34・旅路
早朝、シャーレアは肩にフード付のローブをかけ屋敷を出た。
「出掛けるのか」
丁度玄関付近にいたペンネスはミニパイナッツーに水をやりながらシャーレアに声をかける。
「お母様のお墓参りに行くの」
シャーレアは庭の花を摘み取ると、茎をリボンでしばった。
「…これも持っていくか?」
ペンネスは手に持っていたミニパイナッツーを花の変わりに差し出そうとする。
「気持ちはありがたいけれど、それはペンネスが育ててあげないと」
にこり、シャーレアは微笑む。
「では来年、墓参りに同行してもいいだろうか?」
「もちろん!」
「馬車が来たか」
しばらく玄関先で談笑をしていると蹄鉄や車輪の音が屋敷に近づいて来た。
「ひさしぶりだな!シャーレア」
「フィード!いつもの人は?」
再開を喜びつつ、いつも利用している馬車の御者ではない事にシャーレアは困惑した。
「腰を痛めて寝てる」
「それは大変ね…」
座り仕事だから腰に障ったのだろう。
「ペンネス、行ってくるわ!」
シャーレアは手を降りながら馬車に乗り込んだ。
ペンネスは手を振り返す。
馬車が見えなくなると庭に戻って水やりを再開した。
―――――
「今日はドラゴンの数が少ないな」
「向こうもドラゴン生成疲れたんじゃない?」
毎日ティードラァの魔力により産み出されるドラゴンは山を越えて国を襲撃しようとしているが、常にペイプラーやイレーサーがそれを阻止している。
それが日増しに力が弱くなり数も減って来ているのだ。
「たしかにこちらが素材を回収して儲けているのに対し彼は魔力が減るだけだからしかたがないね」
「いくらドラゴン界の王でも初日に飛ばしまくってたからねよく魔力が続いたもんだよ」
長きに渡り此方に威嚇し続けたティードラァもそろそろ衰え始めたのではないか、イレーサーにそう語る。
「いくら素養があってもペース配分がなってないとスタミナが持たないさ」
「アイツも浅はかだね毎日どうぞレベルあげに使ってと言わんばかりに召喚してくる」
イレーサーは奴よりも良い作戦があるという。
「ああ、数年に一度のほうがいい魔力が高まってより強いドラゴンを呼び出せる…争いが始まったあの日のドラゴンはしらみ潰しに倒したってくらい辛かったなあ」
思い出しながらため息をつくペイプラー。
「おかげで魔力の最大値のみならず冒険者クラスに腕力あがったよ」
イレーサーは細い腕を回しながらいかにも見ろと云う態度をとる。
「シャーレアの腕より細いね」
「明日言っておくよ」
イレーサーは黒い笑みを浮かべた。