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異変開始


 今日もこの空間はとても賑やかで、何が不吉なことが起きるなんて考えられないほどだった。

「今日も一段と寒いなぁ!よし、俺があっためてやらぁ!」

「寒くねぇからやめろ!!いっつもそう言ってんだろが!!」

「相変わらず水星は冷てぇな!もっと暑く生きようぜ?」

「てめぇは暑苦しすぎるんだよ太陽!!」


「全く、あっちは暑すぎて敵わないわね。汗はメイクの大敵何だからやめてほしいのだけれど。地球もそう思わない?」

「えっ僕?確かにあっちは賑やかでちょっと疲れるけどこっちも言えたことじゃないかなぁ。でも元気なのっていいことじゃない?」

「( ^ν^)」

「…僕もあっちは暑すぎて苦手です」

「地球のこと脅してんじゃねぇよ金星!てかメイクなんざいらねぇだろ」

「(#^ω^)」

「…ほんっとにすいませんでした」

「火星も金星の圧に負けちゃってるじゃん…」


「相変わらずだなあいつら。俺が守ってやらにゃすぐどっか行っちまいそうだな」

「あんたはまたそんなこと言って。あいつらなら木星居なくてもだいじょーぶだって何回も言ってるじゃん」

「でもよー土星。あいつら強いけど何か頼りないんだよ。なら俺が全員守ったほうがよくね?」

「…ならいい方法があるよ。1日1000回スクワットしたら強くなって守りやすくなる」

「本当か!やってみる!」

「信じたWWW」


「…zzzz」

「…ヒュー、ヒューヒュヒュー♪」

「………」


 今日も彼らはいつも通りの空間でいつも通りの日常を過ごす。皆、何も変わらない。そんな日になるはずだった。

「…っ!」

 寝ていたはずの天王星がばっと起き上がった。普段夢も見ないほど熟睡して、何をどうしても死んだように寝る彼がだ。

「え?どうしたの、そんなに汗かいて」

 口笛を吹いていた海王星が声をかける。いつも自分のことばかりする海王星でも、見ないふりはできなかったみたいだ。それほど珍しいことなのだ。

「槍でも降るの?」

 少し遠いところで虚空をボーッと見ていた冥王星も驚きの声を上げ、天王星らの方に視線を向けた。しかし、目は合わせていない。兄弟相手でも警戒しているようだ。

「…あー、もしかしたら、そうなのかもね…」

 冷や汗が吹き出る青ざめた顔から、そんな言葉が発せられた。その声には恐れの感情が混じっていて、聞いてるだけでも恐ろしい事が起きるとわかるほど感情が入っていた。視線はうつむいていて、そのよくないことから目を背けたいという気持ちが伝わる。

「…夢?」

 そう冥王星が言う。

「だとしたら大袈裟」

 続けて海王星も発言する。2人が気になって天王星に話しかける。彼が睡眠中に起きるなんて滅多にない上に、とても怯えてる素振りなのだから、不思議に思っても仕方ないだろう。

「…みんながどんどん離れ離れになる夢見た。すごい変な感じする」

 若干震えた声は、そんなことを意味する言葉を発した。その離れ離れが何なのか分からない2人は、大して怖いことじゃないだろうと思って、そんなことか、心配して損した、なんて落胆の声を上げた。天王星も、気のせいだろうと思考を放棄した。胸の奥が疼いているのを見ないふりして。

 だからこそ、運が良かったと言えるだろう。

 天王星が寝直そうと横になりかけた時、人影が見えた。冥王星と気があう準惑星たちかと思ったが、違った。一瞬で容姿を見分けた訳じゃない。ただ、直感でヤバいと感じたのだ。

 相手が手を前に出したと同時に、いや、その前に動き出したのが幸運だった。

 いつもの眠そうな目は冴えている。冴えた目は相手を見る。外さないと心に決める。手を向ける。太陽の熱に当てられて得られた魔力を込める。そして放つ。彼の魔法を。

─ウラノスの風─

 天王星の手の平にモクモクした白い雲のような塊が生み出された。それは次第に大きくなり、女性2人分ほどの楕円形の大きい嵐となった。凍死してしまうほど寒いそれは白い閃光のようで、飛行機が通ったと思えるほど早く、神威の風のごとく空気を切り影に邁進した。

「チッ…」

 嵐は舌打ちをした影が伸ばした手によって、縦に引き伸ばされ、高温のガスに分解され最終的に手に吸い込まれた。

「ちょ、何っ?」

 その様子に気づいた海王星が心底面倒くさいという声を出した。

「え、ほんとに槍降ってきた?」

 冥王星が動揺して冗談で言ったことを掘り返している。他の星々も気づいて影のいる方を向いた。

「嘘、トップクラスで強力な僕の嵐がバラバラになるなんて…」

 天王星が絶望混じりの声色でポツリと発した呟きは、聞こえないほど弱々しかった。

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