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第三節:化け物
次の日、中央司令部の映像解析班が帝国の放送網を傍受した。
「例の映像、これです。……これを見てください」
画面に映し出されたのは、蓮禍だった。
ナイフを持ち、雪を踏み、敵兵を次々に倒していく姿。
その映像の上には、こう書かれていた。
「共和国の造った“怪物”」
「非戦闘員も容赦なく殺戮する強化兵」
サフィが憤った。
「ふざけんな! あれ、あの時の……! 俺らの仲間を守るために――!」
「意味はないよ」
蓮禍が短く答える。
「彼らは真実を求めてるんじゃない。“秩序”に従う理由を探してるんだ」
サフィは、悔しげに拳を握った。
「じゃあ、どうすればいい。嘘でも正義を信じてる奴らに、俺らが殺されても仕方ないってのか?」
「……“仕方ない”と、“受け入れる”は違う」
その言葉に、サフィは一瞬、黙った。
蓮禍は空を見上げた。
崩れた街、歪められた真実、守れなかった命。
それでも、私には任務がある。
命令がある。
「行こう。次の防衛線は、北西のトラム街区だ」