居場所(6)
燃えている。
キャンプが燃えている。人々は声を上げ逃げまどう…何があったんだろう?
「邪魔だどけ!!」
知らないおじさんに肩を強く押され、倒れそうになるがなんとか持ちこたえる。茫然としている場合じゃない。ただの火事を祈るけど、もしかしたら… 嫌な姿が浮かび上がり、頭を大きく振ることで紛らわす。
「鴻上くん!僕らも逃げよう!!」
もし本当に“奴”なら見つかる前に逃げないと。踵を返し走ろうとするが鴻上くんは動かない…声をかけても細まった目は僕の方に向くことなく、燃えるキャンプを見つめている。と、突如鴻上くんが僕の腕を掴み、火の中に歩き出す。思ってもいなかったことに驚き、反応が遅れる。
「ちょ、鴻上くん?!」
彼は何も言わない。
「どこ行くの?!危な… 「女だ。」
え?
「あの女を探すぞ。」
それは、わずかな時間だった。
雷じいさんと彼らのことについて話した後、俺は赤毛の女を探した。あの女と男は嘘をついている、この俺を騙せると思うなよ? 様子を見る限り、男の方は相当賢いな。荷物も必要最低限のものしか入ってなさそうだったし…女の方は何も持ってなかったからあいつらが“友達”ならまずは荷物を整えるだろう、きっとここらへんに…いた。
手に入れようとしてるのはしょっぼいパチンコか?ふーん、口も達者みたいじゃん。どうやって生き残ってきたのか、正直簡単に予想できるね。
そんな風に、彼らを見ていた時、森から一斉に烏が飛び立ち…入り口の方で煙が上がる。俺と彼が走り出したのはほぼ同時だった。
「ララちゃん!逃げよう!」 「“奴”だ!!全員逃げろぉ!!!」
火の中の影は次第に大きくなり、入り口の警備兵を持った、“奴”が現れた。懐かしい声がキャンプに響き渡る。長い間聞いていなかった声…
意を決して道のど真ん中に立ち、“奴”と向き合う。デカい頭が小さく傾き、警備兵を投げた。ゴミみたいに扱ってくれるぜ、ムカつく。 ここの副リーダーとして、被害を最小限に抑える義務が俺にはあるんだ。その赤い目ん玉、斬り潰してやるよ。
態勢を整え閉じていた目をゆっくり開く…と
「いねーーーーーーーーーーーーー!!!!!!?」
伊藤と一緒にキャンプの中を走る。
あの男、たしか大和とか言った男の声が広まって周りの人もみんな走っていた。でも、後ろから聞こえる。知らない人の、叫び声が聞こえる。 それは徐々に迫ってくるようでまるで私たちを追いかけてきているように思えた。震える私の手を掴んで走る伊藤、彼の手はとても大きくて安心させてくれた…でも、それも前の話。今は何だかとても不安、そんなこと言えないけど。
私は強く生きるんだ。もう頼らないと決めたんだ。もう…
「?!ララちゃん?」
私は伊藤の手を放していた。驚いた彼の顔が人の波に飲まれていくけれど、手だけはまだ目の前にあった。
「伊藤、私のことはいいから早く逃げて。本当はもっと足速いくせに。」
「 !!」
何言ってるかもう聞こえないし。聞こえるのはもう叫び声だけ。伸ばされた手は空を掴んで、見えなくなった。走り疲れちゃって汗が頬を流れた。
伊藤と別れてすぐなのに人の波がもうなくなっている。布でできたキャンプはすぐに引火するから辺り一面もう赤い。全部全部燃えていく。もう走らずに歩いてる私は諦めているのかもしれない。近くには怪我をして走れない人もいるというのに、走らない私は最低だ。そう、私はいつだって最低だ。あの時だって私は諦めた。その前も、私は諦めた。
「詩織…」
今は亡き彼女を思い浮かべて涙を流した。これは後悔なのか、寂しさなのか、罪悪感なのか…
つんつん、と肩を叩かれた。条件反射で振り返る。
「ギャ。」
驚きはしなかった。自嘲気味に笑ってしまう。
「やっぱり、あなただったのね。」
“奴”は豚を殺した“奴”だった…
「ギャ。」
話数が多いのに内容が少ないので統一するか検討中です。




