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消失点のその先に  作者: 白雪 凛


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EP 2-3 充編

祖父母が来てくれると言った日に、充は久しぶりに夕飯を1人で食べなくて済むという喜びに嬉しくなった。

夕飯自体は家事代行の人が作ってくれたものだったが、充がお皿を選んで盛り付けをした。

充は携帯を見ながら、いったい何時に来るのだろうとそわそわしながら待っていた。

すると父からの着信が入った。

「父さん達病院にいるみたいなんだ。このまま見に行ってくるが充も一緒に病院に行くか」

充は携帯電話から聞こえてくる父の慌てた声に、どう答えていいのかわからなかった。

「ぼ、僕のせい」

震える声で呟いた。

僕が来て欲しいなんて言ったから、だから祖父母は病院に行くことになったの。どうして。

ガチャリ。玄関の鍵が開けられ誰かが家に帰ってきた。母は出張に行くと言っていたし、父は今電話をしているので兄だろうか。しかしその人物はリビングのドアを開けることなく2階へ続く階段を登って行った。

充は食事に手をつけずに、ソファの上でクッションを抱えて小さくなった。



トントントン。2階に行った兄が階下へと降りてくる足音が聞こえた。

充は何もせずにじっと待っていたが、兄はやはりリビングに来ることはなく、お風呂に浸かりにでも行ったのだろうか。1人にしないでという気持ちとこっちに来ないでという気持ちの狭間で揺れ動いていた。



充は気づいたら眠ってしまっていたようだ。

ソファで寝てしまったので身体が痛い。携帯を探そうとして起き上がった時に、充の身体にタオルケットがかけられていたことに気づいた。兄だろうか。

充が携帯を開くと父からの着信とメッセージが入っていた。

「父が階段から落ちて骨折したようで、全治1ヶ月とのことだ。祖父母から謝っておいてくれとのことだ」

充は事故などではなかったことに安堵したが、一緒に夕飯を食べれ無くなってしまったのが少し残念だった。



翌日、充は学校から帰ってくると1人で夕飯を食べた。結局またこの生活か。

しかしこの日は兄が珍しく早く帰ってきた。その上リビングに顔を出したのだ。

「おっ、お帰りなさい」

充は嬉しさで言葉が裏返る。兄はその言葉を無視して冷蔵庫の方へ行ってしまう。

「お兄ちゃん、学校はどう?やっぱり忙しいの」

久しぶりの兄に話しかける。

「飯食ったの?」

兄から声をかけられる。それが嬉しくて充の澱んでいた心が、掬い上げられた。

「うん食べたよ。兄さんもあるもの好きに食べて大丈夫だよ」

兄は冷蔵庫から何個か手に取ると、電子レンジで温め始めた。

「早く帰ってくるの珍しいね」

夕飯の準備をする兄を横目にしながら話しかける。

「お前は最近ゲームばかりしてるんだろ。睡眠はちゃんとしたほうがいいぞ」

充より遅くに帰ってくる兄に言われたくないセリフだが、充は頷いた。兄が心配してくれているのが嬉しい。

「ありがとう気をつける。兄さんの学校の人達ってやっぱり頭いいの」

「さぁ?」

兄は昔から他人にあまり興味がないタイプであったが、それは今でも変わらないらしい。

「最近は何してるの?」

今は髪色が黒髪に戻っているが、ジャラジャラとピアスをつけた時の兄の姿が頭を掠める。

「さぁ?それより充は勉強は大丈夫なの」

「う、うん。あ……でもこの前赤点取っちゃった」

期末試験の前に、ゲームでイベントが始まってしまい、充は試験勉強そっちのけでゲームにのめり込んだのだ。どうにかなるだろうと油断した充は、初めて赤点というものを取った。三好には呆れられ、細山は笑っていた。

「そう。まぁ次気をつければいいんじゃない」

優秀な兄にそう言われると、また自分が情けなくなってくる。

「兄さんはどうして、勉強を頑張れるの?将来役に立つかもわからないのに」

充は勉強が好きではないので、少しだけ兄が羨ましくあった。

「楽しいから」

そう短く答える兄。父の遺伝を引き継いでいるんだろうなと、自分はきっと勉強の好きではなかった人が親だったのだろうと苦い表情をする。

「それより充、お前はもう少し本質を見極める力を磨いたほうがいい」

食事を平らげて洗う兄は、充をみずにそう述べた。

「えっ何どういうこと」

兄はそれには答えず、洗い物が終わるとさっさと自室に戻ってしまった。

久しぶりに兄と会話をできたのは良かったが、兄の残した言葉の意味がわからなかった。本質って。何か充が見落としていることがあるのだろうか。



「ねぇ本質ってなに?」

充は学校で三好に聞いた。

「本質って、そのものの核になっていることとか、重要なことじゃないのか。急にどうしたんだ」

「いや、久しぶりに兄と話したんだけど、本質を見極める力がないってさ」

「充何かやらかしたの」

登校して来た細山が声をかけてきた。

「おはよう。いや何もしてないけど」

完全に何もしてないわけではない。家族関係では散々泣いたり迷惑をかけたばかりだった。

「何に対して言われたのか知らないけどさ、本質なんてそう簡単に見抜けるものじゃないって」

細山は鞄からメロンパンを取り出すと、頬張りながらそう答えた。

「そう、だよね」

充は兄の告げた言葉の意味をずっと考えているのだ。あんなに熱中していたゲームが手につかなくなるくらい。

充はふと疑問に思ったことがあった。

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