39・罪と龍の巫女
「ここは去ったほうがいいだろう重要な話のようだ」
ペンネスはイレーサーを連れてリビングを出る。
「なら僕も…」
なぜか叔父様まで付いて行った。
「自分の旦那さんに話していないんですねエステールさん」
「言わなくても気づいてるわよ」
叔母様には叔父様にも話さない秘密があるようで、どうやらそれを話してくれるらしい。
「今、クリスタルの破片を持っているでしょう?」
「えっ!?」
唐突に驚いた私は椅子ごとガタリと後退する。
叔母様がどうしてクリスタルの事を知っているのだろう。
「私の姉…貴女の母がなぜ亡くなったか…話していなかったわね」
母が亡くなった理由、幼い頃の私は知らなかった。
「私と姉は…それを封じる…というより酷使できる唯一の血の家系を引いていたの」
そんなことを出来る人がいたなど初耳である。
「…私は力が強くて姉を差し置いて一家の次代筆頭なんて期待されていたの」
叔母様はすごい才能があったのかと、理解した。
それで、母はどうしたのだろう。
「わかりやすく話をまとめられなくて悪いわね…えっと結果を話すと私は結婚が嫌で実家を飛び出したのよ」
幼い頃から叔母様がなぜ実家に帰っていなかったのか疑問ではあった。
それがようやくわかって合致がいった。
「結婚式当日に窓から飛び降りたわ」
普通なら怪我ではすまない。
「ああ、誤解しないで一応木を伝って…いたわ?」
なぜ疑問系になるのか、実は地面にまっすぐ落下したとか言わないだろうか…
今でも落ち着きのない叔母様ならやり兼ねない。
「その結果キルテズと私は結婚した…そして龍結晶の巫女の血を継いだのはその力が弱い姉だったの」
つまり母の血を継いでいる私はその末裔、ということになるのだろうか。
けれど母の力が弱いならまったく私には遺伝していないのではないかと思う。
「お母様の力が弱かったなら…私にはその力はないの?」
「いいえ、シャーレア、貴女はとても強い力を持っている。貴女の…祖母に当たる人は最も強い力を持ってたから…隔世遺伝のようなものかしらね」
そんな強い力を持っている実感はない。
「本来、結晶の守護を継ぐ者は自然と結晶を持つ一族に惹かれるもの」
結晶とはクリスタルの欠片のことだろうか、一族となれば沢山いるのではないか。
「私には親の決めた許嫁がいたの。ヴィタンという水の結晶を持つ家系の次男よ私は彼に惹かれなかった…だからその時に知ったの力があっても私は継ぐべきではないと」
先ほどは結婚が嫌だから家を出ただけだと思っていた。
それにはちゃんとした理由があったのだということになる。
「私がいなくなってから姉は後を継いだの…私の許嫁だった男と結婚して、貴女を授かったのよ」
「え?」
叔母様がパパの元婚約者?
思わずパパを見るが顔色一つ変えずにコーヒーを飲んでいた。
「何代も続いたペイプラー家の巫女は龍の結晶を使うだけでなく龍も封じていた…命を失うほどではないにせよエレメントの力の恩恵は弱まる程度にね」
龍を封じるなんてまるで物語りのような話で、夢でも見ている感覚に陥る。
「つい10年以上前封印は何者かに弱められてしまって…私は半分力を使って直したわ
でもその封印は8年前に再び解かれそうになった。そこで力の弱い貴女の母に力を与えた貴女の父は共に命を捧げてなんとかしたの」
力を半分無くした叔母様には直せない封印は、私の両親の手によって―――――
なら、ここにいるパパは誰なの。