会談
「神聖人か」
「まさか職業だとは」
「失われた知識はなんと多いい事」
防音効果が施されている城の一室。ここ以外での会話は常に晒されている為、必要最小限の言葉しか出来ないでいる。その為、ここは唯一安心して話せる部屋と言えた。
「レベルが一桁で授かった場合、生涯で二桁にならない可能性が高いとも言っておりました」
現聖女はLv4の時に授かっている。元々聖女は、教戒所属で滅多に表に現れない為、真相が分かりにくく神聖化しているのが現状だった。
「彼の娘は今後どうしたいと言っておった?」
「自身の職業が複合職の可能性を視野に入れており、魔物討伐を希望しております」
「複合?」
「生産と戦闘の両方です」
「なんと」
「それと、こちらを御覧ください」
青色の液体の入った小瓶を4本机の上に置いた。
「左から上級薬、中級薬、通常、下級薬だそうです。そして、こちらが我が家にあった回復薬です」
中級の隣に一瓶、下級の隣に一瓶置いた。
「現代の上級は中級と同じであり、通常が下級と同じだそうです。下級だと思っていたのは、失敗作だと言われました」
失敗作だと言われた下級は、擦り傷程度の痛みを取るか、傷を塞ぐかのどちらかで、使った者の運が試されるような、あっても無くても良い薬だ。
「こちらの上級は欠陥部位は治りませんが、死んで無ければ、一瞬で通常状態に回復するそうです」
「其処まで回復するのか」
「失えし物は戻らぬのが同然だが、上級の効果は凄まじいな」
「いえ、それが………」
それは、まるで夢物語のような話。もし、手に入っていたら喪わずにいたと思ってしまう。
「傷と病を治す万能薬があるそうです。上級であれば失った部位も失明や聴力なども元に戻ると言っておりました」
「そのような薬が!?」
「神聖人のみ作れる薬……と」
事故なのかは定かではないが、幼い少女が300年の時を越え現在に顕現した。
はっきりとは言わなかったが、恐らく聖女になっていた事があるのだろう。でなければ、此処まで詳しく知っているとは思えない。
5才で探求者になるくらいに緊迫した時代に生きていたせいか、6才とは思えないほどに大人びている。
「ただ、今は作れる者は居ないと思われます」
「……惜しいことだ」
室内にベルが鳴り響き、突如何もない壁に扉が出現した。扉が開き、時間に正確な方なのに珍しく遅れて到着されて来た。
「遅くなりました」
「何かあったのか?」
「迷子になっていた愛子を送り届けておりました」
向上心があり、賢い娘なのだが、方向感覚が極端にずれている。
「!お手間を取らせて申し訳ございません」
「構わぬ。しかし、一緒に迷宮に行って欲しいと強請られてしまった」
「!それは」
「渇望する物がある所だそうで、私の力を貸して欲しいと言われたのだ」
不思議な事に自分以外の友人も時を越え会えると信じている。一番の望みは、その友人達と再会する事のはずなのだが……………。
「彼の娘は、何を求めておるのだ?」
「耳にしたのですが、解りかねます。誰しも持って居た所持品が壊れたので求めてると申してました」
「誰しもか………その品、気になるな」
失った知識、技術。再現出来るのであれば甦るのが好ましい。
「レグザを呼ぶ」
「!それでは」
「承諾させよう」
「異例な対応ですな」
「しかし、実力者なのだろう?」
「レベルが低ければ同じだろが」
前例が無かろうと、味方にしたい特別な存在である少女。人との関わりを極端に避ける精霊女王が、唯一優遇した人物。
「私も許可を頂けますか?」
「………難しいな」
立場上、王宮を長く離れられない方だ。迷宮探索など行けるはずもない。
「では、これでは?」
「ぐっ!そ、それは………」
机の上に置いた装飾品に見える魔道具を見て嫌な顔をなされた。
「同様な体格なら問題ないかと」
強く思い描いた幻影を纏う魔道具。使い方次第で非道い有り様になる代物だ。
「課題は使用の膨大な魔力消費量かと存じます」
「人選は限られるな」
「一考しよう」
「ありがとうございます」
単独行動は絶対に回避せねばならない。あの娘は、独りにすると危なすぎる。行動を共に出来るのが、一部の人物しか居ないのが難しい。
「あのお方ならご存知なのでしょうが、滅多に訪れてくださらないし、お声もくださらない」
「………子供達の事といい、本当に居るのか?」
「恐らくは助言かと」
「視野が高いお方だ」
本音が言える空間だからこそ、言葉は尽きない。胸の裡をさらけ出す。
ただ、ここに居る一同。これ以上問題が起こらずに社交期間が終わるよう願っていた。




