大切なこと忘れてません?
初投稿です
今日はいい天気です。
まさにピクニック日和。
日差しが少し気になりますが、日傘をさせば問題ないでしょう。
傷一つ無い雪のような白い肌、とはすでに言い難い健康的な肌色なので、多少焼けてもたいした変わりはないんですけどね。
ピクニックならサンドイッチがいりますね。
お肉の入ったボリューム満点のものや、色とりどりな野菜のヘルシーなもの、果物入りの甘いものなどがあると好ましいです。
あと、紅茶も必要で「試合はじめっっ」
あぁ、思わず現実逃避していました。
今は剣術の大会? 試験? です。
なんでも、半年後に我が国の王女様が隣国に嫁ぐらしく、その際付き従う侍女を決める試合をしているわけです。
何で試合をって思いますよね。
侍女とは言えど、王女様の身を守るため最低限の武術の嗜みが必要だそうです。一応護衛の方もつくはずなんですけど、万が一のためなんでしょう。最も護衛が使えない時にいくら武術の心得があるといっても本職ではない侍女が役に立つなんて思えませんけど。まぁ慣習ってやつです。
お偉いさん達が選んだ方でいいと思うんですが、それだと納得しない古狸もいるようでして。
侍女って意外なことに人気職なんですよ。
高貴な方と接する機会もありますし、中には結ばれる人も少なからずいるわけで、それを狙う方も多いんです。
しかも隣国なら身分もこちらほどうるさくないので、玉の輿の可能性もなお上がるわけですよね。侍女は大体全員が他国からきた花嫁付きの某令嬢、という大雑把な括りに入るんですよ。
つまり、多くの貴族が我が娘を! って言いだしたのです。
醜聞があっても国から出ればそんなのはあまり伝わりませんので、そういう方にとっては最後の希望なんですよね、きっと。
私はそんな噂ありませんよ?
ただ、結婚適齢期も終わり間近の娘に夫や婚約者や求婚者などがいないどころか男友達すらいないことに焦りを覚えたのと、万が一の可能性を夢見た何処ぞの狸親父によって勝手に立候補されてただけです。
お父様は私に甘いから、そんな強行手段にでるとは驚きました。
最初の方の試験は筆記やマナーなど一般的なものでしたので、ほとんどの候補者は最終選考まで残れたようです。
途中で落ちるなど、私のプライド(と書いて意地と読む)が許さないのでこのまま来てしまいました。
でも最終選考が試合だなんて誰が想像してました?
うっそーんです。
幸いにも相手はお偉いさん達イチオシの本来王女についていくはずだった方なので、他の候補者の人と同じように棄権するとしますか。
普通の令嬢同士があたるとお互い試合はできないのですけど、相手が棄権したら自分が次に進めるのでなかなか棄権しないんですよね。どうせ進んでも勝ち目はないでしょうに。
あれは気まずいですよね。すぐに棄権するのは貴族令嬢としての矜恃が許しませんし、かと言ってダラダラ時間だけ過ぎて行くのも嫌ですし。タイミングが難しそうなのです。
棄権するのは負けを認めるわけで悔しいのですが、仕方ないのです。
恨むのなら、お父様を恨みましょう。
えぇそうです。こうなったのも、私が苦労したのも、恥をかくのも、ぜーーーんぶお父様のせいなんです。
あぁ、お父様のせいで。
許すまじ、お父様!
こちらを探るように睨んでいた対戦相手を一瞥し、審判に棄権する旨を伝えます。
他の令嬢と違い、剣を放り投げたりはしませんでした。
そんなことしたら、会場にいらっしゃる騎士様方の厳しい視線が飛んでくるんですもん。
そりゃ大切な剣ですからね。
驚くことなくちょっと馬鹿にした顔で試合終了を告げた審判の声は、もはや私には聞こえていません。
お父様、覚悟なさいませ!
会場から出てきた私の後ろに呼び出したお父様が恐る恐るついてきています。
怯えるくらいなら、最初から私を候補にあげないでください。
会場の裏手当たりで、立ち止まり周りを確認します。
前よし、後ろよし、右よし、左よし、上よし、下……はさすがに誰もいませんよね。
「お父様、一体どういうおつもりなんですの?」
あ、私だってお嬢様口調くらいできます。
敬語とはちょこっと違うんですよー。
「それはだな、そのお前を心配してだな。お前ももういい年だし、そろそろ結婚に対して真剣になるべきだからだな、今までとは違う侍女としての立場でこう出会いをだな期待してだな…「私は頼んでおりませんわ」」
しどろもどろ話すお父様の言葉をさえぎるように言いました。
「途中の選考会まではまだ良かったですけれど、この試合は何ですの⁉
こんなの聞いておりませんわ!」
「いや、お前なら何とかできると思ってなぁ……」
「確かに私も剣を少しは嗜んではおりますわ。
けれど、もし私が勝って侍女となったらどうするつもりでしたの⁉
行きたくもない私にあちらの国に行けと言うんですの⁉ 私はあの国の言葉はあまり得意でないというのにですか⁉
それに、大切なこと忘れてません?
私は、剣でなく、
金棒使いですのよ⁉︎」
そうです、私の得物は剣でも弓でも槍でもなく、金棒なのです。
女性は勿論、男性でも珍しいんですよ、金棒。
言うと引かれる事が多いのであまり人に言ってません。
相性がいいんでしょうね。
ふざけて使っていたはずなのに、気付いたら相棒となっていました。いや不思議。
大きいですけど、意外と使い勝手いいんですよ。そんじょそこらの剣なら打ち砕けますし、持ち運びは大変ですけど、魔法をつかえばなんとかなりますし。
強く言い放った私に対してお父様は黙りを決め込んでいます
「今回はしょうがないとしても、次は私にちゃんと言ってくださいませ。
私ももう幼子ではありませんの。
自分のことは自分で考えますわ」
今は女性も働ける時代ですし、貴族だからと言っても、うちには兄もいますので婿をとる必要もありませんし、無理に政略結婚しなければならないほど家が困っているわけでもありません。最近では家よりも個人が重視されつつあるので、政略結婚もまだ根強いもの少しずつ減ってはきています。
高貴なる者の責任は結婚以外の方法でも果たすことができるのです。
お父様が私のことを考えているの百も承知です。
でも、侍女なんてめんどくさ…ゴホゴホッ、責任の大きな仕事は私には荷が大きすぎます。慣れないことをして失敗をするのは目に見えてますし、失敗から学ぶタイプではなく、落ち込み使えなくなるか逆ギレするタイプなので、向いているとは思えません。
お父様も反省しているのか、こっくりとうなずいてくれました。出世欲も人並みにしかないお父様がこんなことをしたのも、すべては周りの貴族にそそのかされたからでしょう。
貴方のところの娘御はまだ結婚してないとか。
もう無理なのではないですかな。
それでは職ににつかなければなりませんな。
侍女などいかがですかな? ちょうど王女様のところで募集してましたぞ。
ハハッ、他の国でならいい男でも捕まえられましょう。
こんな感じで。あ、考えてたらイラついてきました。
「……けれど、お前1人じゃ対処しきれない時もあるだろう。その時はちゃんと私達を頼るんだぞ」
私のイラつきを他所にお父様はおっしゃいました。
「ええ、そうしますわ!
お父様、ご理解ありがとうございますわ」
そうして、今回の騒動は無事幕を閉じた…
はずでした。
実は私達の居た場所が放送席のすぐ近くで、薄い壁を通り越して会場中に私の怒声が響いてしまったとか、それを聞いて私に興味を抱いた方がいるとか 。
知っても後の祭りです。
再び、うっそーんです。
そんなのありですか⁉
壁薄すぎでしょう⁉
あれが多くの方に聞かれていたとか、恥ずかしいです!
もう、お嫁に行けませんっ。
………まぁ、しばらくして無事お嫁にはいけたんですけどね
本編とはあんま関係ないエピローグです
お嫁に行く部分になります
ここが一応恋愛になっています
↓良かったらどうぞ
〜半年後〜
王女様がついに隣国へと嫁いでしまわれました。
私は勿論侍女には選ばれませんでしたが、あれからいろいろあったんですよ。
私が金棒使いだとばれてから、やたらめったら話しかけられるようになりました。
家に訪ねてくる人までいました。
迷惑っつーのです。
毎回毎回同じ話ばかりでこちらは退屈で仕方ありません。
騎士団の方との練習もな・ぜ・か、ありました。家に直々に使いの騎士さんが手紙を持ってきてくださったわけです。何でもあの場にいた騎士の方々が興味をもたれたそうです。
嫌でしたが、権力とかゴニョゴニョの関係でほぼ強制参加です。付き合いですし、仕方ありません。それに迎えまで遣わされたら行くしかないでしょう。
騎士団に行ったら行ったで、金棒を使う方はいなかったとかで、試合をたくさん申し込まれてしまいました。面倒でしたが一人一人と何日かに分けて対戦しました。
ちなみに3回に2回ぐらいで勝てたんですよ!
と言っても、むこうは木刀なのに対し、こちらは本物の金棒なのでほとんど力技で木刀を壊しただけですけどね、てへ。
しかし、勝ったのが災いして、練習試合というの名の筋肉痛の日々が続きました。騎士の方は負けず嫌いのようです。というか、剣に誓いを立てる職の方が小娘に負けるなんて、プライドぼろぼろですよね。
でも私にもプライド(と書いて意地と読む)があるのでみすみす負けるなんてありませんけどね!
さらに、練習の関係で騎士団の副団長さんと話すようになりました。
胸元まである銀髪を一つに結び、少し鋭い目つきで鼻筋は綺麗に通り、口元は細く引き締まっていらっしゃいます。しかし冷たそうな見た目によらず、人見知りの私でも楽しく会話できるような穏やかそうな方でした。
身体も他の騎士の方に比べ細く、日頃は書類仕事が主のようで、練習試合の日程などもこの方が調整しています。まぁ細いと言っても騎士団に所属しているのですから筋肉はもちろんついており、脱いだら凄いんです! らしいです。見たことは当然ながらありませんけど。
政略結婚を避けたいだけで、恋愛結婚なら大歓迎な夢見るお年頃。
騎士団の練習に時々とは言え参加するなんて、結婚が遠ざかるわぁ。もう夢見るのをやめて、いっそ私も騎士団に入ろうかしら? なんて思っていたのですが、どうやら自惚れでなければこの副団長さん、私に好意を抱いてるようなんです‼︎
他の騎士の方と話していたら、必ずと言っていいほど割り込んできますし、相手を睨みつけてもいます。ただ話してただけですって。ブリザードをしまってください。
街に行く時も自ら護衛&荷物持ちに名乗りをあげてくれます。確かに有難いですが、仕事は大丈夫なんでしょうか? そして、さりげなく腰や肩をだくのはやめましょうか。
せっかくだし、夢見るのもありかもしれません。
どうせ、これからこんな機会なんてないんでしょうし。
そんなこんなで過ごしていたら、さらにスキンシップが多くなりました。
私も明確な拒絶はせず、なんだかんだ受け入れていました。
これで遊びとかだったら、副団長こわいですな。女の敵ですな。
そ、し、て、つい先日求婚されました!
彼は私のことを本気で考えてくれていたのです! 女の敵ではなかったのです! 金棒での制裁も必要なかったのです!
あ、いや、彼のことも信用していましたよ? けれど、ほらスキンシップが多すぎて慣れている気がしたというか、軽いような気がしたというか。
私としてはいろいろ飛ばしすぎな気がしましたけどね。私達は別に付き合ってなかったですし。
でも貴族の中には、親からあの人がお前の夫だって言われて結婚する人もいますからね。それに比べて、自分で選べるのですから文句は言えません。
……私も求婚は嬉しかったですもの。
だって他の人は金棒の話が多くてつまらないのですが、彼は私にいろんなことを話してくれたんです!
今話題の出来事や人気の本やお菓子、私の知らないことなど聞いていて楽しかったですし、プレゼントも乙女心をくすぐるもので、彼と行ったお店にハズレもありませんでしたし!
さりげない、気遣いや優しさも忘れないんですよ!
それに、私よりも強いし!!
女性達の憧れをギュッと凝縮したような彼に不安になることもありましたが、そんな直球でこられたら惚れるのも時間の問題です。
なぜ私に惚れるのかわかりませんけどね。副団長さんってよく分からないです。
まぁ何はともあれプロポーズに対して
はい、と答えたら
彼はとてもホッとした顔で綺麗に微笑んでくれました。
か、かっこいいぃぃぃぃ!
今、私達は婚約しており、式は1年後ぐらいに予定しています。
未来の旦那様は騎士団の副団長であると同時に公爵家の三男で、本人も功績などより伯爵位を賜っており、盛大な式になるそうです。
私は彼より身分の低い子爵家の出なので、玉の輿ですね! 金棒を振り回してる私が!
世の中何があるか分かりませんね!
彼は婚約してからさらに私に甘くなりましたし、彼の家族も私の家族も何も問題ありません。
一日一日が輝いているように感じる今日この頃。
このまま幸せな毎日が続いてほしいです。
願わくば彼と添い遂げれんことを。
ーーーーーーーー
しかし、そんな二人に忍び寄る影がっ…
……ふざけました
半年後は本編とあんま関係ないどころか、全然関係ないです
補足
・主人公は隣国の言葉も一応話せるけれど、他の外国語に比べ苦手ということです
・主人公は剣もそれなりにできます
・一応魔法とかあるので、金棒は軽量化、強化されています。本格的に闘う時はさらに身体強化や防御の魔法をかけたりしているようです
主人公はムキムキ☆ではありません!
2人の心境の変化とかは省きました。短編にも、後書きにも入りきらないと思ったのであってめんどくさかったわけでは、決して、ありません
実はいろいろあったんです
副団長は主人公にベタ惚れです
おもいっきり、勢いで書いてしまいました
私の得物は金棒‼ ってとこをやりたかったんです
自己満足で拙いものでしたが、最後までお読みいただきありがとうございました!!
よろしければ、評価をお願いします