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消失点のその先に  作者: 白雪 凛


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EP 1-4 充編

その日の夜もベッドの上でずっと考え続けた。

どうすればいいのかと。

ガチャ。誰かの帰ってくる足音がした。充は急いで階下に行くと母親が頬を赤らめて帰ってきた。

どうしたのと聞かなくたって、母からはお酒の強い匂いがした。

「大丈夫?」

父も母もお酒を飲んでいるところを見たことがないので、酔っ払いにどう対応していいのかわからなかった。

ものすごいフラフラな母を支えようとするものの、身長の高い母を支えるのはとても大変だった。

リビングのソファになんとか運ぶと充はテーブルの上に水を用意し、寝てしまった時用にタオルケットを持ってきた。

「充大きくなったわね」

突然母が大きな声で叫んだので体がビクッとはねた。

「ねぇ私頑張ったわよね……。頑張った」

そこで急に泣き出す母に充は困惑するしかなかった。

母も兄と同様に家のことに疲れてしまったのだろうか。充は母を置いて部屋に戻ると悲しくなってしまった。どうしてこんなにバラバラになってしまったのだろうか。



充は翌日学校を休み、父方の祖父母の元へと行くことにした。

先に電話で行くことを告げていたので、最寄りの駅に着くと祖父が迎えにきてくれていた。

「充元気か」

変わらぬ優しい笑顔に充は泣き出してしまった。

なんとか祖父母の家に着くと、祖父母が向かい側のソファに並んで座った。

「それで充何かあったの」

電話で用件を伝えていなかったことと、先程泣いてしまったことで祖父母はとても心配そうに充のことを見つめていた。

充は家に誰も帰ってこなくて寂しいことと、母や兄が変わってしまったことを率直に伝えた。

祖父母は充が話終わるまで黙って聞いてくれていたが、すぐに父へと連絡してくれた。



「充くんはどうしたい?」

祖母に聞かれたが、充はまだその答えを持っていなかった。

「どうしたらいいのかな」

「そうねぇ。それならおじいちゃんとおばあちゃんしばらくそちらにお邪魔しようかしら」

東京にある家は、客室もあるので祖父母が寝泊まりする分には問題ない。しかし家のことや仕事などは大丈夫なのだろうか。不安に思って尋ねる。

「あら。お仕事なんかよりも充くんの方が大事だわ。お仕事は代わりにできる人がいるけれど充くんの代わりはいないもの」

落ち着きを取り戻した充は、祖母が用意してくれていたアップルパイを口に運ぶ。

「そうだ。おばあちゃん、僕料理を作れるようになりたいんだ」

そう言った充に少し驚いた祖母だったが、優しく頭を撫でると「まぁ素敵ね」と微笑みを浮かべてくれた。



「もうすぐお昼だし一緒に何か作りましょう。何が食べたい」

そう聞かれて充は即答した。

「ロールキャベツ」

祖母の料理はなんでも好きだが、東京に引っ越してからは1回も食卓に出ていなかった。

「あらあら。それじゃあ買い出しに行かないとね」

スーパーから帰ってくると、充は祖母と一緒に台所に立った。

「それじゃあまず手を洗ってちょうだい」

充は手を洗うと次に何をすればいいのか祖母に聞いた。

「キャベツを剥かないといけないんだけど、どうすればうまく取れると思う」

「そのまま剥けないの」

「それじゃあ1番外側の葉を剥いてみて」

祖母は答えは教えてくれず、充は実際に1番外側の葉の部分を剥いてみることにした。

しかし丸まっているキャベツの葉は、上手く剥くことができず、大きかった葉はいくつかの葉に分かれてしまった。

「そのままだと中々上手く剥けないのよね」

祖母はキャベツを裏返すと芯の部分をくり抜いた。

「今回は煮込むから、このまま茹でてしまいましょう」

そして大きな鍋に水を入れると、お湯を沸かした。

お湯が沸く間に玉ねぎの切り方を教えてくれた。充は慎重に玉ねぎを刻む。

「上手よ。その調子」

沸騰したお湯に祖母はキャベツを入れた。

「向きも気をつけてちょうだいね」

キャベツは芯の部分が上になるように鍋に入れられていた。しばらくするとキャベツが自然に剥がれていた。充がまだ玉ねぎを切っているので、祖母が菜箸ですくい水気を切るとトレーにのせた。

そんな調子で充は祖母に教えられながら、一緒にロールキャベツを作った。



「料理って大変なんだね」

ロールキャベツを煮込んでいる間に、祖母に話しかけた。

「そうよ。料理をした時に出た調理器具も洗わなければならないし、食べ終わったお皿も洗わなきゃいけないの」

「そっか作ってもらうのが当然だと思っていたけど、お母さんただでさえ忙しいから料理作れないのもわかった気がする」

「あらあらそれはいいことだわ。うちの人たちはそのことをあまり理解していないのよね」

祖母はリビングのソファに座っている祖父の方をチラリとみた。

「だから母さん、父さんにあんなに怒っていたのかも」

父と母の喧嘩を思い出しながら、納得する。

「おばあちゃん。僕もう少し料理できるようになりたい。そうしたらみんな帰ってくるの早くなるかな」

「早く帰ってきてもらうために頑張りましょ」



その日は祖父母の家に泊まることにした。父は出張で帰ってくるのが明日になるそうだ。

幸い明日は土曜日なので学校もお休みなので充はのんびりさせてもらうことにした。

「ここにきて良かったな」

充自身も慣れない環境でストレスを溜めていたので、気を遣わなくていい祖父母の家に安心して過ごすことができた。



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