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1・目的は

『絵本を読んで!』

黒髪の少女は絵本を手に、黒髪の男にかけよった。


『ああ、いいよ』

男はにこやかに微笑み、絵本を手にした。


『昔々、エレメンタルクリスタルというなんでも願いを叶える幻の宝石がありました』

男はスラスラと物語の始まりを読む。

『それでそれで!?』

次の台詞を待ち遠しく思う幼い少女が、わくわくしながら続きを急かした。


『なんとお姫様は国民の幸せを願おうとエレメンタルクリスタルを手に入れる冒険の旅に出たのです』

男は淡々と読み上げた。


『うんうん!!』

面白い、と感じた少女は、次の言葉を待つ。


『旅の途中でお姫様は同じくクリスタルを手に入れ、民の幸せを願おうとする王子様と出会うのです』

男苦虫を潰したような険しい表情になりながらも必死に読む。

『どうしたの?』

黒髪の少女は訝しげに男の顔を見た。


『なんでもないよ…。お姫様はクリスタルを手に入れましたが志を同じくした王子様に譲りました』

男は心配をかけないよう表情をただしながら続きを語る。


『ええ!?どうして譲るの?』

少女はお姫様が宝石を譲る意味がわからないと、困惑した。

『お姫様は王子様が好きだからじゃないかな?』

少女の質問に男は倦ねる。

『きっと、恋をすればわかる事だよ』

考えた末、曖昧に答え男は本を閉じる。





ここは砂漠の皇国・パレッティナ。庭園には長い白髪を靡かせ佇む皇子がいた。


「殿下、そろそろ…姫君を」

皇子に使える者達はそろそろ皇子に伴侶を見付けて貰いたいと、結婚を急かす。


「うるさい。この国にいる女は皆金髪碧眼の同じ顔、皆似たようなものだ」


“女なんて誰でも一緒じゃないか”皇子は優雅にお茶を飲みながら呟いた。


「皇子、恋人どころか女性とまともに話した事もないというのに、その遊び人のような台詞はないでしょう」

白髪の男はせせら笑い、皇子をからかった。


「本当に、どうして」


つまりこれは自分にもチャンスがあるということだろうか―――少女は期待に胸を膨らませた。


遥か昔は金髪だけでなく赤毛や白髪、黒髪など様々な髪色が存在した。


けれどある日を境に産まれた時から男は白髪、女は金髪と性別で髪の色が決まってしまうようになったのである。


「まあ…金髪以外の女ならギリギリ考えてやってもいいか」

ただし王宮は去るが

―――

朝から王宮の兵士が町を練り歩き、紙をバラ蒔いていた。


長い黒髪の少女はそれを拾い上げて目読する。

【妻となる女性を求む…参加条件・女。国、身分、容姿、年齢で決めるつもりはない。~PS.見事皇子を射止めたら副賞にエレメンタルクリスタルが貰えるヨ】

誰でも参加自由、つまりこれは自分にもチャンスがあるということだろうか―――少女は期待に胸を膨らませた。


「皇子様が正妻を求めていらっしゃるですって?」

王宮から皇女、つまり皇子の妻となる次期皇后様…

他の女達も、きゃあきゃあと盛り上がっていた。

私は確信する――絶対に負けられない戦いがこの世にはある。

私は確信する―――今日から私の目標は皇子を射止めて副賞を貰うことなのだと!


「待っていてね副賞!!」

私は走り出した。


「目的そっち!?」

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