新たなクエスト2
ここは、VRMMO[ソアーズ]の世界。
この世界の1日は、本来の8時間くらいになる。どれくらい意識が無かったのか分からないけど、夕方にはダンジョンに行く約束があった。
「遅れるとアルうるさいんだよなぁ」
一刻も早く合流せねば!!
「帰りたい」って、どうにか伝えようと試みた……が、頭を撫でたり、抱え上げながら背中をトントンされ、おもいっきりあやされてしまった。
そうこうしているうちに、応接室のような所に連れて来られた。
大きな飾り窓から日が射し込み、部屋全体的にとても明るい。
窓の両脇の壁に蝋燭立てが取り付けてあり、天井の大きなシャンデリアにも蝋燭立てが見えた。
「取り付けも、掃除も大変そうだなぁ」
中央に、柔らかそうな4人は座れそうな大きなソファーが向かい合わせで置いてあり、一番奥……暖炉前の一人用ソファーに女性が座って居た。
その横に、さっき出て行った青年が手を振って笑って立っていた。
目の前にスリーティアーズ、取りにくいと思っての事だと思う。全ての種類をお皿にのせて目の前に置いてくれた。
ソワァーに座らせてくれたのはいいんだけど…………なんか私の周りに座った青年達にじーと見られてて居心地悪い。
食べるまで、見られ続けるのか?これ??なんとも言い難い雰囲気の中、サンドイッチを食べ始めた。
ここでの食事は、体力回復効果がある。味や匂いは、五感で記憶にある物は、感覚的に再現されるらしい。なので、目隠し状態で食べると無味無臭。見た事も食べた事も無い物も同様に感じる。
幸い、目の前にあるのは食べた事がある物なので、味はする。
ケイは、太る心配無いからとケーキばかり食べてたっけ……アルが負けじと肉をほうばって、エヌは、アレルギーで食べられなくなった海老や蟹を食べ続けてたなぁ。
みんなとの食事風景を思い出しながら食べ続けてると、少しずつ落ち着いてきた。
どうやら魔力だけじゃなく、体力もかなり消耗していたようだ。
落ち着いた事で、冒険者カードに模様みたいのがあるのを思い出した。あれってこの世界の文字かも知れない。
「ーーエルサドル」
不意に懐かしい名前を聞いた。精霊術を学ぶ目的で、一時期エルフの隠れ里に滞在していた時、めちゃくちゃ遊ばれた記憶が蘇った。