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消失点のその先に  作者: 白雪 凛


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EP 1-2 日陰編

「ヒロ、お前陽くんの時間奪うんだからお前が返せるものは何かしっかり考えておけよ。もし万が一彼が行きたい大学落ちたら責任取れないんだからな」

征治はきつく言い放った。

「……うん。だからあまり時間を奪わないように気をつけるよ」

そうだ。両親もそうだった。時間があれば将棋を指していた俺を両親は無理に転勤についていかせるようなことはしなかった。こうして祖父の元に預けるのが俺のためだとそう言ってくれた。勉強も無理にやれとは言わなかったし、俺自身のやりたいことを優先してくれたことに今でも感謝している。

俺が高校生の陽に代わりにできることはなんだろうか。彼が困っていることがあるのであれば、勉強以外であれば話に乗ってあげられるかもしれない。その辺り今度聞いてみようとそう思った。



翌日陽は祖父の教室を訪ねてくれた。

「学校が夏休みに入るまでは、火曜日と木曜の学校終わりから、1時間くらいであれば時間取れると思う」

「んあぁありがとう。そんなに時間とってくれると思ってなかったから嬉しい」

自分が想定していたよりだいぶ時間を使ってくれることに感謝する。これでやっと抜け出せるようになるだろうか。

「あぁちょうど学校以外の場所でも人みゃ……。いや俺にとって実は将棋はいい思い出だから息抜きになるかなって思って」

「そっか。ありがとう。時間ないし早速将棋指しに行こうぜ」



ピピピ。

アラームが鳴る。集中している1時間と言うのはあっという間だった。

他の人の迷惑にならないよう教室ではなく、洸斗の部屋で将棋を指していた。

「洸斗さんは、わかりやすいですよね」

帰り支度をする陽と目があう。

「それよく言われるー」

そうだ。顔に出過ぎだと師匠にも言われたが、自分では意識していないのでそれがどういうことなのかよくわからない。

「だから読みやすいのかもしれませんね」

「……そのわかりやすいってのは、次の指す手が読めるってことなのか」

「うーんそう言うわけじゃないですけど、俺が置いた駒の位置が想定外だと驚いた顔をするし、想定内だと次の手に迷いがないから……。それにあまり奇抜な動きがないから数手先が読みやすいというか」

「そっかぁ〜自分の中にはいくつものパターンがあって、その一つ一つの動きをその時に合わせて変えているつもりなんだけどな」

「それだったら一度、洸斗さんの行動パターン分析したほうがいいんじゃないですか。自分が思っているよりも数字や動画で見たほうがわかりやすいので」

「それどうやってやればいいの」

こんなことも高校生の陽に聞いてしまう自分が情けない。

「そうですね。最初は俺が記録していきますけど、それだと時間かかるので、詳しいやつに分析用のシステムか何か作れないか聞いてみようと思います」

「システム?はい。って言っても俺もそこまで詳しくないですけど。アプリとかにあると思いますよ。分析してくれるやつ」

「えっそんなのあるの。携帯買ってくればそれ使える?」

「携帯持ってないんですか。俺が何かあっていけなくなったら困るので携帯買っておいてください」

「おっわかった。次来るまでに買っておくよ。なんせ時間だけはたっぷりあるんでな」

「いいですね。携帯買ったらアプリ入れてやってみてもいいですよ。新しい発見あるかも知れないですし」

「おうわかった」

返事したのはいいものの、携帯を壊してからだいぶ時間が経つので今の最新の携帯をどう使えばいいのかよくわからないんだよな。陽に聞けば教えてくれるだろうか。しかしただでさえ迷惑かけていると言うのにそこまで聞くか。俺は人生の先輩としてこんなんでいいのか。

「そうだ。せっかくだしお前に何か返せるものあれば返したいと思うんだけど、報酬何がいい」

「えーっと。こっちも気分転換が目的なので特にいらないですけど」

俺が無理して依頼したことなのに、何もいらないで引き受けてくれるなんてと感動してしまうが、それでは祖父からなんて言われるかわからない。

「じい、祖父から時間を奪うんだから、それ相応の対価を返せと言われておりまして」

「そうですか……。それでは考えておきます」

そう言って陽はさわやかに帰っていった。



数日後。

「洸斗さん携帯いじれるようになりました?」

約束通り陽に言われた翌日に携帯ショップへ行き、携帯を購入したもののあまりいじれてはいなかった。

「携帯って高いんだな」

俺が前使っていた機種はもっと安かった記憶があったのだが、数年でこんなに変わるものなのか。

「いや、それは1番最新の買ったからですよ」

「それは……」

恥ずかしい話どれ買えばいいのかわからなくて店員さんに1番いいものくださいって言ってしまったのだ。値段を見た時は驚いたが数年使えるし、アプリとやらも使えると聞いてあまり何も考えずに購入してしまったわけだ。

「1人で買いに行ったのが悪いんですよ」

「だって」

言い訳したって意味ない。

「もう買っちゃったし、あとはちゃんと使えば元取れるだろう」

「ちゃんと使えば……ね」

陽が使えるのかと言う疑いの眼差しでこちらを見つめてくる。

「だ、大丈夫だよ。俺物覚えはいいはずだから」

断言できなくて最後の方は陽に聞こえないくらい小さく呟いたつもりだったが、どうやら聞こえていたらしい。

「はいはい、教えますよ。だから早く使いこなせるようになってくださいね」

俺は小さく頷いた。


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