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43・痕跡

「あー頭がガンガンする…酒も飲んでいないのに」

インキーノは起きがけにまるで二日酔いのオジサンのごとく頭痛を訴えた。


「風邪でもひいた?」

「うーん風邪とは違う気がするけど…あ、治った」


この様子だと彼は昨夜は快眠だったようだ。


謎の男が投げ捨てたナイフを拾って確認してみたけれど、持ち手に葡萄のような絵が彫られて、金色の高そうなものだった。


曇りのない刃は陽光を浴びキラキラ輝いている。

見られるとなんだかまずい気がしたので、ハンカチに繰るんでポケットの中に入れた。


「シャーレア、おはよう」

「おはよう」

ドロウノはあくびをしながら起床してくる。


「眠そうね」

「魔術についての本を読んでいたら一睡も出来なかった」

“インキーノが対抗意識を燃やすくらい、魔法の得意そうなドロウノでも魔法を学ぶ為に読むのね”

シャーレアは関心してしまう。


「なんだ…ナイフか?」

ドロウノは床に落ちているナイフを拾う。

それは謎の男が投げたものと同じデザインのものだった。

ナイフを手にしたドロウノが一瞬表情を険しくしたのをシャーレアは見逃さなかった。


「そうだわドロウノ…私、あの人に謝ろうと思うの」

父親でないと知ってしまった今もうパパとは呼べないだろうけれど、このままにしておくわけにはいかない。


「そうか…まあ頑張れよ」

「俺もついてくよ、仲直りできなかったら今度はぜひ俺の家に!」

ドロウノは手をふって二人を見送る。


「いない…?」

家に帰ってももぬけの殻だ。


テーブルに小さな箱と書き置きがある。


“留守を頼まれたけど見たい演劇があるので帰ります、この箱をシャーレアが帰ったら渡してね”


父は出掛けていて留守番を頼んで叔母様たちは帰ったらしい。

仲が悪そうだったけれど一応信頼はしているのね。


「あ、俺ちょっと用事思い出した」

「インキーノ!どこへいくの?」

シャーレアの問いかけにも答えずインキーノはそそくさと走っていく。


「はあ…」

いつまでもリビングにいても仕方がない。

自分の使っていた部屋にある本でも読むため移動。


扉を開くと鍵はかかっていない。


きっと自分が抜け出してから部屋にいないことに気がついたヴェルタァクがマスターキーで開けたのだろう。

そうシャーレアは考え、留守なのも自分を探しているから、ではとうっすら思う。


しかし窓が開きっぱなしなのはおかしい。

そんなことを思っていると、背後から笑い声が聞こえ、シャーレアはびくりと驚く。


「きゃあああああ」

手元にあった本を投げつけ、足止めさせている間に窓から飛び降りる。

室内よりは外のほうが人目につくのでもし以前のように草が助けてくれずに怪我をしたって命には代えられない。


「ニゲルナ…」

首に鎌をつきつけられ、絶対絶命。


「シャーレア!!」

ヴェルタァクは大剣で男を容赦なく斬る。

「…逃げさせないよ」

イレーサーが手にバチバチと光る糸を持って、男を縛り上げた。


「捕えたましたか」

クリアが二人に拍手をする。


「なっ…!」

男はイレーサーの手にある拘束を簡単に弾き、粉々にした。


「…腕が鈍ったんじゃないか?」

「ヴィタン…」

男はヴェルタァクのほうを向き、シャーレアの父の名を語る。


「悪いが人違いだよ…アイツと私では全然顔が違う…間違えるなんて眼科に行ったほうがいい」

ヴェルタァクは石を鉄板に投げつける。

男が音に反応している隙に手から火を起こす。


手に纏う炎、大剣といいそんな物をなぜヴェルタァクが持っているのかわからない。

シャーレアはただ驚いている。


「シャーレア、黙っていて済まない私は普段、敵の放つ竜を狩っている…そして敵の襲撃からお前を守る。これが私の仕事だ」

あまりの襲撃にシャーレアは何も言えずヴェルタァクの背を見つめて、いま彼がやることを真剣に眺める。


「アイツ、さっきペイプラーの攻撃をまともにくらっていたのに…布に傷が一つもない」

イレーサーは顔をしかめた。


男はヴェルタァクの炎を受ける。

しかし、燃えたのは男の分身であった。


男がローブを翻しながらシャーレアに無数の刃を投げる。

あまりの速度にヴェルタァクもイレーサーも追い付けない。


「本当は、こういう干渉をしたくないんですが…」

クリアはシャーレアの後ろに立つ。


無数の光の槍がシャーレアに飛んだ刃物を落とす。


苦肉の策に、投げた鎌は男に跳ね返って当り、地面に突き刺さった。


男はダメージを受け、分が悪いと悟ったのか一瞬で姿を消した。


「今の…クリアがやったの?」

シャーレアは目を見開きながら、クリアに尋ねる。

ヴェルタァクやイレーサーは光の槍に気を取られており

クリアとシャーレアの会話には気がついていない。


「はい、二人だけの秘密ですよ」

クリアは口角を上げ、耳元に囁く。

色々と聞きたくはあるが、話してくれそうもないので諦めた。

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