表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/41

第29話 水軍とまた戦

ようやく投稿です。楽しんで頂ければ幸いです。

 天文二十三(1554)年九月下旬 安房国 館山城


 城内の片隅に、藁葺きの小屋がある。間取りは九尺二間、中は小さな土間と四畳半の畳を持つ小さな茶室だ。

 簡素な造りで、飾りも煤竹の花入れに季節の花を一輪差し、海上護衛とだけ書かれた掛け軸のみとシンプルだ。

 そこで、密会する者らがいた。


「――では、お代官様。今回のお茶請けである山吹色の御菓子でございます……」

「ほほう、山吹色の菓子とな。どれ……」


 時忠からすすっと渡された葛籠(つづら)を開ける。中には「金弐拾五両」と墨印の書かれた紙包みがぎっしりと詰まっていた。甲州金をモデルに、交易の決済や恩賞用に作られた円形の金貨は一枚あたり四匁の重さの田舎目に揃えられており、一つの包みには二十五枚の金貨が入っていた。

 

「ほほ、正木屋。お主もワルよのぉ……」

「いえいえ、お代官様ほどでは……」

「「フフフ……」」


 まるで悪代官と悪徳商人のように、気味の悪い笑みを浮かべて笑い合う。


「いや、なにやってんですか」


 亭主役を務める安泰の冷静な突っ込みがはいった。


「や、お約束でしょ。こういうの」と、義頼はからからと笑いながら答えた。

「さぁて、真面目にやりますかね。時忠さん、今確認しますのでちょっと待っててください」


 義頼は首をこき、と鳴らすと目の前の包金を手に取る。


「さて、と……」


 ずっしりと重い包金の表と裏の封印――裏面には包んだ日付と正木左近大夫(時忠)の花押が書かれている――を確かめ、包みの数を数えていく。


「――はい確かに。満額いただきました。注文された艦は全て第二桟橋に繋いでありますから、戻るときに乗っていってください」

「ええ、有難うございます」


 時忠から注文された艦がようやく完成したので、今日はその引き取り日であった。

 要目は以下のとおりである。


 [丙型海防艦]


 ・主要目

 全長:八間(14.5メートル) 船幅:十五尺二寸(4.3メートル) 深さ:四尺七寸(1.4メートル) 乗員:二十四名   主兵装:艦首衝角・旋回砲(スィーベルガン)六門


 ・備考

 二本檣を持つスクーナー。補助推進として艪十二挺。木骨木皮の西洋式帆船。銅製の金具を使用。


 丙型は現在里見家で主流となっている二百石積の弁才船を戦闘用に改修した艦だ。

 渋墨塗の和洋折衷式の船体構造で、喫水は浅く船底は平らになっているため浅瀬や河川でも使用でき、在地の船大工でも修理しやすいようになっている。

 また中型軍船である関船と同規模であり、艤装は少人数でも操船ができる縦帆。武装は艦首水面下に鉄製衝角と舷側に旋回砲を搭載している。これは沿岸警備程度なら旋回砲でも十分な威力を持っており、また玉薬の使用量を抑えるためであった。

 低コストかつ戦闘にも耐えられ、江戸湾や九十九里浜といった在地でも修理が可能と扱いやすい設計になっている。


「本当に助かります。私のところだけでなく、兄上や弘季のところの分まで建造してもらって……」

「いえいえ。貰うもの貰っていますし、良い商売になりました。内房に関してはまあ、こっちも配備を進めたかったので丁度良かったんですよ」

「というと?」

「鹵獲した安宅ですよ。あれ、船体に肋材がありました」


 先の海戦後に鹵獲した安宅や小早を検分したところ、竜骨に当たる(かわら)が従来よりも厚く膨らんだ形をしており、肋材を取り付けて耐久性を向上させていた。

 もっとも、肋材は自然に曲がった松を使ったらしく、和洋折衷船である図南丸型に似ているが数が少ない。だが、従来の和船よりも強度は増しており、確実に北条領での技術が進歩している船であった。


「……本当ですか?」時忠が言った。

「ええ。どこからか漏れたのか、建造した職人の発想から取り入れたのかもしれません。構造そのものはそこまで難しいものではありませんし」

「しかし、もしそうならば脅威ですね」

「ええ。建造した船大工は良い腕してますよ。ですので、北条に睨みを利かせる為にも艦は欲しい。甲型や乙型では手が回り切れませんので、時忠さんの注文は丁度良かったんですよ」


 話がある程度落ち着いた頃、安泰が切り出す。


「湯が湧いたので、そろそろ始めましょうか」


 二人は居住まいを正した。

 まずはお茶請けです、と安泰が差し出した皿には、乱切りされたきつね色の芋に糖蜜と胡麻がかかっていた。


「お、大学芋か」

「ええ、僅かですが甘藷が収穫できましたので」


 では早速、と義頼は嬉しそうな顔で添えてあった楊枝で一つ取り、口に運ぶ。

 甘い。歯をたてると芋の中はほっこりとしており、揚げた甘藷の香ばしい香りと胡麻の風味が口の中に広がる。


「うん、甘くて美味い。これは麦芽糖かな?」

「ええ。胡麻油で揚げた後に飴に絡ませてみました。隠し味に醤油を垂らしてあります」


 義頼の言葉に安泰は頷いた。


「本当に懐かしいですね。昔は夕食のおかずに食べてたんですよ」時忠が言った。

「これをご飯と一緒に?」怪訝な表情で安泰は言った。

「私の故郷では普通だったんですがねぇ。中々おいしいんですよ?」


 甘いものでご飯を食うのか、と義頼は大学芋を齧りながら内心思った。


「ちょっと甘い芋ご飯だと思えばいいんですよ。うん、美味い」

「まあ今度やってみます。もっと甘藷の栽培が多くなれば色々な料理も出来ますしね」

「そうなったら焼き芋や芋羊羹も食べたいな」


 しばし、三人で談笑しながら大学芋をつつく。最初は他愛ない雑談であったが、話はやはり水軍についての事に移った。

 

「ところで、外房はどうです? 境川の河口に港を造ると聞きましたが」

「今のところ順調ですよ。ただテコ入れしないとやはり税収が低いですね」


 新たに獲得した上総国北東部は、土地の広さの割に税収がそれほど高くない。現代では旨い米を生産する県内有数の米どころであるが、この時代は大きな川が無く、塩が混じった湖沼(ラグーン)が多く存在していた。そのため用水に適したものが少なく、井戸水や天水だよりで干ばつが度々発生していた。慢性的な水不足から解放されたのは1965年に利根川に面する香取市佐原から取水する両総用水が、1997年に両総用水から大多喜まで繋いだ房総導水路が完成してからである。


 そのため主な産業は旧来の製塩や素潜り漁といった漁業なのだが、九十九里浜周辺は遠浅の砂浜海岸であり、有力な港が無いのだ。甲型・乙型海防艦の様な喫水の深い艦は使えず、中小型の和船が主流であった。しかし、ここ一帯は黒潮の影響で潮流が速い海の難所であった。今でこそ船の改良に航海技術の発達で被害は減っているものの、東北方面の交易を担う時忠からすれば、この状況は無視できない事であった。


 そこで新たに獲得した上総国北東部、山辺郡に流れる境川河口(現在の作田川)に廻船が停泊できる港を造ろうと計画を進めていた。堺川は九十九里浜のちょうど中央に流れる川である。船を泊められるように河口部を浚渫し、沖合に延びる突堤を造る必要があるが他に停泊できそうな場所が他に見当たらないのだ。

 決して栄えているとは言えない地域であるが、ここで港を造り、ヒト・モノ・カネが入るようになれば税収も上がり、またこの地の国人衆も抱き込みやすくなる。それに地曳網漁で鰯が大量に獲れる事から、投資した分はすぐに回収できると時忠は見ていた。

 

「港さえ出来ればこっちの経済圏に組み込めます。ま、ボチボチやっていきますよ。内房はどうです?」


 安泰が茶を点てている最中、時忠が言った。


「恐らく聞いていると思いますが」義頼が言った。「綱成は相変わらず玉縄城に篭ったまま。江戸湾内は小競り合いも無く静かなもんです。こちら側の商人の動きも活発ですし、平和ですよ」


 お陰でこうやってのんびり出来ます、と義頼は前に置かれた白釉の志野茶碗を手に取り、静かに茶を飲む。うん、美味い。


「つい最近までは地獄のような日々でしたからね。平和って良いですねぇ」

(そりゃ、あれだけやれば何処も大人しくなるでしょうが……)


 最近のお気に入りだという備前焼で茶を飲んでいた時忠の言葉に、安泰は内心突っ込みを入れていた。安泰は信楽焼だ。正式な茶道を知らない(まだ確立されてもいない)ため、好き勝手にやっている。


 二か月前までは戦後のゴタゴタで目が回るような忙しさであったが、少しづつ占領した土地の支配が進み、徐々に落ち着きを取り戻していった。


 また三浦半島を獲得した当初、船不足をどうするか頭を悩ましていたが、それも改善していった。

 まず北条の影響力が薄まった為、江戸湾内に点在する海賊衆が挙って里見家に恭順を示し、そして武蔵国沿岸部を略奪して始めた。


 義頼らは止めなかった。むしろ好機と見て「略奪品は全て買い取る」と触れを出し、裏から海賊衆を煽っていた。海賊衆らもこれに喜び、特に船が高く売れると分かってからはお互い競い合うように連日襲撃を繰り返しては大型漁船である葛船からサッパ船まで全てを奪っていった。そして館山や金谷で略奪品を売りさばいていった。

 中には船を使わずに鍛えた水練の技をもって泳いで航行中の商船を襲撃。見事船を拿捕して荒稼ぎし、船主船長になった者まで現れるようになった。


 この襲撃に北条領の海民や商人達は震え上がった。すぐさま北条氏へ警備の強化を願い出たものの、守るための軍船は高く売れるからと先に襲撃されてもう無く、またゲリラ戦に関しては里見の方が一枚上手。あちらこちら引っ掻き回すように活動されてはどうしようもなかった。

 北条氏が役に立たないとなれば、自分の身は自分で守るしかなかった。


「年貢の半分をこちらへお納めます故、略奪を止めていただきたい」


 そう武蔵国の有力者達が願い出たのも直ぐの事だった。

 義頼はすぐさま海賊衆に略奪の停止を命じる。当初は従わなかったものの、乙型海防艦を中核とした艦隊が江戸湾内に展開し、見せしめに何隻か海の藻屑にすると、慌てて恭順を示していった。以後は略奪は殆ど行われなくなった。また今まで買い取った船や人は償金――といっても、余り恨みを買っても拙いのでかなり安値であった――と引き換えに解放すると同時に、江戸湾内の輸送業務に当たらせた。

 

 これら一連の動きにより、江戸湾内の安定化は驚くほど速く進んでいった。

 扱いづらい内房海賊衆を抑えこみ、また武蔵国沿岸部から半手を得ることになった。更に品川港を影響圏下に置くなど当初の目的を達していた。

 そして江戸湾が安定化すると張り付ける艦の数を減らすことができ、物資輸送も武蔵国の海民や品川商人らによって行われて水夫達の負担も少なくなった。また武蔵国から物資が流れ込むようになり、物価も落ち着いていった。

 北条からすれば泣きっ面に蜂な騒ぎだが、里見家にとっては上々な結果に終わる事となった。


「土地の支配や海域防衛も物資輸送も大丈夫。軍艦の修復も順調。捕鯨も大筒を転用した捕鯨砲を装備する事になってからは漁獲量も上がっている。古くなった船を新造船へ更新できました。ですが」

「今度は木材が足らなくなっている、と」


 里見家の領国では急速な発展を遂げた結果、森林の伐採速度も跳ね上がっていた。国内の木材が枯渇し始めているのだ。勿論、開発し始めた時から先の事を見越して成長の早い杉や松、成長は遅いが堅く丈夫な欅、樫なども植林を行ってきているものの、まだまだ材として使えるほど育ってはいなかった。


「……まあ、国内の木材が不足している原因は、とある造船好きな方が木材を大量に買いつけた所為だと商人の噂になっているようですが?」


 時忠からそう言われた義頼は後ろめたいのか、冷や汗を流して顔を逸らす。

 そこに安泰がすかさず助けを出した。


「いや、まあ、一応言い訳しますと、船の大量建造に弁才船と図南丸型の補修時期が被ったんですよ」


 今の主力船はどれもほぼ同時期に建造したため、どうしても補修も同じ時期になりやすい。

 また和船は西洋式と比べて建造時の工程が少なく、工期も短いので揃えやすいのだが、建造には質の良い、分厚く大きい一枚板を必要としていた。この板材は図南丸型クラスになると最も厚い箇所は一尺(30センチ)以上にもなった。

 この板材を集めるために各地域から買い付けたため、品薄になるのは当然であった。


「ただ、今回はかなり無理して集めました。今後は大型の和船は建造を止める必要もあります」

「西洋式船の方が安くなると?」

「高い理由が加工の手間がかかる為ですが、作業の効率化で少しずつ安くなっています。材料となる木材も比較的細く薄い材で済みます」

「成程。でも、甲型と乙型の資材は確か多めに確保してありましたよね? あれを――」

「ノゥ! 絶対にノゥ!!」

「ですよねー」


 まあ時忠もとりあえず言ってみただけであった。

 義頼には甲型や乙型の建造を辞めるなど心情的に出来なかった。それに船材は既にそれぞれに合わせて加工されてしまっている。今更違う用途に使おうとすれば再加工で大量の端材が出る事となり、かなり勿体無いのだ。

 一応、木材を殆ど使わなくても船は作ることはできるが、まだ試作船の建造中で役立つかどうかは不明である。


「ですが、どうにかしなければ拙いです」安泰が言った。

「館山の鶴谷八幡宮周辺の再開発もせっつかれています。また獲得した領地の城の修復や砦の建造、道を通す必要もあります」

「分かってる。武蔵国や下総国から木材の輸入を進めるしか無いだろう。それで段階的に工事を進める。道に関しては兄上のとこから人手を出してもらおう」


 金穀幾ら飛ぶんだろ、と義頼は愚痴る。


「造船所の拡張だってしたいんだがなぁ」

「もうカツカツなので流石に無理ですって……」

「ふむ、資金が無いなら貸しましょうか? 今なら年利二割五分で」

「「そのとき考えるので今は良いです」」


 残念、と呟く時忠。

 借金したら碌な事にならない、と思っている義頼と安泰は地道に領地を発展させて資金を稼ごうと決意した。


 だがその願いもむなしく、厄介事は舞い込んできた。


 今年の関東一帯は冷夏の影響もあり不作であった。

 里見家の領国は面々が地道に内政に取り組んでいた事もあり、米はそれなりに、飢饉対策に推奨していた雑穀は十分な量が獲れていた。漁獲量も増やしているため、翌年まで食べていけるだけの食糧を確保していた。

 しかし、他の地域ではそういう訳にはいかなかった。特に隣接するようになった下総国は冷夏に有効な対策が打てず、壊滅的な被害を受ける事となった。


「今年は駄目だ。春の種籾が確保できねぇ」


 農村の至る所で百姓達は嘆きの声を上げた。どうにか収穫して積み上げた米俵は、いつもの年の半分以下しかなかった。


「これで年貢はいつも通りか」

「来年まで食っていけねぇぞ」


 娘の身売り、一家離散。そんな考えが頭の中をよぎる。


「そういやぁさ、知ってるだか?」

「なんだよ?」

「領主様が戦起こすって話だが。なんでも里見様ン所の領地には、備蓄している食糧がでけぇ蔵に一杯あるってよ」

「……本当か?」


 そんな噂が流れたのか定かでは無いが、普段は仲が悪い国人衆や地侍がこの時ばかりは結束し、食うために戦を起こすのは当然の成り行きであった。


「こっちにくんな! 今忙しいんだよ!」


 まるで蝗の群れの様な軍勢が侵攻してきたのに対し、婚礼やら軍備の増強中だった義舜らは即座に近隣の陸軍連隊を招集。また郷村の農民らも武装して撃退したものの、一部は領国内へ侵入され、荒らし回られる結果となった。

 

「この忙しい時期にきよって。鬱陶しい事この上ないわ」


 急きょ開催された会合の席で義堯はぼやいた。

 幸いな事に、被害は国境付近の村落が荒らされた程度で被害は少ない。だが、それよりも侵攻された事にいきり立っている者が多い事が面倒だった。


「この一件で下総へ侵攻するのは当然として、中には小田原まで攻め込めと言っている者までいます」

「小田原までとか、不可能に決まってんだろ。今は内政を重視しなければ拙いというのに……」 

「というか、金穀も玉薬も足りないのに何で攻め込めると思ってるんですかね? 攻める先に食糧が無ければ兵站が持ちませんよ?」

「彼らは自分達の利益しか考えません。攻め込めば領地が増える。食糧に関しては略奪して進めば良いと考えているのでしょう」

「だが、こちらにも面子がある。出陣だ」


 義堯の言葉を聞いて面々は頷く。

 ここで撃退して終わりにすれば近隣の大名どころか身内の国人衆からも舐められてしまう。それだけは避けなければならない。

 やられたらやり返す。これが当たり前の時代である。


「しかし、軍勢と装備はどうするので? まだ大部分は訓練中ですが」

「再編の終わった一個連隊は出せる。あとは陣振れを出して募集する。特に上総北部は今回の件で流民が発生するだろうから、それなりの数は集められる筈だ」

「水軍は?」

「相模水軍の抑えに幾らか艦を残す必要はありますが、甲型か乙型のどちかに艦隊を編成して動かすことは可能です」


 ふむ、と義堯は顎を擦り、思案する。


(ここであまり深入りはしたくない。適当なところを攻めてとっとと帰ってくるのが最上。だとすれば……)


「少数の軍勢でも攻められ、兵站が維持できて、実入りの多い場所」

「となりますと、下総国の匝瑳郡、椿海でしょうか」


 椿海は江戸初期まで存在した、広大な湖である。太田ノ胡水とも呼ばれ、現在の旭市の半分近くの面積があった。古代より香取海と並んで水上交通が活発だったとされ、房州と香取海での交易に深く関わっていた。


 房州から北上する船はまず椿海に入り、そこで積み荷を卸す。そこから陸路で下総台地の地峡部を抜け、香取海へと運搬される。そして房州の物産は香取海の水運で下野国、常陸各地へと運ばれたのだ。

 また上方から流れてくる中国磁器や絹織物などの渡来品も江戸湾から香取海へ、そして椿海に流れていた。そして豊富な水がある事から稲作も盛んであり、流通も良い事から下総国の中でも豊かな地域であった。


 この椿海周辺は現在、名門である千葉氏族の国人衆が治めていた。そして銚子は中島城に拠点を置く海上(うなかみ)氏が領域を支配しており、香取海の出入り口である交通の要所を抑えている。

 

「外房の海上交通を考えれば港は欲しいですね。特に九十九里は砂鉄に鰯が豊富に獲れます」

「何度か攻めているから、地形や城の数もある程度把握している。他の場所よりは戦いやすい」


 実は天文十六年(1547年)ごろより里見家は幾度なく海上郡(現在の銚子・旭市の大部分)・香取郡に攻め込んでいた。天文十六年六月十八日には海上郡太田で、その三日後には八日市場(現在の匝瑳市)にて合戦が起きている。

 

「では、匝瑳郡に侵攻する事でいいな」


 義堯の言葉に面々は居住まいを正して頷く。


「よろしい。目的は匝瑳郡、椿海の制圧。陸軍は酒井氏を手先に陸路から侵攻。水軍は海路で兵站の維持と敵の水軍を排除しろ」


 義堯の方針に面々は静かに頭を下げる。

 義頼は内心、また戦か、と溜息をついた。


 そして先の戦の影響が残るなか、里見家は次の戦に往くこととなる。

誤字・脱字がありましたら連絡をお願いします。


すみません、遅くなりました。

言い訳すると、香取海一帯の国人衆とか調べなおしてたら訳わからん事になりまして。あと資料が少ない。

なんかいい資料があったら教えてください。割とマジで。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ