新たな生活の始まり
「学童に行かないか?」
執事に見守られながら、自分の名前と数字の見本文字を見ながらの反復練習をしていた時だった。
「学童?」
「交流を目的として、子供達が数週間通う所だ」
へーそんな所があるんだ。児童保育みたいなものかな?
「アイシェルより年上ばかりだが、文字や計算などの基本的な事も教われる」
「御披露目の意味合いもございます」
「御披露目?」
「将来的に、ご友人となりうるのかと言う事でございます。ガルシアル様とご一緒のご友人達をご覧になりましたアイシェル・ノーレッジ様ならご理解いただけたかと存じます」
な……なるほどね。
でも、私そんなに長く居るつもり無いんだけど?
「分かりました。行きます」
「そうか」
私の為を思っての事だって分かるからね。行きますよ。
「名前には馴れたか?」
「氏名で何度も言ってくれてたので覚えました」
「アイシェル様、よろしゅうございました」
おぉーよっしゃ!苗字取れた。嬉しさで、ぐっとガッツポーズをとってしまった。あ、まずったか?
「社交界の期間中、領地から貴族達が帝都に集まるのだが、その期間だけ催すのが学童だ。本来、8才以上13才未満の子供達の集まりだが、アイは特別に入って良いと通知が届た」
良かった気にしてなさそう♪義父様も呼び方変わったし、OKって事でいいですよね。
「へー沢山集まるんだね。そんなに大勢何処に泊まるの?」
「皆様、ご自身のお屋敷においでになります。当家も奥様がお越しになります」
なるほど、別宅って感じになるんだ。昔の参勤交代の為に屋敷作ったと同じになるんだな?しかも奥様ね…………………………………奥様!?
「アイに逢うのを楽しみにしていたぞ」
居たんだ奥さん!!
「奥様はご領地をお引き受けなさっています」
私、文字より先にノーレッジ家の事、知らなきゃいけないんじゃない?
「そう心配するな、シリィは人当たりがいい」
シア義兄みたいな感じって事かな?滅茶苦茶癒されるんだよね。
「期間中はガルシアル様もおいでになります」
「その間だけ学院も通いになる」
あっ、分かった!あれか?お年始の…挨拶的な………………新年会!!なるほど、なるほど。
「じゃあ着飾るんだね」
「まあ……な」
正月も晴れ着に着替えるし、子供達の集まりか。
「玩具は?」
「!?玩具だと?」
「知育玩具みたいなのってあるの?」
「なんだ、それは?」
「んと、遊びながら学ぶ?物…かな?」
「いや、そういった物は無い」
児童保育とはちょっと違うか。
「そんな物必要か?」
「あーと、ちょっと待ってて」
部屋に戻り、あらゆる所にあるカードを回収して義父様の所に戻って来た。
「これね、執事に頼んで部屋にある物の名前を書いて貰ったの」
「絵が書いてあるな」
「私が書いたの……下手だけど、こうやって字と物を覚えようとね」
手のひらサイズの小さなカード、分からないだろうけど、平仮名でフリガナも書いてあるのです。
「なるほど、面白いな」
「こーゆうのって無い?」
「無いな」
「そっかぁ」
作れよ!クリエイター!!
「他にもあるのか?」
「いや、今までVRでまでやろうとは思わなかったし」
「…………?」
「……あ、あの…遊び道具なんて持ってきてないよ。ここには冒険者登録に来たんだからね」
「……それもそうだな……しかし、昔は玩具があったのか」
あぶっな、流暢に話すからつい、指示動作人物って忘れそうになるんだよ。ここはゲームの中、私自身がバグの可能性あるけど、彼等はプレイヤーでは無い。ぽろっと本音言うの気を付けよう。
「普通の玩具も無いの?」
「息女には、人形があったな……いるか?」
「いい、いらない」
「子息には剣を持たせる…後は馬だな」
玩具では遊ばないのか。RPGに力入れすぎだな。ミニゲームとかも無かったな、遊び心が無さすぎる。
「分かった」
執事に手招きして目線をあわせてもらい耳打ちする。
「できる?」
「……ご手配させていただきます」
その間に出来る事しとこっかな。
「なんだ?」
「ん?」
正月って言えばあれらでしょ。
「シア義兄が帰って来たら一緒に遊ばうと思ってね。その準備♪」
「アイシェル様こちらを…取急ぎ、準備出来ました分でございます」
夕方、執事が収納鞄を渡してくれた。中から立派な竹が出てきた。思っていたより太いけど、いいね。
「ありがとうございます」
鞄を返そうとすると、それを止めてきた。
「?」
「容量分お入れいたしました」
「………………それってどれくらい?」
「おおよそ、こちらのお部屋と同じでしょうか」
「!!?」
あーまずった。最後に言った物だけ沢山欲しかったのであって、他はそうでも無かったのに……まぁ、色々使えるから後で考えよう。
「他にも、ご到着いたしたようです」
一番、沢山欲しかった物以外が届いた………量が多いいので、鞄はそのまま持っていていいと言ってくれた。
色々と空間収納から魔道具を取り出す。
「お祖父ちゃんの趣味DIYを一緒に作らされた経験が役立つとはね」
魔道具と加工している素材とで部屋の中はいっぱいになっていった。
「これはなんだ?」
水を張った入れ物に加工した木材を沈めているのを見て義父様が尋ねてきた。
「調湿を利用しようと思って加工中」
「調湿?」
「技能力低すぎて直接作れないから、魔道具と素材の特徴を利用して作ろうと思って」
「………大工をやってた事があるのか?」
「ん?まぁね。それもあるけど、昔住んでた所が山奥で、町に行くのも大変だったから欲しい物は皆、自分達で作って暮らしてたの」
お祖母ちゃんは手芸が趣味で、一緒に付き合わされてるうち、ミシンより手縫いの方が得意になったものよ。
「…………………………そうか、それ出来たら見せてくれるか?」
「うん、そうだ!お義父様1つお願いあるのですが、できたら執事にも」
「なんだ?」
「私にもでございますか?」
「この紙いっぱいに、絵でも字でも好きな物書いて欲しいの」
「なんでもいいのか?」
「もちろん、本当はシアお義兄様達にも書いて欲しいんだけど……会えた時かな」
「宜しければ、ご送付いたします。お早めのご対応をご所望いたしますか?」
「できれば」
「そのように、ご手配させていただきます」
「ありがとう」
それまでに仕上げて、帰って来たら一緒に遊ぼう。楽しみだ♪




