第1話 いじめ
文章表現、場面の移り変わりがうまく表現できていないかもしれませんが、よろしくお願いします。
読まれた後に、感想や、この小説のいいところ、悪いところをぶつけていただけると助かります。
「誠!!早く起きなさい!何時だと思っているの!!」
一階から母さんの罵声が数週間ぶりに聞こえてきた。今日から中学生。あと夏休みまでの長い期間聞くことになるだろう。
俺は母さんの罵声を聞く前から起きていた。ただ、学校に行きたくないから布団の中に入ったまま、ボーっとしていた。
部活入って、友達つくって、楽しい中学校生活を送る。そんなのは俺にとって夢のような話だ。それができるなら朝一で学校に行っている。
ついに鬼が足音をたて二階に上がってきた。俺の部屋の前で一瞬止まり。思いっきりドアを開けた。
俺がかけている布団を天高く放り上げ、俺をベッドから引き摺り下ろし、とどめにババチョップ。一発ダウンだった。
そして無言のまま部屋から立ち去った。台風が来てすぐに去ったような感じだ。
俺はしょうがなくハンガーにかけてある紺色の真新しい制服に袖を通し、1階へと下りた。
「おっ、誠起きたか。おはよ!」
これは俺の兄貴、誠司兄ちゃん。俺とは年が10近く離れている。たまに相談にのってくれたりする優しい兄貴だ。
「誠やっと起きたのね、おはよ。早く食べないと学校間に合わないわよ!」
これは俺の姉貴、裕美姉ちゃん。俺とは年が10近く離れていて、誠司兄ちゃんとは2つ年が離れている。母さんと同じくおせっかいなやつだ。
「おはよぉ・・・・」
挨拶と共に大きな欠伸をすると姉貴のゲンコツが頭に直撃した。
「痛って〜〜何すんだよ!」
「これで目覚めたでしょ。」
椅子に座ると誠司兄ちゃんが横から耳元で言ってきた。
「ババチョップ食らったか?」
「えっ・・・うん。」
「そうかぁ・・・実は俺も入学式の次の日の朝、食らったんだ。」
今度は兄貴にババチョップがきた。
「自慢することじゃないだろ!もう誰に似たんだか。」
「・・・いつか復讐してやろうぜ。・・・本当、痛ってぇ。」
俺は今日初めて笑うことができた。学校のことも忘れ、心が軽くなった。本当兄貴にはいつも感謝している。
「いただきます!」
久しぶりの家族五人での朝食だった。実際は四人だが・・・。
「誠、部活何に入るか決めたか?」
「いや、まだ・・・。」
実際は決めていた。何の部活にも属さない帰宅部に入ろうとしていた。どうせ入ってもいじめられるだけだ。それなら入らないほうがいい。別に入らなかったからっといって人生に影響あるわけじゃないし、誰かに怒られる訳でもない。
「ぜったいに帰宅部は駄目よ。部活に入ると入らないじゃ、中学校生活が思いっきり変わってくるんだから。」
ビビッた。いきなり帰宅部入部禁止令。普通なら『・・・部に入れば?』だろ。姉ちゃんは俺の考えを読めているらしい。顔を見るとニヤリと笑った。どうやら当たっているらしい。
「お前、俺と同じ野球部に入れよ。楽しいぞ!・・・」
姉ちゃんがわざわざ箸を置いて言った。
「あんた誠が野球嫌いなの知っているでしょ!」
誠司兄ちゃんは相変わらずどこか抜けている。でもそこが兄ちゃんのいいところでもある。
俺はもう食べ終わり、2階へ上がろうとしたとき姉ちゃんが止めた。
「水泳は?小学4年まで水泳やっていたじゃない。そうよ!水泳、水泳!」
俺は一度立ち止まったが、無視して2階へ荷物をとりに上がった。
姉貴はなんで俺が水泳をやめたか知らない。知らないのにくだらない口出すな!
俺は部屋に入るなり思いっきりゴミ箱を蹴った。中に入っていた紙くずが周りに散乱する。
1つずつ集めゴミ箱へと戻した。最後の1つを投げ入れ、また考えた。
「水泳か・・・?どうせまたいじめられるに決まっている!」
扉をきつく閉め1階へと下りた。
俺がちょうど靴を履き玄関を出ようとしたとき、母さんが物凄い勢いで玄関に来た。
「あんた、父さんに挨拶は!!」
舌打ちをしてしょうがなく靴を脱ぎ捨て、父さんの前で正座した。後ろでは母さんがお玉を持って腕を組んで俺を見張っている。本当にしつこいババアだ。
そして父さんの前で手を合わせて目を瞑った。
2秒もたたず立ち上がり、多い急ぎで靴を履き家から逃げた。
ホッと安心して家の前の通学路に出ると息を呑んだ。死んでも会いたくない奴らが待ち伏せしていた。
「よお!誠。一緒に学校行こうぜ!」
俺はいやいやついていった。
こいつは小学校の時から一緒の本田竜馬。いつも2人の子分、三崎勇樹と三輪雄介を引き連れ歩いていた。今日も2人はいた。
一行は藤見川にかかる橋に着いた。この橋は川から1mくらいの高さに設置され、橋の両側に柵はなく、川に落ちやすい。そして落としやすい。いじめスポットとして有名だった。
ちょうど橋の真ん中にさしかかった時だった。竜馬が何かを橋の端っこに落とした。100円玉だ。
「あっ落としちまった!誠、取ってくれ。取ってくれたらそれやるよ。」
俺はかるっていた荷物を地面に置き、100円玉を取ろうと手を伸ばした。その時!後ろから蹴り飛ばされ、深さ1mくらいの藤見川に落ちた。
もう春だが水は心臓が止まりそうになるほど冷たい。一気に制服の中に入り込んだ。足を川底につけ、立つと、竜馬たちは悪魔のような笑い声で俺を指差し笑っている。
他にも同じ学校の生徒はこの橋を渡っている。その大部分は俺を見てバカにしたように笑っていた。
死んでやろうと思った。川底には石がある。これに頭をぶつければ死ねるかもしれない。そう思って石に手を差し伸べたとき、1人の男子が俺の前に現れた。
「大丈夫か?早く上がらないと風邪ひくぞ!」
手を引かれるまま川岸へと連れ込まれた。竜馬たちはこっちを物凄い目で睨んでいる。どこを向いていても視線を感じるような目力だ。しかし、彼は奴らを気にすることも無く、橋においていた自分のと俺のリュックを持ってきて、タオルを差し出してくれた。初めてだ。いじめられている俺をここまで助けてくれた奴は。
「これでふきな。どこも怪我していないな。早くしないと遅れるぜ、じゃあな。」
そう言って彼は去っていった。礼もいえなかった。それにこのタオルも・・・。
「誰だあいつ・・・?」
目の前に悪魔3人が鉄塔のように高く聳え立った。
「・・・・・・死ね」
そういって俺をまた川へと蹴り飛ばした。
またも3人は笑っている。こいつらは絶対人間じゃない。
「君達、何をしている!!!」
声の主を探した。それは警察官だった。橋の上に居た。
「やべ、逃げるぞ!」
そういって全力疾走で逃げていった。
「待て!!!」
警察官は、初めは追っかけようとしたがあきらめ、俺の方へ来た。
川岸から川へ入り、俺の手を引いて川岸へ戻った。
「大丈夫か?本当に最近の餓鬼は!俺の制服まで濡らされちまった。」
俺はそんな話を全部無視し、リュックを持って走って逃げた。
「ちょっと君!なんで逃げるんだよ!」
次第に警察官の声が小さくなっていった。目からは涙が溢れた。泣きたくて泣いているわけじゃない。自然に流れてきた。悔しい!!とても悔しい!!!
『俺にも父さんがいたら・・・・こんなことには。』
そう今まで何回も心の中で叫んできた。そして今日もいつも以上に叫んだ。