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4・着飾ったドレス

「あ…さっきはありがとう!」

シャーレアは白いローブの女を見掛けると満面の笑みを浮かべて感謝の言葉を述べる。

「まさか気絶してるあっちが皇子だったなんて思わなくて」

正確には気絶ではないしシャーレアが悪いのだが彼女の目には着飾っている、イコール、皇子の方程式が出来ているのだろう

白いローブの女は何も言わずにシャーレアの手を引いて空き部屋の鍵を閉めた。

―――――

『ちょっと待って!!私も参加します!!』

叫びながら勢いよく扉を開いたのはローブを着た少女だ。


『お嬢ちゃん、悪いけど締め切り時間過ぎてるんだ』

“皇子も帰る気だったみたいだし”と警備の男は呆れたながら言った。


『そこをなんとか!!』

少女は必死に懇願する。

『どうせ他に何人も候補が居るしお嬢ちゃんが参加してもしなくても変わらんよ』

皇子には結婚する気がない、こうまであからさまに拒否されては尚更だ。


『なんですって!?』

さすがに頭に来てしまったのか少女がローブをバッと脱ぐと黒くさらりとした長い髪が散らばる

するとその場に居る誰もが目を奪われ、同時に疑った。


金髪か銀髪だけのこの国に、異質である髪色をもつ者がいるのだから当然だ。


それにしても、珍しい女が目の前に現れるとは―突き飛ばされた痛みはその驚きのお陰なのかまったくなかった。


「大丈夫ですか殿下」

側近の男は少し飽きれながら皇子を見る。


「何がだ」

カラーズには普段の覇気がなく、ただぼんやりとお茶を飲もうとしてカップを傾けて頭にかけている

彼は悩むといつもこうなるので皆は騒ぎ立てない

「皇子様あああ!?大丈夫ですかあああ!?熱くないんですか!?」

彼を除いて――――

「なんだこのうるさいやつは」

カラーズは面倒そうな顔をしている。


「失礼ですが、殿下…ハーブ臭いです」

側近はあからさまに嫌そうな顔をして鼻をつまむ


「ハーブが臭いだと?そんなわけないだろハーブは悪臭を消す薬草、臭い筈がない、貴様は俺のハーブが気に入らないと言いたいのか?」

カラーズは激怒する寸前だ。


「いえいえお気に為さらず私がハーブ嫌いなだけです」

敬語なのに敬いの欠片も感じられない態度と内容、慇懃無礼を地で行くとはこのことだろう。

皇子はその冷酷な印象とは違い簡単に部下を裁くようなことはしない

ただしこれは彼だから許される接し方だ。


「皇子がバカなら従者が真面目とか逆ならよくあるけど、ここの場合はどっちにも問題があるな…」

使用人はひそひそと語りだす。

二人は暫くハーブの話で争ってから話の論点を戻した。


「で、あれは新人か?」

カラーズは先程慌てていた男を目線で示す。

「殿下…見れば、ご覧になればわかりますでしょう?」

砕けた口調から更に丁寧に言いなおす。


皇子の癖に驚くという事はやはり新人だろう。


「まあいい…」

―――――

シャーレアはローブの女に恐る恐る訪ねる。


「あの…どうして鍵をかけたの?」


彼女は何か危害を加えようとしているのだろうか、シャーレアは城へきて

というより生きてきて初めて恐怖というものを感じる。


「アンタ、そんなドレスで皇子を落とせると思っているのかな?」

彼女は勢いあまってローブを脱いだ。

突然豹変した女、どこかであった事がある気がしたのだが――――


必死に思い出そうとする。


『まってて副賞!』

『そっち!?』

断片的に浮かんだのは昨日の見知らぬ女の声

「もしかして貴女…」

もしや、あのとき聞こえた声は彼女なのだろうか


「そうそうあれ。昨日アンタを見かけたんだ」

そう言いながらスッと椅子を引いてシャーレアを座らせた。


「ありがとう」

裕福な家庭で育った為、そういう扱いには馴れてはいるが、やる相手によって変わるのだろう。

しかも相手は同性だというのに

ドキッとさせる仕草をしてくる。


まさかこれは禁断の恋だろうか

「それでどうやって皇子を落とすか、まず清楚なのはいいけどやる相手によって変わる…」

何かをアドバイスされているのはわかるが何も頭に入ってこない


「いやいや、そんな趣味はないわ!異常よ」

手をバタバタさせながら考えていることを吹き飛ばす。

「正常だよ正常、男は単純だからね」


まずい、なんの話をされていたんだろう。

「アンタ、話聞いてなかっただろ」

図星である。彼女のいうとおりまったく聞いていない


「あ…紹介が送れてた…私はシャーレア、貴女の名前は?」

彼女は暫く考えた後ようやく名をつげた。


「…インティーナ」


聞くまで答えてくれなかったということは

名前を言いたくなかったのかもしれない

「あまり好きな名前じゃないから言ってなかった、悪いね」

そんなに変な名前でもない。


「ご両親がどういう意味で名付けたかはしらないけどいい名前よ?」

一応余計なことを言わないように気を付けた。


「意味ね…はは…そんなことよりこっちに着替えて」

先程と少しデザインの違う服を渡される。


「なんで!?やっぱりチョーカーがダメだったの?」

やはり全部を白や薄いピンクにしておけばよかったのだろうか


「ハッキリ言ってアンタに合ってない」

インティーナはビシっと指差す。


「え…サイズはぴったりだけど?やっぱり色とか…」

我ながら豪華に着飾っているつもりだ。


「サイズじゃないっての!」

インティーナはため息をつきながら話を続ける

「あと色は問題じゃない、チョーカーは論外だから」

じゃあ何が問題なんだろう、宝石が少ないとか?


「あのさアンタ何歳?」

どうして今年齢を聞くんだろう。

「14才だけど」

候補者に年齢制限はないしそれはドレスの話に関係あるだろうか?


「そのドレス、胸元ザックリすぎる!!」

インティーナは頭を抱えながら服を指差す。


「ダメなの?」

私はますますわからなくなってきた。

「アンタ清楚をなんだと思ってんだ?」

清楚はよくわからないが男性は清楚が好きらしいのだけはわかっている。


「清楚ってのは白けりゃいいってもんじゃない!」

なぜ彼女はこんなに怒っているんだろう

あ、ファッションにうるさい人――――?


「清楚ってのはそんな風に肌を見せたりしないんだ」

清楚は女性神官のようなものって考えればなんとか…


「それに他の参加者はほとんど大人の色気で勝負してる女ばかり、だから割かし少ない方面でアピールするんだ」

皆とは違う方面でアピール?


「皆と似せていたらうもれちゃうってこと?」

よくわからないけど人の真似をしないほうがいいのだろうか


「そうそう、わかりやすく言うと勝つのは一人、負けるのは大勢ってこと」

彼女の話でようやくわかった。


勝つのはきっと唯一無二のオーラを持った人、誰にも負けないくらい強い人なんだと――――――

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