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消失点のその先に  作者: 白雪 凛


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19/41

EP 2-3 黒岩編

テスト最終日。

「やり切ったー」

黒岩は机で伸びをする。テスト期間の間にいくつか気になっている本が発売されていたので本屋にでも行こうかと思っていると、HR明けに獅童がこちらに向かって歩いてきた。

「黒岩今日時間あるか」

「何急に」

クラスが変わってから、そんなに交流なかったはずの獅童からこうして急に誘われるとさすがに怖い。生徒会の選挙で投票してもらうために何か賄賂でも渡されるのだろうかと身構える。まぁ学生の身なのでできることは限られているのだが。

「お茶をしに行かないか」

賄賂のほうだったか。

「選挙のことなら、きちんと演説見て投票するから気を遣わなくて大丈夫だよ」

鞄を手に取り立ち上がると、獅童に止められた。

「えっ違う違う。選挙なんて関係ないし、投票してくださいって賄賂渡したらダメだろ」

「あれ違った?」

「そうじゃないんだが、ここで話すのもなんだから、ちょっといいか」

鞄を持って獅童と人気の少ない中庭の通路に行く。



獅童は静かに、そして真面目な声で言った。

「今日、聖マリアント高校の女子達とカラオケに行くんだが、行かないか」

「生徒会選挙中にそんな事してていいのかよ」

せっかく選挙に出ているのに、そちらに注力しなくていいのかとやんわりと告げる。

「どうせ今日は活動できないのだから、大丈夫だ」

獅堂はそう言うものの、黒岩は断る口実が欲しかっただけなのだが、他になんて言って断ればいいのか。

「何か予定あったか?」

「あっうん。予定ある」

本屋に行こうとしていたので、予定がないわけではないのでそう答える。

「そうか。せっかく桐生を励まそうと思って企画したんだがな」

桐生を励ましたいだけなら、わざわざ女性とカラオケに行く必要なんてないのではと思ったが、桐生なりの励ましなのだろうか。

「今度男だけで集まる会があれば、誘って」

獅堂にそう言い別れを告げる。



黒岩は下校する人の波に乗って、駅へ向かう。

本なんてネットで買えばいいのかもしれないが、黒岩は大きな本屋に行って新刊コーナーを眺めたり、ただ本がたくさんある空間で過ごす時間が好きだ。

学校にも本はあるが、本屋ほどの早さで新しい本が手に入るわけではないし、要望が必ずしも通るわけではない。同じく図書館も好きだが、基本は区にいくつか点在する図書館内で本が分配されている。

そして本当に良いと思ったものは、お金を出そうと決めているのだ。

本を2冊ほど買い、店の外に出ると道路を挟んで向こう側に桐生の姿を見つけた。声をかけようとすると、ちょうど女性が桐生に向かって手を振った。

その場で何か話しているようだ、黒岩は声をかけるのをやめてバレないように静かに帰ろうとする。

しかし桐生とその女性の元にもう1人の人物が合流した。一ノ瀬である。

学校では制服を着ているが、私服に着替えてきたようだ。その貴重な私服姿に黒岩は手を合わせた。

しかし桐生と一ノ瀬は何をしているのだろうか。追いかけてみたい気持ちとそんなことをしてはダメだという気持ちで揺れる。



少しだけそんな気持ちで気付けば、3人が建物に入っていくところまで追いかけてしまった。

踵を返し駅までの道を戻ると、今度は獅堂がいた。

どうしてこうも近くにみんないるのだろうか。しかも獅堂は他校生と遊ぶんじゃなかったんだろうか。

黒岩は今度こそ帰路へと着いた。



翌週。

生徒会選挙の投票が近づくと、候補者達の活動が活発化した。

学校内でのパフォーマンスに留まらず、校内のwebページに、公約や今までの経歴得意な事などが掲載されていた。桐生は"多くの人にとって通いやすい学校へ"という目標と独自に調査したアンケート結果、そして改善方法が具体的に挙げられていた。

対して獅堂は"公正・公平で少数の意見も大切に"と掲げられていた。真っ直ぐな獅堂らしい目標だと思う。



廊下でふと桐生とすれ違った。

「あっ」

桐生にこの前のこと聞こうかと思ったが、人が多い廊下で話す内容ではないので言葉を飲み込んだ。

「えーっと選挙頑張って」

「ありがとう」

小さく返事があった。

「あの……。何かあったら手伝うから」

桐生には体育祭でお世話になった恩がある。それだけではなく1年の時は野枝と桐生にも英語や数学の苦手な部分などを教えてもらっていた。

「あぁ」

桐生は小さく返事した。その顔が柔らかくて、こんな表情もする人だったのだと見つめてしまった。

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