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14・風

「おやすみなさい」

シャーレアは父に就寝の挨拶をする。

「おやすみ」

にこりと笑うシャーレアの父。


(眠れない…)

寝台に入って目を閉じるもなかなか寝つけないシャーレアは、眠くなるまで読書でもしようと考え、起き上がる。


するとカタカタと窓が震えていることに気がついた。

どうしたものかと疑問を抱いたシャーレアは近くに寄って確認してみることに、すると強い風がふいている事に気がついた。


「台風でも来るのかしら」

――――

とある古城の中にある広間、玉座にはどっしりと座って兵士を見下ろす男が一人。


『まだか!!まだ見つからぬのか!』

突然、荒れ狂った城主の男は床にグラスを叩きつけた。

『は!申し訳ありません!』

城主に仕える兵士は跪いて次の句を述べる。

『先日、兵士達を捜索に当たらせましたがクリスタルは見付かりませんでした』

兵士の言葉に城主は落胆する。


クリスタルは――――――


「どこだー!」

シャーレアは目を覚ました。


「なんだ夢か…」

シャーレアが見ていた夢は、まるで家にある本のシーンと似ているけど内容が少し違っていた。


記憶が正しければ城主が探しているのはクリスタルではなく自国の王女と他国の王子の筈だ。


「この本とこの本は作者が同じだわ…」


クリスタルが出てくる書物と恋物語の本は同作者だったのだ。


「…関係ないわよね」


シャーレアは本を棚に戻そう思った。

しかし、何か嫌な予感がしたので本を金庫にしまってみた。


「やっぱり二冊とも持っていこうかしら」

結局本をドレスの内側の隠しポケットに入れて部屋を出て

、玄関で待たせていた馬車に乗りペンネスの屋敷へ向かう。


「いきなり訪ねてごめんなさい、不躾だったわよね…」

シャーレアはアポイントもなしに訪問したのだが、ペンネスは嫌な顔一つせず快く迎えた。


「…シャーレア、来てくれたか、歓迎しよう」

いくら向こうから許可をくれたと言っても私は平民で彼は貴族、本来ならもっとへりくだるべき相手だ。

――――

そういえば、ペンネスはどうして私を屋敷に呼んだのかしら…

貴族の彼が平民の私にあんなに優しく接してくるなんておかしいわ。

まずソファに向かい同士で座って、気になっていた事を聞いてみた。


「あの…私は平民だって知っているわよね?」

服装が豪華だから万が一貴族と思われていないとも限らないと思う。


「もちろん。貴族の名なら大体頭にあるんだが特に君は貴族なら知っていない筈がない程、特徴的だ。」

勘違いされていなくてよかった。

でも貴族の彼がどうして平民の私に用があるのかますますわからなくなってくる。

貴族ならイレーサーもそうだけど幼馴染みだから話は別、でもペンネスは初対面の時からこうだ。なんだかすごく怪しい!


「着ている者をまっこうから平民と呼ぶには憚れる上等そうで珍しいデザインの服だと思ったが…」

まさか服に興味があったの―――?

その後ペンネスは眈々と疑問にこたえてくれた。


「呼びたいと思った本当の理由は、初対面で私に求婚して来た事かもしれないな、ただの相手間違いでも」

やっぱり根に持たれていたのね。

ペンネスは他人に否定されたら直すタイプの人なのかしら。


「お金じゃお詫びにならないわよね」

彼は貴族だし幼馴染みの貴族のように、お金にも困ってなさそうだ。


「いや、別にそういう意味ではないが」

声のトーンが落ちていつものような覇気が感じられなくて、なんだか今日のペンネスは様子がおかしい。

元々明るいタイプではなかったけれどいつもより暗い感じがした。


「今度はこちらから質問してもいいだろうか?」

ペンネスは私をじっと見ている。


「ええ!もちろん…」

何を聞かれるの――

困ることなんてないけれど、私は少し焦った。


「…カラーズ皇子に近づいたのは、此れが目的だろう?」

そう言うとペンネスは大きな宝石付きの首飾りを見せる。

ただの宝石ならすぐに否定していた筈

でもそれは、カラーズのくれた物と似ている。


「そう…だわ」

きっとペンネスには嘘をついても無駄、彼は騙せない。

根拠はないけれどペンネスは聡明な人だと思った。


そうじゃなかったら会ったのはたった三回、交わした会話もほんの少しだけなのに、どうしてエレメンタルクリスタルの事がバレているの。


「カラーズ皇子の事は少しも好きではないだろう?」

ペンネスは悲しそうに言うと、色とりどりの宝石をテーブルに乗せた。


「これを君にやろうその変わりにカラーズ皇子からは手を引いてくれないか?」

首飾り以外の宝石を私の目の前に―――


「え?」

―――彼は気がついていないのかもしれない。


「違ったか?なら金を…」

いえ、ぜんぜん気づいていない。


「私、お金に困っているわけじゃないわ!」

とっさに出た否定の言葉はこれだ。

どうしてそう思われたのか、考えてみよう。

たぶん平民を強調しすぎたからだと思う。

私の頭にはそれくらいしか浮かばなかった。


「ならどうしてカラーズ皇子に取り入ったんだ?」

彼はどうしてそんなにカラーズを気にかけているの―――――


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