当にティードラァが復活したわけ?」
私もインキーノも半信半疑だ。
「幻覚でも見たんじゃない?」
イレーサーも疑っている。
「確証はないがティードラァの可能性が高いね
ただ、テイドの具合はウォルが看ている筈だ取りついたわけではないと思う」
パパも実感がないようで、表情から焦りが見てとれる。
「テイドさんていうのね…」
なんだかティードラァの名前を縮めたみたいだと私は笑う。
「ティードラァに似た名が奴の取りついた原因かもしれない」
取り憑く理由を名前で決めるなんて、少し変だわ。
「そうなの?」
「恐らく…父はこれを見越して?」
パパの声は小さくなってよく聞き取れなかった。
「とにかく気になるならまた城に行くしかないよ」
「恐ろしい悪魔野郎も連れていかないと」
「悪魔?」
「皇子の側近のこと!」
白い服のクリアが悪魔、なんて酷い言われよう。
インキーノは彼に苛められでもしたのかしら。
「いいですよ悪魔野郎もついていってやりますよ」
クリアはインキーノを鋭い目で見ている。
「聞いてたんだ…」
インキーノはガタガタ震えながら私の背後に回る。
「人聞きの悪い…聴こえたんです」
たしかに悪魔のようである。
「ほら倒しにいこう!!」
インキーノがまた一人で突っ走ってしまった。
ティードラァの城へ、私達はたどり着いた。
「城内には命に関わる危険が待っていますよ
それでも行きますか?」
クリアは私達の心配をしてくれている。
「大丈夫なんて言えないけれど、それでも行かなくてはダメなのよね?」
毎日ドラゴンを放たれているなんて、パパに聞くまで知らなかったから。
知らないままでいるなんて、そんなの駄目だと思う。
ちゃんと知ることができてよかった。
「誰だよいきなり倒しに行こうなんて言い出した奴は…今までもオッサンがドラゴンの処理してたんだから大丈夫なんじゃん?」
「…この先もドラゴンを倒せる補償はできない」
「え?」
長い間、竜を退けたのに、どうしてそんなことをいうのかしら。
「オッサンももう年だから引退的な?」
インキーノは笑い飛ばした。
「生まれは普通の人間だが、実は数十年ほどある人のおかげでこの姿でいられるんだ」
「まさか…その人が死んだなんて言わないよね?」
イレーサーは何かを考えている。
「気がついたかもしれないがその人の名は言わないでおく」
「…やっぱり倒しに行かないといけないんだね」
皆、沈黙して城に入った。
「ははは…クリア、久しいな」
ティードラァではない、別の誰かが破壊された玉座の中心に浮いていた。
背中に四つの異なる翼が生えて、白い布を頭にかぶり、優しい微笑みを称えている。
しかし、この世界とはふさわしくない、そんなことをその存在自体が告げている。
「やはりお前かゴッド…!」
そしてどうしてクリアはその違和感のある存在が何かを知っているのだろう。
「別の世界の者が私にたどり着くなど、許されない…」
自分からここに来たのに何を勝手なことを言っているのかしら。
「ゴッド…貴方が自らここに足を踏み入れたのは何故です?」
あのクリアが怯えている。
彼は…ゴッドという男はそれほどスゴい力をもっているの?
『嫌な気配が…』
ふと、クリアがいっていたことを思い出す。
もしやそれは…ゴッドことではないの?
『余は洗脳などしておらん』
不可解なこともちらほらあって、ティードラァがやったと皆思っていたけれど、それもゴッドがやった可能性がある。
「また会えるよ…憎き空間の者共」
ゴッドの姿が消える。
「待て!!」
パパがゴッドに剣を投げつける。
しかし剣は見えない力で跳ね返った。
城を後にして、しばらく皆無言になっている。
「ゴッド…まさか神が絡んでいたとはな」
ようやくパパが口を開いた。
「ドラゴンを使ってなにをしたかったんだろうね」
イレーサーも疑問に思っている様子だ。
たしかにゴッドは私達を呼び寄せるためにドラゴンを放ったのかしら。
そもそもどうして憎いなんて、言われたのかわからない。
神様が私達を作ったと言われているのに、まるで私達とは関係ないと言いたげだった。
「また会えると奴は言っていたが…」
「いずれ、またゴッドが来るの?」
ゴッドは攻撃を跳ね返す力をもっている。
そんな相手に戦いを挑まれたら勝てる筈がない。
「…クリア?」
「いえ、奴は恐らく誰にも倒せない」
あんなに強い力を持ったクリアがそんな発言をするなんて信じられない。
「いつも高を括っているアンタが弱気な発言をするなんてねー」
インキーノも同意見の様子。
「それにしても、どうして皇子の側近が神様と知り合いなわけ?」
インキーノはクリアをじっとり、疑いの眼差しで見ている。
「まあまあ…お友達ではないようだし、ただの顔見知りではないようだが…」
パパがその場を取りなして、くれたので、クリアのことは一先ず置いておく。
「次にゴッドが来た時、それはこの世界がもう一つの世界にとって変わる日なのでしょう…」
私に意味深なことを囁いて、クリアは一人で帰っていった。
ティードラァはもう来ないとしても、次はゴッド、この先も気が抜けない日々が始まりそうな予感。
「そう、どんな手を使っても全てを少しずつ崩壊させる」
直に制約や理など無となり。
総てを我が手中に納める事も容易い。
「君は向こうで見ているかな…?フロマージェ」
これにて一期は完結です。
引き続き続編のカラーレスクリアをお楽しみください。