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消失点のその先に  作者: 白雪 凛


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EP 2-1 黒岩編

一ノ瀬が亡くなってから1週間経った。しかし僕はまだ彼の死を受け入れられないでいた。ここ1週間どうやって学校を過ごしたのかさえ覚えていない。ただただ時間だけが僕の心をそこに残して進んでいった。

「ただいま」

「雅くんおかえりなさい」

祖母の声が台所の方から聞こえてきた。

荷物を部屋に置くと、部屋着と下着を手に取りお風呂へ向かう。これはいじめにあった時からの習慣だ。学校であった嫌なことをシャワーを浴びる事で気持ちと一緒に洗い流していたのだ。だから学校から帰ってきたらまず最初にシャワーを浴びて気分を変える。


中学校で登校拒否になってからは、知り合いがいない環境の方がきっといいだろうという父の計らいと、祖父母の快諾でよくこっちに泊まらせてもらっていた。

高校もこちらの方が近いからといって、無理を言ってそのまま生活させてもらっている。

祖母が作ってくれた料理を居間に運ぶ。

祖母の温かくて優しい味付けの料理は、僕の大好きな味だが、舌先が鈍っているのかあまり味を感じられなかった。

夕飯が食卓に揃うと祖父母と3人で一緒に食事をした。

「雅くん最近元気がないみたいだけれど学校で何かありました」

祖母が黒岩をみて心配そうに声をかけた。

「えっと」

「あっごめんなさいね。言いたくないことなら無理に言わなくてもいいのよ」

「えっと……」

黒岩はまだ現実を受け入れきれていないので、それを伝えることが認めてしまうようで嫌だったが、祖父母にこれ以上心配かけるのも悪いと思い伝えることにした。

「クラスメイトが……その……亡くなったんです」

しかしその言葉を発したことで、落ち着いていた感情が再び襲ってきた。

「あら。それは大変でしたね。夕飯食べたら今日は早めに休んで下さいね」

僕の涙を見た、祖母が優しく声をかけてくれた。



しかし夕飯を食べ終え自室に戻るも、一ノ瀬のことで頭がいっぱいになってしまい、ドロドロとした感情が足元を闇へと引き摺り込んでしまいそうだ。

まだ信じられない。信じたくない。夢であって欲しい。これが現実だなんて思いたくなかった。

なかなか時間が進まない。走り込みにでもいってこようかと思い立ち上がったその時、部屋の外から声が聞こえた。

「雅今いいか」

祖父の声だ。

「どうぞ」

黒岩は立ち上がると部屋のドアを開けた。祖父は一冊のノートを黒岩に差し出した。

「これに思っていることを全部書き出すといい」

祖父はそれだけ言いすぐに去って行った。


普段学校で使っているノートとは違い、外が焦茶色のハードカバーになっており大人びたノートだ。

中は特に何も書かれていない少し黄色みがかったノートだった。

何もやる気が起きなかったが、時間も進まないしこのまっさらなノートに向かって自分の一ノ瀬への悲しみを書き出してみることにした。


一ノ瀬くん。僕はまだ君が亡くなったということを信じられない。どうして。だって夏休みに学校で何度かあったけど、イキイキしていて何かまた新しいことをしているんだろうなと僕まで励まされた。純粋に学ことが好きな君が、何かを見つけたかのように、僕にとっての憧れの君はただただずっと遠くにいて、こんなに近くにいるはずなのにずっと手が届かない存在だった。でもね、本当に手が届かない存在になってしまうなんて、手だけじゃなくて、声も、表情も何もかもが遠くに行ってしまって、僕の道を照らしていた光が急に消えて、また暗闇に戻ったみたいだ。

僕は君が将来どんな道を歩んでいるのかを見てみたかった。大手の会社に入社するのか、それとも大学で教授とかになっているのか、はたまたベンチャー企業を立ち上げるのか、その時に僕ももっと誇れる自分になって君の隣に堂々と立てるようなそんな人間になりたかった。どうして君なんだろうね。人がたくさんいるのにどうして優秀な君がこんなに早くに亡くならなきゃいけないんだ。どうしてこうも世界は不平等なんだ。どうしてもっと君と直接話さなかったんだろう。そう後悔しても遅いということだけはわかっている。でもこの気持ちを僕はどうしていいかわからないんだ。だって僕はまだ自分の身近な人の死を経験したことがないんだ。まさか一ノ瀬がなくなるなんて思わないじゃないか。



黒岩は今の気持ちを書き出すと一ノ瀬のことを振り返り始めた。

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