皇帝陛下と薬師ナギサ
王宮に着くと、そのまま皇帝陛下の病室に案内されるナギサ達。
(イシュタル侯爵家ひとり娘 ナギサ)
お母様、お父様。
(イシュタル侯爵家当主 クラン:女)
よく来た、ナギサ。
(イシュタル侯爵家婿養子 ゲイン:男)
お前の腕を見せてくれ。
(ナギサ・イシュタル)
はい、頑張ります。
皇帝陛下に近づいてもよろしいですか?
(マンティコ帝国宰相 グレン・アシス:男)
もちろんだ。
(ナギサ・イシュタル)
では、失礼いたします。
ナギサは皇帝陛下に近づく。
(ナギサ・イシュタル)
では、いきます。
【診断】
なっ!
(マンティコ帝国皇帝 リリアス・マンティコ:女)
どうした、我はもう助からんだろ。
(グレン・アシス宰相)
陛下、そんな……
(リリアス・マンティコ皇帝)
言うな、自分の死期ぐらい分かるわ。
其方に言命ずる、我を介錯せよ。
(ナギサ・イシュタル)
嫌です、必ず助けてみせます。
(リリアス・マンティコ皇帝)
ぬかせ、我はもう助からんわ。
(ナギサ・イシュタル)
皇帝陛下、一つ許可を。
(リリアス・マンティコ皇帝)
なんだ?
(ナギサ・イシュタル)
陛下は病魔に全身蝕まれております。
今からする治療でダメたら、一度死んでください。
必ず蘇らせます。
(マンティコ帝国近衛騎士団長 アイリス・バロイ:女)
貴様!今なんて言った!(激怒)
(ナギサ・イシュタル)
今からやる処置で無理なら、一度死んでくださいと。
(アイリス・バロイ近衛騎士団長)
許さん!今すぐ叩き斬る!
(ナギサ・イシュタル)
それは私が失敗してからにしてください。
やれる手は2つ、最高位の回復魔法を掛ける事、それで無理なら、一旦リセットです。
蘇らせれば、全てがリセットされ、健康体で復活できます。
しかし、これは最後の手段です。
(グレン・アシス宰相)
其方ならできると。
(ナギサ・イシュタル)
できればしたくないです。
しかし、最後はやるしかないです。
失敗すれば、その時はこの場で叩き斬ってください。
どのように苦しめられても構いません。
(クラン・イシュタル)
やはりそこまで……
(ナギサ・イシュタル)
はい、はっきり言います。
内臓全て、骨、頭の中まで病魔に蝕まれています。
普通の治療じゃ助かりません。
(リリアス・マンティコ皇帝)
やってみろ、我は其方に賭けよう。
(グレン・アシス宰相)
陛下!
(リリアス・マンティコ皇帝)
此奴がそこまで命を賭けると言うのだ、やらせてみれば良い。
(ナギサ・イシュタル)
では、まず、治癒魔法を掛けます。
【テラヒール】
温かく眩しいぐらいの光に包まれるリリアス・マンティコ皇帝。
(マンティコ帝国筆頭魔道士 クレイ・サクト:女)
嘘だ!
(アイリス・バロイ近衛騎士団長)
どうした?
(クレイ・サクト筆頭魔道士)
"テラヒール"なんて、神話の世界の魔法だ。
神級の治癒魔法で、存在するか分からない魔法だ。
(クラン・イシュタル)
どうだ?ナギサ。
(ナギサ・イシュタル)
ダメだ、骨の奥まで病んでいる。
それと、これは呪いだ、呪術を用いたヤツが居る!
(アイリス・バロイ近衛騎士団長)
なんだと!
(リリアス・マンティコ皇帝)
呪術か、大体想像がつく。
そこにマクイ辺境伯が居るな。
我に呪術を掛けたのは、其方の手の者だろ。
(マクイ辺境伯:男)
なっ!何をおっしゃいます、陛下(焦)
(リリアス・マンティコ皇帝)
貴様は我を疎ましく思っていた。
隣国と蜜月の関係の貴様は、裏取り引きをしたのだろ?
次期皇帝にでもしてやると言われたか。
(マクイ辺境伯)
まさかそんな事は。
何かの間違いです。
大体、この女の力が本物かどうか分からないではないですか!
(リリアス・マンティコ皇帝)
論点のすり替えだな。
なら、我が助かれば、貴様は全てを喋るか?
(マクイ辺境伯)
うっ……
(アイリス・バロイ近衛騎士団長)
何故、答えられない。
違うなら、堂々としていれば良いだろう。
(マクイ辺境伯)
はっ、ははっ、最終手段は蘇り?出来るものならやってみろ!
(アイリス・バロイ近衛騎士団長)
語るに落ちたな。
捕えろ!
(近衛騎士達)
はっ!
(アイリス・バロイ近衛騎士団長)
連れて行け!
(ナギサ・イシュタル)
いや待ってください。
あなたは蘇りは無理と言いましたね?
(マクイ辺境伯)
当たり前だ!できるものならやってみろ!
(ナギサ・イシュタル)
分かりました、陛下、よろしいでしょうか?
(リリアス・マンティコ皇帝)
あゝ、やれ。
(グレン・アシス宰相)
陛下、そんな無茶な!
(ナギサ・イシュタル)
騎士団長、剣を構えてください。
(アイリス・バロイ近衛騎士団長)
あ、あゝ……
アイリスは剣を構える。
(ナギサ・イシュタル)
陛下、ではいきます。
一度死んでください。
そう言うと、ナギサは皇帝の胸を刺した。
リリアス・マンティコ皇帝が息を引き取る。
(ナギサ・イシュタル)
【診断】
確実に亡くなりました。
確認してください。
(グレン・アシス宰相)
あ、あゝ、分かった。
(アイリス・バロイ近衛騎士団長)
なら、僭越ながら、私が……
・・・死んでいる、崩御なされた。
(ナギサ・イシュタル)
では、いきます。
【リボーン】
温かい光に包まれ、光り輝くリリアス・マンティコ皇帝。
そして、光がおさまると。
(ナギサ・イシュタル)
体力回復です。
【エナジーチャージ】
しばらくすると、変化が起こる。
(リリアス・マンティコ皇帝)
うっ、うーん……我は助かったのか?
(マクイ辺境伯)
うっ、嘘だ!信じられん!化け物だ!
(ナギサ・イシュタル)
陛下、最終確認をいたします。
【診断】
無事、終わりました。
(アイリス・バロイ近衛騎士団長)
陛下!
(リリアス・マンティコ皇帝)
呼吸が楽だ、頭も軽い。
前より身体の調子が良いぞ。
(ナギサ・イシュタル)
リセットしました。
長年の疲労や古傷も治っているはずです。
(リリアス・マンティコ皇帝)
そうか。
リリアス・マンティコ皇帝は、古傷だった膝や身体の傷があった場所を見る。
(リリアス・マンティコ皇帝)
傷跡が無い。
足も軽い。
其方の言う通り、治っているな。
(マクイ辺境伯)
嘘だ!そんな事、あるわけがない!!
(リリアス・マンティコ皇帝)
ほぅ、貴様は我が嘘を言っていると言うのだな(冷たい目)
(マクイ辺境伯)
いえ、そういう訳では……
(リリアス・マンティコ皇帝)
では、どういう訳だ?(蔑む目)
(マクイ辺境伯)
いえ、その……(冷汗)
(アイリス・バロイ近衛騎士団長)
連れて行け!全て吐かせろ!!
(近衛騎士達)
はっ!
静まり返る皇帝の病室。
(リリアス・マンティコ皇帝)
どうした?我は生き返ったぞ。
(グレン・アシス宰相)
はっ、はい!陛下、おめでとうございます!
(クラン・イシュタル)
よくやった、ナギサ。
しかし、いつの間にそんな事が……
(ナギサ・イシュタル)
えっ?いや、その、あはは(汗)
(クレイ・サクト筆頭魔道士)
ぼ、冒涜だ、神への冒涜だ!
(アイリス・バロイ近衛騎士団長)
なんだと?なら、お前は皇帝陛下が死ねば良かったと?(感情の消えた目)
(クレイ・サクト筆頭魔道士)
いえ、決してそういう訳では。
しかし、これは神への挑戦!人が踏み入れてはいけない神域です。
これは禁忌かと。
(リリアス・マンティコ皇帝)
なら、このナギサは神だな。
神なら神域に居てもおかしくない。
(クレイ・サクト筆頭魔道士)
そ、それは、そうですが……いや、神??
(ナギサ・イシュタル)
皇帝陛下、私は帝国の一貴族です。
(リリアス・マンティコ皇帝)
吐かせ。
これだけの奇跡を平然とやっておいて、一貴族な訳なかろう。
(ナギサ・イシュタル)
えっ?いや、必死だったんで(汗)
(リリアス・マンティコ皇帝)
其方は今から我の右腕よ、王宮に部屋を用意する。
(ナギサ・イシュタル)
えっ?いや、その、薬局がありますので……(焦)
(リリアス・マンティコ皇帝)
噂は聞いておる。
なら、王宮から通えば良かろう。
アイリス、護衛を頼んだぞ。
(アイリス・バロイ近衛騎士団長)
はっ!陛下!
(ナギサ・イシュタル)
勘弁してください(涙目)
しかし、そう簡単にいく筈がない。
王宮の皇帝陛下の自室の隣りにナギサの部屋を用意される。
また、公務の間には、お忍びで薬局にやってくるなど、なかなか離してくれないリリアス・マンティコ皇帝。
(リリアス・マンティコ皇帝)
ナギサ、来たぞ!
(ナギサ・イシュタル)
へ、へい……
(リリアス・マンティコ皇帝)
マンテ子爵だろ?忘れるとは酷いな(ニヤッ)
(ナギサ・イシュタル)
マンテ子爵……いや、無理がありますって。
(リリアス・マンティコ皇帝)
じゃあ、男爵か騎士爵にするか。
(ナギサ・イシュタル)
なんでです。
せめて我が家より上の爵位でお願いします(涙目)
(リリアス・マンティコ皇帝)
そんな事をしたら、王族とバレてしまうじゃないか、ナギサ伯爵。
(ナギサ・イシュタル)
・・・は?
(リリアス・マンティコ皇帝)
其方の家は侯爵だろう。
同じでも良かったのだが、それでは其方が家に気を使うだろう。
家督を継げば侯爵だしな。
という事で、手始めに伯爵の爵位を与える。
(ナギサ・イシュタル)
いいです、要りません、社交界は勘弁してください(涙目)
(リリアス・マンティコ皇帝)
何故だ?社交界は我と一緒に行くぞ。
その辺の貴族が手を出せるはずが無かろう。
(ナギサ・イシュタル)
もう泣きます。
普通に薬師、させてください(半泣)
(リリアス・マンティコ皇帝)
無理だな。
我の件は隣国までも知られている。
それなりの爵位があり、我らの一族と深い関係でなければ刺客が来る。
我とて其方を手放す気は更々無い。
(ナギサ・イシュタル)
さいですか……(涙)
(リリアス・マンティコ皇帝)
これも其方の運命だ。
(ナギサ・イシュタル)
はい……(遠い目)
もはや諦めの境地に至ったナギサ。
そうなると、是非弟子にとナギサの元へ押しかけてくる。
それをアリスが選抜する。
ある日……
(リリアス・マンティコ皇帝)
ナギサ。
(ナギサ・イシュタル)
はい、マンテ子爵。
(リリアス・マンティコ皇帝)
其方を帝国薬師大学の講師に推薦しといた。
(ナギサ・イシュタル)
無茶です!私の知識は平均以下です。
助手のアリスに頼ったりします。
それに、いざとなれば、魔法のゴリ押しです。
まだ、魔法学校の方が現実的です。
(リリアス・マンティコ皇帝)
なら、魔法大学だ、変更しておく。
(ナギサ・イシュタル)
ううっ……
魔法陣よりイメージで発動してますが、大丈夫ですか?
(リリアス・マンティコ皇帝)
なんと、イメージでか!
是非、我にも教えてくれ、新しい方法だ。
(ナギサ・イシュタル)
あぅ……はい……(涙目)
なんか自爆したナギサ。
その後、皇帝陛下の魔法の家庭教師をすることになったナギサ。
その内容は、筆頭魔道士も真っ青な無茶苦茶な内容だった。
魔法理論、魔法陣は完全無視、感覚とイメージのみで操っている。
(リリアス・マンティコ皇帝)
これは面白いな、面倒でややこしい魔法理論なんて、なんの役にも立たん(笑)
これだと操るのが楽しいぞ。
流石皇帝陛下、飲み込みが早い。
そのせいか、今まで以上の威力で発動させることができているとか。
騎士団の魔法訓練場の的を打ち砕いたのには、周りもどん引きした。
そうなると、魔道士は目の色を変えてやってくる。
自分もレベルアップしたいと。
それに皇帝陛下が了承したから、もはや薬局どころではなくなった。
近衛騎士団や騎士団の中位魔道士以上になると、流石センスがある。
軽く威力が倍になった。
訓練道具を作る工房から苦情が来たので、皇帝陛下の許可を得て補強した。
(ナギサ・イシュタル)
皇帝陛下、薬局が……
(リリアス・マンティコ皇帝)
なんだ、行ってないのか?
(ナギサ・イシュタル)
行く時間がありません(涙目)
(リリアス・マンティコ皇帝)
そうか。
宰相に言って、スケジュールを管理させよう。
(ナギサ・イシュタル)
お願いします。
宰相のスケジュール管理で、やっと薬局に行けるようになったナギサだった。




