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18・ペンで書く

フィードを見捨て、もうしわけなく思いながら

私はイレーサーの屋敷にいく。


「遊び…じゃなくてお茶を飲みに来たわイレーサー!」

とくに切迫つまったわけではない、ついドアを勢いよく開けてしまう。

「おや美しいお嬢さんじゃないか」

イレーサーの屋敷に行くと、思いがけない人物と再開できた。


私は彼に久しぶり、と言おうとしたところにすかさず会話を続けられる。

「はじめまして、イレーサーもスミに置けないな兄に内緒でこんなに可愛らしいお嬢さんと親しくしていたなんて」

なぜか初対面のフリをされている。

そんなことよりイレーサーに兄がいたなんて話は聞いていなかった。


「偶然隣の家になっただけだよ」

普段からそっけないけれど今日は更に冷たい。

「ひどいわ」

そんなに嫌そうにしなくてもいいのに。

これ以上彼に話しても会話が続かない。

だから兄の方と話をしよう。

「貴方名前は?」

馬車で会ったときには名前を教えられなかったので聞いてみる。


「そうだ自己紹介が遅れたな!オレはドラウノ・ドロウノ。好きに呼んでくれ!」

さすがは兄、イレーサーと似た雰囲気を持つ綺麗な顔に似合わず元気に自己紹介された。


彼はイレーサーの兄とは思えないほど明るいタイプのようで、私が驚いているとイレーサーがこちらをチラりと見てため息をつく。

「今『美形で落ち着いて見えるのに意外!』とか思ったよね?」

彼は完全にあきれている。

それにしてもイレーサーにはわかってしまうらしい。

顔に出やすいだけかイレーサーがすごいのか

「美形?そうか!よかった美しいお嬢さんが言うならきっと間違いない」

ドロウノはキザな台詞を恥ずかしげもなく言った。


「兄さんが調子に乗るからあまり褒めないで」

イレーサーは頭を抱えている。

「立ち話もなんだお茶でも飲んでいかないかい?」

そういってドロウノはソファをポンポンとはたく。

「兄さん、ここ僕の家だからね相手がシャーレアだからまあ、いいけど勝手なこと言わないでよ」

ドロウノに言われて本来の目的を思い出す。

「そうだったすっかり忘れていたわ!」

私はすぐにソファに座って蜂蜜湯とお菓子を待つ。

―――――

「なんだこれすっげー辛いぜ!!」

フィードはペイプラーの出す料理をガツガツ食べる。


「どうだい美味しいかい?いや、愚問か辛いはウマと同意語だから」

ペイプラーはうんうん、と自分の中で納得した。


「ところであんたシャーレアのなんなんだ?」

フィードが今更と言わんばかりの事を尋ねる。

「普通の者なら父娘とすぐに察するんだが…珍しい事を聞かれた」

ペイプラーの言葉にフィードは考える。

「最初はそうだと思ったんだけどなんとなく違う感じがして、親子じゃないなんて思って最低だよなごめん」

フィードはペイプラーに謝る。

「つまり別に怒っていないよ私が大きい娘を持っているほど年増には見えないってことだろう?」

ペイプラーはポジティブなのか、そう捉えた。


「そうでもねえけど?」

フィードは正直に言う。

ペイプラーは苦笑いを浮かべた。

―――――

裂かれた書物や干からびた動物の骨で荒れ果てた玉座の間に黒衣の男が入る。

「ティードラァ様」

黒衣の男が主とするのは、獅子のような髪、床につくほど長いマントを纏う王者、ティードラァだ。


実年齢は人間が生きる年を遥かに越えている。

容姿は若い男のままではあるが、かつては威厳ある王だったという

しかしその威厳など時が経つにつれ、薄れてしまっている。

「…只今戻りました」

男は黒衣をバサリと脱ぎ、王者ティードラァの前に跪く。

一見裏の仕事には向かない整った顔立ちの青年の薄い水色(すいしょく)の髪はサラリと揺れ、微かに城に届いた陽の明に反射した。


「首尾は?」

ティードラァはこの閉ざされた場所になお差して輝く陽光を忌々しく思う。

目的の人間を探したのかを問うティードラァはもはや自ら探そうと今にも城を飛び出しそうだ。


「残念ながら」

水色髪の青年は首を横に振り見つからないと答える。

「まだ見つからぬのか!!」

苛立ちながらティードラァはグラスを赤いカーペットに叩きつけた。


元々赤い床に、紅いワインの色が広がっていく

「…まるで人のようだ」

水色髪の青年は床に広がる朱をただ冷静に見ながら呟いた。

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