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子供の社交

「シアお義兄、お帰りなさい」


 社交時期(ソーシャブルシーズン)が来た。夕方から早朝にかけて行われるらしい。

 明日から始まるらしく、夕方には義母様が到着するらしい。


「アイちゃん、久しぶり」

「止めんか!」


 抱きついてこようとするルイ兄をハーク兄が止めてくれた。ありがとうございます。


「ハーク兄これ持って」

「ん?」

「高く上げて」

「??」

「離して!」


 ピンと張った糸が風を受けて、凧を空に浮き上がらせた。


「「「!!?」」」

「……こうやって糸を引っ張って調節しながら上げてくの…はい、ラック兄!」

「あぁ……」


 そのままラック兄が書いた凧を渡した。書いた物が気になって、帰宅前に一緒に遊びに来てくれたみたい。


「糸を伸ばしてもっと上げる事も出来るよ?高ければ高いほど、風の抵抗が強いから調整が難しいけどね」


 書いた物の本人に凧を渡してく、みんな茫然と受け取ってくれた。


「面白そう!誰が一番高く上がるか勝負だ!!」


 案の定、ルイ兄が勝負を挑んでる。うん、うん、楽しんでくださいね。電線がある現実(むこう)じゃ住宅街で凧揚げなんて考えられ無かったな。


「……これは子供の遊びだろう?私がやる必要ないだろ?」

「まぁ子供の遊びだけど、元々は親が子の出世と健康を願い空に上げた願掛けだったんだ」

「ほう、願いを…な」

「では、お義父様はこちらをやってみませんか?」


 勢いよく投げると、独楽(こま)は回ってその場に留まった。


「こうやって、縄紐をぎっちり巻き付けて勢いを付けて放つんです」

「ぶつかって、倒れそうだが?」


 先に回っていた独楽が、後から放った独楽にぶつけられてバランスを崩しはじめていた。


「その場合、縄紐を使いバランスを整えます。こうやって、どちらが最後まで残ってられるか競うので喧嘩独楽って言うの」

「アイシェル様、こちらも何か云われがおありですか?」

「たしか、物事が上手く回ったり、子がまっすぐ立って育つだったかな?これも縁起担ぎだね」

「………………なんにでも願いを込めるのだな」


 正月は、言霊(ことだま)に乗せた縁起物ばかりですからね。


「………でね、お義父様これ玄関に飾っていい?」

「何だこれは?」

「しめ縄、魔よけの意味もあるけど、神様が幸福を運んでくださるようにって、願いを込めた神様の通り道になるの」

「ほう、なるほどな。良いぞ…………頼む」

「はい」


 執事が預かり持って行った。


「こうゆうのは、いつもやって居たのか?」

「…………年の始めにしてたんだけど、親族が集まって近隣に挨拶回りしていたのが、社交時期と似てるから同じ考えで良いのかなと思ったの」

「時期を変えて問題無いのか?」

「風土の違いで年末付近にやってた所もあったよ?人が集まると賑やかになって良い物も集まるけど、悪い物も集まりやすいって考えで、吉兆や魔よけの縁起をかついでたんだ」


 お祀りは、お祭りとして土地ごとに色々あったけどね。全国規模で一斉に行われたのは正月だ。


「後は、収穫の感謝と豊作の祈願を沢山のご馳走と、賑やかな集まりで神様に祈り過ごすの」

「なるほど、豊かな心がけだな」


「アイ、そのしめ縄とやらは、我が家の分もあるのか?」

「一応作ったけど………いる?」

「ああ」

「なに、なに何?僕にもちょうだい」

「あ、馬鹿余所見すんな!凧が!!」


 あ………………………落ちた。あれは、ほどくより付け直した方が早いな。


「……これは、いつまで飾るのだ?」

「期間中、終わったら焼いて終わりです」

「焼くのか?」

「来てくれた神様に感謝を込めて送り火にするの」

「そうか、神に感謝か…教戒とは違うな」


 教戒………宗教かぁ、信仰って難しいんだよな。歴史上それで争いもあったみたいだし、何て言ったらいいんだろう。


「土地神………いや、守護してくれている……う…んと、精霊…?そう、精霊!神様と精霊を一緒と考えてたの」


 多分…だけど、考え方間違って無いと思う。


「なるほど精霊信仰か」

「………だから言語が違ったのか」


 なんか勘違いされてるぽいな。訂正すれば、よけいおかしくなりそだし、そのままでいっか。


「あ……凧、直しとくね」

「ん、アイ問題ない」


 シア義兄、器用!手伝ったら、よけいこんがらがっちゃいそうだし任せちゃお。アル兄とルイ兄は、手持ちぶさただったら独楽で遊んでもらえばいいか。


「あら、あら、あら、賑やかね」

「……?」

「まぁ、何故浮いているのかしら?」

「シリィ早かったな」

「えぇ、お天気が良かったからかしら」


 この人がノーレッジ侯爵夫人。義父様が緑の瞳に白茶の髪だったから、シア義兄は、髪の色と見た目は母親似なんだ。


「ご無沙汰しております。ナトラークで………」

「久しいな、ノーレッジ侯爵夫人。私の事より、義娘(これ)と話すといい」

「まぁ、アイシェルね?」

「はい、初めまして」

「レトラ伯爵夫人に頂いたと聞いたわ」

「え、はぁ?」


 レトラ?誰??


「私もいくつか持って来たの、後で一緒にあわせましょうね」

「あ……………はい?」


 なんの事かさっぱり分からないけど、急に出来た義娘に嫌な感じはしてないみたい。

 時間的にそろそろお開きかなぁ?黄昏に染まりつつある空を見上げ、凧を下ろしている皆に言った。


「凧、良かったら持って帰って、お土産です。自分専用(そのために)に書いてもらったんだから」

「いいのか?」

「ありがとう、アイ」

「アイちゃんありがとう」

「悪いな、今度何か持ってこよう」

「良かったらこれも」


 ポケットに入ってた竹トンボを両手で擦るように持ち離すと、回転しながら空高く飛び上がった。


「これらの販売してもいいか?」

「……販売?」


 独楽は分かるけど、凧と竹トンボって大人が子供に作り方教えながら一緒に作って、その場かぎりの玩具だったからな。


「いいけど」


 売れるのか?


「玩具なら別のも作ろうとしてるから、そっちの方がいいと思うけど」

「ほう?それは楽しみだ」


 あまり期待しないで欲しいなぁ。


「しかし、なんで玩具なんぞ作ろうと思ったんだ?」

「だって社交でしょ?」

「ああ、交際が目的………まぁ、面倒なつきあいだな」

「思ってても言うなアル」

「子供にとって遊びが社交でしょう?」

「「「は?」」」


私らは、サマースクールが社交だったかも、一緒に居るうちに仲良くなって、会えなくなってもお互い連絡だけは続けてきた幼馴染み達。


「子供の社交か、考えた事もなかったな」

「そろそろ帰らないと」

「だな、またなアイ今日はありがとう」

「アイちゃんありがとう」

「そうだアイ」

「ん?」

「お前、私達の前だけならいいが、他の人にが居る場では「様」を付けろ」

「あ゛」


 やっぱマズイ?今まで何も言われ無かったから、そのまま言ってた………そう言えば、義父の事も「お」を付け忘れた事あったかも?(やしき)では、執事が居るから間違えて無いと思う。


「シアの事もだ。分かったか?」

「……………はい」

「まぁ、いいじゃん?アイちゃん、まだ小さいんだしさ」

「だからだよ?少しずつ馴れていかないとな」

「俺らだって、私事(しじ)公事(おおやけごと)じゃ違うだろう?」

「そうゆう訳だ。後々困るのはアイだ。その事考えろルイ」


『アイ』


 何故か、幻想世界(ゲームの中)での人物像(アバター)の幼馴染みの顔が浮かんだ。


『ありのままで良いんだけど、もう少し人との距離感考えてみて』


「ラック様ご忠告ありがとうございます。以後、このようなことを繰り返さないよう、厳重に注意してまいります」


 名前覚えて無いので、愛称で呼ぶのは勘弁してください。


「!アイちゃん、それは寂しいよ」

「え?」

「俺達もお前の兄だ」

「縁はシアと兄妹になったけど、兄だと思っているよ俺も」

「………あの」

「ラックも…ね」

「ああ、異存はない」


 距離感がまだ良く分からないけど、今までどうり呼ばせていただきます。


「ありがとう、お兄様方」

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