3・飛び入り参加
未来のお妃探し当日、城では皇子が退屈そうにしている。
《こんなもの、茶番でしかない》
皇子はイライラを募らせなとうとうキツめのハーブを炙る嫌がらせをし
挙げ句には“こんなもの乗り気ではなかったのだ”と従者に詰め寄る始末。
パレッティナ国皇子‘カラーズ’は集められた女達を嫌々品定めする。
“やはり皆同じ顔に見える”そう呟くと
「もういいだろう…俺は皇になどならない」
カラーズは部屋に戻ろうと席を立った。
カラーズが扉に手をかけようとしたそのとき
ドドドなにかが向かっている音がする
「ちょっと待って私も参加します!!」
咄嗟に横にそれようとするも時既に遅し。
開かれた扉に軽く撥ね飛ばされた。
「ご無事ですか皇子!?」
従者がカラーズの元へ駆け寄る。
「私はシャーレア!参加希望者よ!」
少女は倒れている皇子に気にも止めず通りすぎ、会場内で一番着飾った格好の男を見つけると一目散に駆け寄る。
「ねえ皇子様!私をお嫁さんにしてくださらない?」
もちろんこの男が皇子の筈がない、少女もそれはわかっている筈だ
皇子より金のかかっていそうな服のこの男をからかいたいだけだろう。と周囲も笑いを堪えている。
ただ一人を除いて――――
「おいそこの女、皇子は私だ…こちらへ来い」
ぴしりと周りの空気が引き締まる。
「はい、わかりました皇子殿下」
シャーレアはそんな威圧を物ともせず
スタスタと歩き、皇子の近くに立つ。
周囲にいる城の関係者、他の候補者もハラハラとして同情や恐怖感を抱く。
「子供だからといって簡単に許すわけにはいかないな」
シャーレアの背はカラーズの胸の下あたりまでしかないし実際に小娘と呼ばれてもおかしくない年である
それは理解しているのでシャーレアも特に気にはしない。
「お待ちくださいませ」
候補の中の一人の女が弱々しげにシャーレアを庇う。
「なんだ知り合いか…?」
カラーズはシャーレアと白いローブの女を交互に見る。
シャーレアは知らないと言いかけたが女に肩をきつく握られ、痛みで何も話せなくなった。
「そうなのです、彼女はわたくしの友人でして…ご無礼をはたらいてしまったことをわたくしからも謝罪させていただきます、ですが彼女に悪気はありません…お許しくださいませカラーズ殿下」
女が坦々と饒舌に話を回してくれてなんとか事なきを得る。
あのままシャーレアが話していては更に話がややこしくなっていたのはシャーレア自身だけでなく、周りにいる他の候補者でも予想出来た。
平和的な解決をしたことを皆が安堵する。
ただ一人を除いて――――
その頃、候補の女達が控え室で衣服を整えていた。
(これも副賞のためよ…)
シャーレアも要員したきらびやかなピンクと白の衣服を嫌々纏う。
ふわふわとした衣服はシャーレアの趣味ではないが、男性の好みは清楚な白だ。
そうメイドが言っていたからそれにしたのだ。
せめてもの抵抗で蝙蝠のモチーフの付いたチョーカーを着ける。
一方その頃、もう1つの部屋―――――
いかにも攻撃的そうな女と白いローブの女が話をしていた。
「ねえあなたどうしてあの黒髪の小娘を助けたのよあのまま見捨てていればよかったじゃない?」
女が白いローブの女を睨む。
彼女はライバルは一人でも減ったほうがいいと思っているのだろう。
「あら彼女はわたくしの友人ですもの…」
ローブの女は消え入りそうなほど小さな声で言う
「なによその媚びたような声、それで皇子殿下が落ちるとおもってるの?」
女は更に機嫌が悪くなる。
「他の候補を消さないと目立てない方に言われたくありませんわ」
何やら喚いている女を無視してローブの女は部屋を出た。