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21・白から出た黄

丁度彼が落下する音を聞いて彼を急いで家に運んだ。

それにしてもよく見ると普通より色味の濃い金髪。

この国に金髪の男性はいない、という事はやっぱり異国の人かしら。

黄色いコートと三角の帽子はドロウノや、イレーサーが着ていたものと色違いのようだわ

初めて出会った日からあの格好のドロウノはともかく、イレーサーがあんな格好をしているところは見たことがなかった。


ただの仮想パーティーだったのかもしれないけれど、私も参加したかったわ。


「ここは…」

ようやく目を覚ましたらしい。

「えっと…貴方は木から落ちたのよね?」

特に外傷はない本人が目を覚まして自分で痛い所を言ってくれるのを待った。


「気絶するくらい酷いなんて、頭を打ったんじゃないかしら?」

私は包帯を手にもって、彼に手当てしてほしい箇所を言われるまで準備している。

「うーん、俺には君があまりにまぶしくて思わず気絶した」

物語の本でよくあるキザな台詞を、実際に言われたのは初めてだったのでなんとなく気恥ずかしい。

===

「シャ…」

あぶない、知らないことになっているはずの名を呼ぶ所だった。

俺は既にインティーナに化けた時、シャーレアと出会っているが、本来の姿では会ったことがなかった。


「それで、何で手当てしてくれたんだよ?」

この姿では初対面ってことになっているのに、知っていたら怪しまれる。


「あなた、なんとなく私の友達に似ているの

腰まで長い金髪でとても美人よ!」

変身した自分をホメられるのは複雑だ。

===

―――――私は凄いものを見てしまった。


シャーレアが屋敷に魔法使いの男を運んでいくのを、この赤眼(レッドアイ)で目撃したのである。


この際シャーレアが意外と力持ち、という事は置いておいて

屋敷に運んだ黄の魔法使いはシャーレアと親しくなったと考えればいいのか

しかし皇子に余計な事を言うと妨害されそうだ。

私は黙って見守ることにでもしよう。

――――

「まあさっき自分で投薬したから手当ての必要はほとんどないけど、あ、なんか一つ痛い場所がある」

ああ、彼はイレーサーのように薬師か何かなのね?

でもまだ痛む所があるなんて心配だわ。

「そうだなぁ痛いのはここ」

しばらく考えてから、彼は自分の心臓を指差した。


外側ならともかく、身体の内側にある心臓を治す方法なんて知らないわ。

「ただいまシャーレア」

困っていると、丁度いいタイミングで父が帰って来た。


本当になんの仕事をしているのかしら。

「おかえりなさい!あのね怪我人がいるの!手当てをお願いしてもいい?」

私は父を出迎え、誤解を招く前に手早く事情を説明した。


「ああ、怪我人なら仕方ないね。でも参った…これから夕飯の買い出しに行こうと思っていたんだが…」

父は上着を椅子にかけて、ソファに寝かせた彼の容態を診た。


治療は出来なくても食事の買い出しなら私でも出きる。

「それなら私がいくわ!」

買う物のメモを貰う。

「彼はどこを怪我したって?」

父に聞かれて私は戸を開けながら答える。

「心臓!!」

扉がバタン、と音を立てて閉まった。


「なるほど、心臓か」

―――――――――

メモにはトマート、パイナッツー、ポォク、ソゥスと書かれていた。


「うん、パイナッツーは要らないわね」

ポォクのトマート煮だけでいい。

その中に入れるパイナッツーは邪魔である。

いつもそこだけは父と争っているのだ。


「同感だ…スブタァにパイナッツーは…要らない事は…」

後ろから声がしたので振り替えってみる。

「あなたもそう思う!?」

誰もいない、空耳にがっかりしていると知らない人とぶつかった。


「ごめんなさい!」

黒いローブで顔を隠している。

私も同じだから言えた義理ではないけれど、周囲から浮いて見えるのは確かだ。


つまりいつも私は周りからこう見えているのか。

「お前…クリスタルを持っているだろう…寄越せ…」

クリスタルとは、エレメンタルなのか、普通の方かどちらの事だろう。

「あげないわ!」

と言って、普通のクリスタルを投げつけた。


矛盾しているが、普通のクリスタルはあげられてもエレメンタルクリスタルはあげられない。

投げたクリスタルに気をとられてくれたお陰で、私はどうにか屋敷まで逃げ帰る事が出来た。

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