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48・絶望の消去、失ったⅣ

「シャーレア怪我は…くっ…」

急にイレーサーが膝をつく。


「イレーサー!?」

彼がこんなに苦しそうにしている姿は初めて見た。

知らぬ間に怪我をしていたのかと心配になる。


「魔力を使いすぎたんじゃないかイレーサー」

「そうだね…仕方ない魔力補充しに行くよ」

イレーサーは疲れた身体を引きずりながらこの場を去る。


「そういえばペンネスは?」

「ペンネルテス卿なら持病の薬をインキーノから貰うと言っていましたよ」

さも言われて思い出したかのような表情で、クリアは簡潔的にこたえる。


「ただいま」

「魔力、どうやって回復したの?」

「金。」

魔力は回復したのに別の意味でげっそりしている。


「イレーサー、単刀直入に聞きます、貴方は犯人が誰なのか、もう知っているのでは?」

あら、クリアは仮にも貴族のイレーサーを呼び捨てにしている。

嫌ってそうな人にも礼儀正しいのに珍しい。


あまりに外に出ないから貴族だって事を知らないだけかしら。


「あれは兄さんだよ」

「ドロウノ!?」

クリアはイレーサーの答に驚いているが、口を閉ざしたままだ。


何か気になることがあるのだろうか、途中で割り込む混乱するから?


「正確にはドラウノの方…十年くらい前にティードラァとか言う悪龍王に操られて

以来二つの人格でぐらつくようになってしまったんだ」


「性格が二つなんて気がつかなかったわ」

ドロウノとはあまり話した記憶がないけれど、特に変な素振りは見られなかった。


昨日と今日、私の命を狙った人がドロウノなら、平気で顔を合わせるなんて出来ないと思う。


「ティードラァ!?なぜそれを先に言わないんですか」

普段は取り澄ましたクリアが珍しく、驚きの声を上げげる。


「二人とも、ティードラァを知っているのかい?」

先ほどまで黙っていた彼がついに会話に参入する。


「愚問ですね私は奴が生まれる前から知っていますよ」

そもそもティードラァって誰なのかしら。


「冗談でしょあんたが言うと冗談に聞こえないけど」

イレーサーが頭を抱える。


「勿論あいつは肉体があるわけではないんだ。

私の双子の弟の肉体を乗っ取って、国外れの孤城にいる」


彼の言った衝撃的な言葉に、私とイレーサーはしばらく無言が続いた。



そしてしばらく言いたい言葉を考えまとめて、彼に謝ることにした。


「ごめんなさい」

どんな本を読んで言葉を学んでも、結局それしか言えない。

お手本にしよいにもいまの私の心と同じような心の人物は物語りの中にはないから。


「私こそ黙っていてすまなかった

こんな怪しい男が父親面をしていて気味が悪かっただろう?」

なぜこの人は自分を卑下するのかしら。


「気味が悪いなんて思わないわ!大事な家族だもの」

私は手を取る。


「もう一度パパって読んでもいい?ヴェルタァクは言いにくいから」

「…お前ががそれでいいなら」

パパは嬉しそうだ。


「仲直りしている所悪いけど、ティードラァを倒しに行こう」

イレーサーが突拍子もないことを言い出す。

インキーノならいいそうだけれど、慎重な彼が敵地に率先して行くと言うなんて。


「でもエレメンタルクリスタルは一つしか揃っていないのよ!?」

万が一ティードラァに太刀打ち出来なくて、倒したいと願おうとしてもクリスタルが集まっていなければ、全員生きて帰れる筈がない。


「もうクリスタルなんかに頼ってる暇もないし…」

「本当は置いて行きたいしかしお前が奴等に捕まると本末転倒だ」

確かに丁度一人になったところを狙われた。


どちらも危険なら三人の帰りを待つより側にいたほうが安全だろう。


「インキーノとかいう雑魚魔法使いも連れて行きましょう」

クリアは言った。

「誰が雑魚魔法使いだよ!!」

タイミングよくインキーノが現れる。


「つーか魔法使いでもないのにあんたもラスボス倒しに行くんだ?

ただの皇子の側近の人間なのに、悪いけどいる意味がないというより足手まといだよねー?」

いつから話を聞いていたのかは知らないけれど、インキーノの見解はもっともらしく間違ってはいない。

しかしさっきの力を見ていれば、同じ事は言えなかっただろう。


「しかたありませんね…取り合えず手頃な弓を寄越しなさい」

クリアが何かを見せるようだ。


「的に確実に当てる特技でも披露すんの?」

インキーノが挑発しつつ弓を手渡す。

クリアは受けとり、庭の気にむけて矢を放ち、中心を射る。


すると木が折れるどころか粉々に砕け、木屑や葉が飛び散る。


「何こいつ魔法使いよりヤバイかも」

インキーノはガタガタと震え、家の裏に避難し、顔だけを出す。


「ひとまず役割をまとめますか」

クリアが手を叩く。

「僕は魔力と体力が不安定だからアテにしないように」

体力がないことはもちろん知っている

「俺は魔力と体力はあるけど魔法は苦手、回復ドリンクとかドーピングハーブスープなら作れるよ!」

インキーノが手に持っているキラキラした瓶がかわいい。


「見ての通りやはり武器は大剣だね」

パパは背負った剣の持ち手に触れながら言った。


「クリアはさっきの矢ね」

空からの光は隠したいみたいだから言わないでおく。


「しかし本来矢を武器にしている奴は他に…」

「どうしたの…?」

やっぱりクリアは謎が多すぎてわからない。


「これで十分でしょう…おや?」

クリアは何か見つけたのだろうか、私は視線をたどる。


「小さいドラゴン?」

インキーノが首をかしげる。


すっかり忘れていたミニドラゴンちゃん、無事でよかったわ。


「あははーかわいいなーこいつー」

インキーノはミニドラゴンの小さい手を摘まんで動かした。


「くだらないことやっている暇があったら早く倒しに行こう」

イレーサーはどうしてこう急かすのかしら。

すぐティードラァに世界を支配されるわけでもないのに。


「奴さえ倒せばもうシャーレアが狙われることもないんだから」

もしかして私のために急いでいるのかしら。


「そうしたらお守りから解放される」

期待して損したわ。


「先には行かせない」

木から緑のコートの青年が下りた。


「兄さん!!」

紛れもないドロウノである。


「お前達ではティードラァになど敵わない…シャーレアこれだけは信じてくれお前を殺そうとした者はオレじゃない」

ドロウノは操られているわけでも、嘘をいっているようにも見えない。

真剣そのもので、本気でそういっている。


「この後に及んでシャーレアをたぶらかそうなんて見損なった」

「兄さん、言い逃れは出来ないよ…シャーレアに十年前向けたナイフと、今日向けたナイフの柄が同じなんだから」

イレーサーが錆びた銀のナイフときれいな金のナイフを床に捨てる。

よくみると持ち手に葡萄の模様があった。


「この銀色のは確かにオレが使ったものだ

だがそっちはオレのじゃない」

ドロウノは首を横に振り、否定した。


「父さんの武器は劇薬、ならこんな獲物使うとしたら兄さんくらいだろう?」

イレーサーは酷く動揺している。


「…そうだ両方オレが用意した。これで済む話だ」

なにを言っても聞く耳をもたないイレーサーにドロウノは投げやりに答えた。


初めは銀のナイフは使ったと言っていたけれど、自分のだとは言っていなかった。

急に変えたのは嘘が見破られたからか、本当のことを言っても信じてもらえない苛立ちからか、わざと自分に矛先が行くようにも見える。


「くっ頭が…」

「兄さん!?」

操られていたという話しは本当だったようで、目に光がない。

戦うことになるのかと、皆が構える。

けれども私たちへ攻撃はせずすっと姿を眩ませた。

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