第二節:合流
二節です。割と小刻みになると思います。
やがて、煙にかすむ丘の上に、別部隊の旗が見えた。
通信で確認したエルレインの隊——生存していたようだ。
「おーい、蓮禍! こっち、こっち!」
遠くから手を振るサフィ・エルレインの姿が視界に入る。
装甲の一部が破れ、左腕には応急処置の包帯が巻かれているが、あの軽薄な笑みは健在だった。
「こっちも同じようなもんだったよ。」
「人は死ぬ時はすぐ死ぬよ。」
「冷たいなあ、ほんとに。」
雪を踏みしめて合流した私に、サフィは冗談混じりの調子で言う。
けれどその視線は、私の背後に残った影を数えるように、一瞬だけ沈んでいた。
「で、あんたを呼んだのはこっち。」
彼の視線の先——雪の斜面の向こうから、長いコートを纏った人影が現れる。
白銀の世界を切り裂くような、規律正しく、凛とした足取り。
「……来たか。破澄蓮禍。」
低く通る声。
それだけで、背筋が自然と伸びた。
教官——ユスティナ・ヴェルガ。
氷のように冷たい目をしている私たちの教官。
私が今日まで生きていられるのはおそらくこの人のおかげだ。
「命令だ。お前には中央司令部より特例任務が下された。戦線再編に先立ち、対象区域の掃討と、新型行動アルゴリズムの検証任務だ。」
「了解しました。」
「その前に、メンテと補給を受けろ。お前の左胸、再生の傷痕がまだ残っている。心臓が止まる前に、次は動き方を考えろ。」
「……はい。」
「“はい”ではなく、“了解しました”だ。お前は軍属だろう、破澄蓮禍。」
一拍の沈黙。私は一度、息を呑んだ。
「了解しました。」
彼女はうなずき、踵を返す。
近くの医療テントへ入ると、医師が私を待っていた。
「ちょっと傷見せてねぇ….」
私は防弾チョッキを脱ぎ、下着を捲る。
「蓮禍さん、無理しすぎだねぇ。今の再生速度だとそのうち再生が追いつかなくなるよ?とりあえず治癒血清渡しておくから致命傷を喰らった後には必ず打っておいてねー」
そう言われ、テントを出ると、サフィが声をかけてきた。
「行こうか、蓮禍。」
「あぁ」
そう言って私たちは再び銃を構えた。
最後まで読んでくれてありがとうございます!
まだまだ続くので、楽しんでください!