新たなクエスト4
「人は我らを敬遠す」
師匠はそう言いながら、私の願いを聞いてくれた。
「力は禍を呼ぶ」
「過信せず」
「自制せよ」
言葉は少なかったが、とても穏やかな日々だった。…………エルルのちょっかいがなければ……ね。
エルサドルは、空書で魔方陣を描きながら話し続けた。
「300年前、黒光が灯り、光は弾け闇が浸透。闇は陰を招、陰は陰鬼を喚。陰鬼は心を惑。今居るは、正気保てし者の末裔」
なんか、壮大な歴史を語りだした。
「アイ、始まりしルウベランは皆無。ゆえに不使用」
「!!!?」
天井いっぱいに描かれた魔方陣が赤く光り出し、エルサドルのはめた指輪に降り注いでいった。
「よく居られた」
「!?悪かったわね。歴史に無知で」
ゲーム設定無視して好きに過ごしていただけなので、世界事情には興味なかったんです。……ってか、カードの模様はやっぱ文字だったか!
「私は帰りたいだけなの」
はじまりの町が無くなったのは想定外だけど、町や村が魔物に襲われるのは稀にある。緊急依頼が発注され、仕損じたのだろう。何事も事前準備は万全でなくてはね。私達は常にポーションや武器をいくつも持ち歩いている。
どちらにしろ、店は帝都にある。大きな街の方が色々と都合が良いのだ。
若干、エルフは語意が分かりにくいが、行き方を教えて貰おう。
私が話しかけようとする前に、エルサドルは指輪を私に差し出した。
「左中指に」
「何これ?」
「補助」
エルフって本当端的、主語、述語、修飾語、全て使って話して欲しい。ため息をつきながら、渡された指輪を指に着けると、魔法だろう。ぴったりと指に嵌まった。
「護り?……違うな?拡張?」
鑑定もレベル1じゃ魔法がかかってるしか分からない。早急にレベル上げしないと覚束ない。
「調和」
だ・か・ら、具体的に言ってくれ!!
「それより、帝都に行きたいので、場所教えてください」
その問いには答えてくれず、扉が開けはなたれた。
精霊女王エルサドルは、生きた魔導書であり、歴史書である。閉鎖的な性格で、人と話す事は滅多にないと伝えられている。
この部屋は、精霊女王が唯一顕現出来る空間であり、昔はエルフとの交渉の場だった。
突然扉が勢いよく開け放たれ、突風と共に少女が飛び出して来たので、慌てて受け止めた。
「あぶ……危なかった」
腕の中の少女に怪我は無さそうだが、弾き出されるとは聞いていなかった。
「信じらんない!!問答無用で追い出す?」
「!!?」
「はぁ…………あ?すみませんです。助かりました」
「…………あぁ」
いつの間にか、少女の言葉が分かるようになっていた。精霊女王が何かしら施したのだろう。
「あれ?!言葉が通じてる?良かった!!私はアイ、チーム[インクル]の探索者です」
言葉が分からない時には感じ無かったが、随分利発そうな娘だ。
「俺は、ハイドマークだ。よろしくね……もう遅いので、用意してもらっている部屋に行こうか」
辺境伯邸から此処までかなり距離がある。急な予定に迅速な対応してくれた辺境伯夫人の手腕には恐れ入る。




