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35・小さなドラゴン

『絵本を読んで!』

とある幼い黒髪の少女は、大好きな父と母と暮らしていた。


『ああ構わない』

父は優しく微笑み、本を手にした。


“昔むかしここではないどこか遠く離れた砂漠に呪われた国がありました。その国に後継ぎはたった二人、おりました。

後継ぎとして選ばれたのは第二皇子でした。

しかし国の呪いを絶つべく自らの代で皇の血を絶やそうとする第二皇子は、ひっそりと城を抜け出して、旅の途中で美しい姫君と出会います。

姫は人間、皇子は竜族という種族の壁はありましたが、いつしか二人は恋に落ちたのです。

姫を自国に連れて帰り、妃に迎えようとした皇子は、それを良しとしない龍皇帝や民の怒りを買います。

龍皇帝は皇子に別の奥方を取らせ二人を引き裂いたのです。

しかし姫は人間離れした不思議な力を持っていることを知った第一皇子は姫を拐いました。

それを知った第二皇子は姫を救いだして共に逃げのび幸せに暮らしました。”


『どうだった?』

読み終えた父は少女に感想を聞く。


『かんどうしたわ!!何度読んでもいい話ね!!でも…』

少女はもう少し物語を楽しみたかったと残念そうに項垂れる。


『絵本版だから仕方ないな』

『続きがあるの!?』

『ああ、きちんとした本の物があるんだ』

父親は棚から一冊の本を取り出して少女に見せた。

ーーーーーーーーーーー


「お母様お久しぶりです。今日はお母様の好きなパイを持ってきたの」

バスケットから木の実のパイを取り出して花と共に墓前に添える。

「もうすぐ生き返らせるから待っていてね」

早く残りのクリスタルを見つけて願いを叶えなくちゃ。

決意を新たにし、馬車に戻ろうとした。


少し歩いたところで、なんだか妙な違和感を覚えた私はその場に立ち尽くした。

嫌な気配と優しい空気に挟まれた感覚がする。

そんなの今までに体験したこともない。


まさか近くに何かがいるのかしら。

危険だとわかっていてもそのまま去ることは出来ない。


それを確かめに行かなくては。


ーーーーーーーーーーー

ペイプラーはイレーサーの協力を得て毎日の日課であるドラゴン退治をしていた。


「ようやく片付いたかな」

ドラゴンの姿が見えなくなった為、ペイプラーは大剣をしまって一息つく。


「はい、行かなくていいの?」

イレーサーは小さなドラゴンの首をつまみあげてペイプラーに渡す。

「何に」

肩に乗せるのに丁度よいサイズのミニドラゴン受け取ったペイプラーはミニドラゴンを見て少しだけ笑うと目だけ動かしてイレーサーを見る。


「今日は彼女の命日なんじゃなかった?初恋の人なんでしょ?」

シャーレアは母親の命日に墓参りに向かっただろうとイレーサーは言う。


「イレーサー、君はまるで彼女が死んだとでも言いたいのかい?縁起でもない…」

ペイプラーはただ乾いた笑みを浮かべる。

「そうだね…」

ペイプラーは愛しく想う相手の死を受け入れられていない。

もしも自分が彼の立場なら命を断つほど悲観していただろう。

同情のような哀れみのような気持ちになりイレーサーは何も言えなかった。


「このドラゴン、小さくてかわいいだろう?」

ペイプラーはミニドラゴンをまるで犬や猫を持つようにして抱えてイレーサーに見せる。


「売ったら高そうだね…このまま売るかバラすか」

イレーサーは表情一つ変えずに言う。


「シャーレアにプレゼントしよう」

ペイプラーはミニドラゴンの肩手を持つともう片方をイレーサーに持たせた。

ミニドラゴンは歩くたびぶらりと揺れる。

「これ、クリア君が言っていた謎の事件らしいんだが一度やりたかったんだよ」

ペイプラーは満足した様子でシャーレアにプレゼントしたらどんな反応をするか考えている。


「仮にもドラゴンを屋内で飼うなんて…凄腕ドラゴンマスターには関係ないか」

むしろこれまで家でドラゴンを飼育していなかったことのほうが意外だったとイレーサーは思う。

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