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消失点のその先に  作者: 白雪 凛


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EP 1-2 充編

充が料理や洗濯など家のことをできるようになれば、両親の喧嘩も多少は緩和されるのだろうか。

よく眠れなかったせいで、日が昇ってから物凄い眠気に襲われる。しかしここで寝てしまったら起きるのは昼過ぎ、もしくは夕方になるだろう。もう一度眠ってしまう前に、なんとかベッドから抜け出した。

「おはよう」

台所で料理をしている母に声をかける。

「あら今日は早いわね」

「うん目が覚めちゃって」

「珍しいわね。朝ごはんまだ準備できてないから先に着替えて来なさい」

母に言われ部屋に戻るとベッドを極力視界に入れないようにして、急いでYシャツを纏い、学ランに袖を通した。

授業の時間割を確認すると教科書やノートがきちんと鞄に入っていることを確認した。

玄関に鞄を置きリビングへと戻った。

母は朝からご飯と具沢山のお味噌汁、そしてサラダを出してくれた。モデルをしていた母が出す料理は野菜が多い。そのせいで学校の給食で出る野菜の少なさに驚いた。

「れいちゃんあのさ」

充は母に夕飯だけでも手伝おうかと声をかけようとした。

「何どうしたの?悪い知らせ?ってもうこんな時間なの」

時計を見て驚いた母は、「ごめん今は時間がないからまた今度ね」と言い残して仕事へと出かけてしまった。

残された充は、テレビを消すと朝食を急いで済ませ家を出た。



「あーだめだ眠い」

授業中にあくびが止まらなかった。歴史の授業の時はうとうととしてしまい先生に怒られた。

「寝てなよ」

お昼休みに三好に言われた。しかしせっかく学校にいるなら三好や細山とくだらない会話をするのが1番楽しい。

「でも……」

「それじゃあ放課後に美味しいものでも食べようぜ」

スイーツ大好き細山からの提案に2人とも賛成した。そのため昼休みの時間は心置きなく眠れた。



放課後3人は細山の家にやってきていた。

「ただいまー」

細山は昼の間に、近所でパティシエをしている母親に連絡を入れていたようで、冷蔵庫にはケーキが入っていた。それを3人で食べながらそれぞれの興味のある話をする。

「最近駅前にドーナツのお店できたんだけどさ。なんかすごい並んでてさ」

「へぇ何か特徴でもあるのかな」

「さぁどうなんだろう。食べたことないからわかんないんだよなー」

「美味しいのかなぁ」

細山は甘いものが好きなのでお小遣いの多くはスイーツやお菓子に消えている。ちなみに美味しいスイーツの情報を知りたいのであれば細山に聞けば間違いない。

「さぁ並んでるくらいだから美味しいんじゃないの?」

充も三好も顔を食べたことがないのでなんとも答えられなかった。

「それよりさ」

三好が話を変える。

「今期のアニメなんだけどさ」

そう言って女性のキャラクターのイラストを見せられる。

三好は読書が好きだが、最近はライトノベルというものにハマっているらしい。

アニメを見ていない充は、三好が熱弁するのを聞いていた。

充が持っている話題はそう多くない。学校の誰々がとか先生がとかそんな日常の会話しかしていない。

細山はスイーツ以外だと、お笑いが好きでよく冗談を言って笑わせてくれる。

三好は読書やアニメが好きで、どのアニメがおもしろくてとおすすめしてくれる。

充は携帯を買ってもらってからは、ヴァイオリンを弾くことよりも音楽を流すことが多くなった。クラシック以外ほとんど聞いてこなかったので、最近のJ-popや洋楽が新鮮だった。



「今度うちでゲームしない」

誕生日プレゼントにゲーム機を買ってもらった三好が自慢したい様子で誘ってきた。しかし再来週からテストが始まる。

「テストの後にしない」

「そう?まだ2週間あるし、今日なら妹も習い事でいないし邪魔されずにできると思ったんだけど」

細山の方を見ると携帯の画面に夢中だったのか、話を聞いていなかったようだ。

「今日遊びに来ない」

三好が改めて言い直すと、細山はいいよと返事した後、すぐに今日は夕飯を作らなきゃいけないだったと謝った。

「それなら仕方ない。テストの後にしよう」

三好は少し残念そうに言った。

「細山はいつから料理手伝ってるの」

夕飯の手伝いをしたいと思っていた充は細山に聞いた。

「いつって、小さい頃からかなー。最初は混ぜたり皮を剥いたりから始まって、一緒にケーキ焼いたり餃子包んだりして、今では1人でもある程度は作れるよ」

「そっかー。僕も夕飯の手伝いしたいんだよね」

「おっいいじゃん。やらないと上手くならないしさ」

「うん、でも最近母さん家に帰ってくるの遅くて教えてもらう時間なさそうなんだよね」

「まぁなんか簡単そうなものでいいから作ってみたら。お米を炊くとか、そばを茹でるとか」

「そっか。そば茹でるだけでもいいならできそうかも」

充は野菜を切って、煮込んでと考えていたけど最初からそんな難しいことをする必要はないのかと少し料理へのハードルが下がった。




充はせっかくなら誰がテストで1番得点がいいかで競う事にしないかと提案した。

「負けたやつがアイスおごりで」

「のった」

三好の提案に即答する細山はすでに何のアイスがいいかなぁなどと自分が最下位になることは考えていないようだ。

充も頷くと中学生になって初めての試験に期待と不安が混じった。


「それじゃあせいので行くよ」

みんなで順番にテストの成績を見せ合った。

「国語と社会は三好で、英語と数学は充、理科は俺が1番か」

合計点だと三好が1番・充が2番・細山が最下位という順位になった。

「くっそー」

「アイスよろしく」

三好が嬉しそうに言った。

「ケーキにしておけばよかった」

細山が嘆いていた。



「よっし。俺はこのお高そうなバニラアイス」

三好が少し値段の高いアイスをとった。

「おい。安いのにしろよ」

「どれにしよう」

家でアイスをあまり食べないのでどれも美味しそうに見えた。

「悩んでるならこれがいいぜ」

そう言って細山がお勧めしてきたのは、チューブ型のアイスである。

「これなら2人でわけあえるからな」

「おいっお金浮かせようとしてるだろ」

三好が細山に向かって文句を言う。

「だって」

「いいよ。僕自分で払うよ」

父からもらっていた夕飯代も残っているしお小遣いもまだ余っていた。こんなところで争いになるぐらいなら充自身で払った方が丸く収まる。

「おい充甘やかすなって。テストで負けたらアイス奢るって決めたの細山なんだから」

「おぉそうだぞー今回は調子悪かっただけで、次回は奢ってもらうからな」



「ただいまー」

三好の家は中学校からだいぶ近くにあった。3階建てのマンションの階段から1番奥の部屋が三好の暮らす家だった。

「おかえりなさい」

三好のお母さんが奥の扉から顔を覗かせた。

「充くんと貴志くんね。いつも傑がお世話になってます」

「ちょっとお母さんいいから。2人ともその右の部屋先に入ってて」

三好は母親を扉の奥に押し込みながら、充と細山に指示を出した。

「失礼します」

充はそう声をかけて三好の部屋の扉を開けた。三好の部屋は案外綺麗で勉強机はいつでも勉強を始められるような状態だった。そして棚が多くその大半は書物で埋め尽くされていた。

「ごめーん」

しばらくすると三好がTVのモニターを抱えて部屋に入ってきた。三好は手慣れた様子で配線を完了すると早速ゲーム機を起動させた。

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