図書館
「今日から君はアイシェル・ノーレッジ、私の娘だよ」
ノーレッジ家の養女になって初めて迎える朝、今日はノア義兄が学院に帰る日です。
なんでも寮があって、生徒は入る仕来たりなのだそうだ。ノア義兄の友達たちも一緒に帰るんだけど、その前にみんなで図書館へお出かけです。
「部屋以外で外さないで」
ノア義兄は、左手首にブレスレットを着けてくれた。手首にぴったりはまった瞬間、少し熱を帯びたように感じた。
「ノアそっくり」
「…?そんなに似てる?」
「うん、うん可愛い」
「そっかぁ」
空間収納から赤い宝石の付いたペンダントを取り出し、ルイ兄の正面に立った。
「お兄ちゃん、ちょっと」
「なに、なに?」
目線を合わせようと、しゃがんでくれた首にネックレスをかけた。
「お兄ちゃん、私可愛い?」
「もちろん、可愛いよ」
その瞬間、ネックレスの宝石が光りだした。
「ぶっ!」
「「「!?」」」
「ぶははは、ルイ…あははは…か…可愛い…ぞ」
「え?そう似合う?」
アル兄、喜んで貰えてなによりです。
「ルイ頼むから、それを外してくれ」
「えー、アイちゃんが着けてくれたのに……嫌だよ」
「ルイ、外せ!」
「ラックまで酷い」
「時間が無いから、そろそろい…………………………」
あ、義父様固まってしまった。
「ハーク、身柄拘束!」
「は!」
ラック兄の言葉で、ハーク兄がルイ兄を羽交い締めした。それをはずそうとルイ兄が踠いている。
「酷いよ、ラックのバカ!ハークの意地悪!!」
「ぶははははははは」
「黙れ!」
幼い女顔で逞しい身体の人を押さえる男性と、それに迫る男性を見てお腹を抱えて笑う男性。うん、シュールだ。
「アイ!二度とルイに渡すな!!」
息を切らしながら、ラック兄がペンダントを突き返してきた。ペンダントを外されたルイ兄は、元の姿に戻っていた。
そう言えばノア義兄は?
ノア義兄はソワァーに座って目を覆って項垂れていた。
あー、ごめんなさいです。
「はぁ、出掛けるぞ。ノーレッジ候頼む」
「え!?あ、はい」
義父様、失神してたんですね。心労かけてすみません。
帝都は王宮を中心に南側を貴族街、北側に露天や商店に住宅、工場がなどが建ち並ぶ。商人街に隔離されている。
王宮の左右端に、それらを往き来出来る門があり、東を貴族、西を商人が通る門と別けられている。
馬車で商人街へ向かう。義父様と私を膝に乗せたシア義兄とラック兄とで1台、ルイ兄とアル兄にハーク兄で1台と別れて、2台の馬車で商人街へ向かった。
「アイシェル、あれは何だったんだ?」
「…………んん?あーあぁ、あれね。強く思い描いた人物の幻を纏う魔道具」
「ほぅ、それは興味深い」
「いる?」
「いいのか?」
あっぶな…一瞬、呼ばれてる事に気付かなかった。私が、あまりにも名前を覚え無いので、義父様は姓名を呼ぶようになった。因みに、執事は氏名で呼ぶ。
空間収納からネックレスを取り出し義父様に渡した。
「失敗作だよ」
「何故だ?十分魅力的だ」
「体格そのままだったでしょ?構築間違えたの」
レベル上げの目標数こなす為に、最後の方適当になってた気がする。
「まるでアイが作ったようだな」
「そだよ」
馬車の中に沈黙がともった。
「おまえ、司書だと言っていただろが!!」
「んぁ?司書もやってたんだよ」
「まて、まて、まて!アイ、お前いくつだ?」
「あれ?言わなかったけ?6才だよ」
いや、何?そんな得体の知れない者みたいな眼で見ないでよ。
「魔道具師してた?」
「レベル上げだけね。創るだけ作って、とっとと転職しちゃった」
「「…………」」
シア義兄は変わらず居てくれますね。癒されます。
「アイシェル、探索者になったのは何歳だった?」
「5才」
見た目は幼女でも、中身は15才です。……いや、もうすぐ誕生日だったから、約、16才です。
「驚異的だな」
門を出て少し行った所に、円筒状の青い廉価造りの建物が見えた。暫くすると馬車が停車した。
「では、その叡智。垣間見ようか」
本を守る為、建物に窓は無い。照明は壁に取り付けられた魔道具だけだ。シア義兄と手を繋ぎながら室内へ入って行く。
「で?カードをどう使う?」
「その前に、私図書カード作った方がいい?……前のはあるけど」
「……作ろう」
正面中央に、建物と同じく円型の受付がある。義父様が新規登録の手続きをしてくれた。
「文字が読めないのによく勤まったな」
まったくです。
「言われた事だけしてたので」
「アイちゃん可愛いから、たくさん可愛がられたんだよ」
ルイ兄が頭をがしがし撫でてきた。
「止めろ!お前は度が過ぎる」
アル兄って苦労性。ルイ兄に振り回されてますね。うーん、髪がぐちゃぐちゃになっちゃったな。
「それで、カードをどうするんだ?」
「あい、検索する」
検索機は受付の真裏に3台設置されている。ボールチェアのような形で、今は使っている人は居ないようだ。
この世界に電気器具は無いので、検索機も魔道具だ。
「図書カードを検索機にセットして」
右下の挿入口にカードを入れると、光り出した。
「本来は両手を置いて調べたい資料を言うのですが、先に冒険者カードを置きます」
下に置いてある踏み台を、乗りやすいようにハーク兄が手前に出してくれた。
「ありがとう」
踏み台に乗り、検索機にカードの表面を置いた後、右手を画面に置くと、挿入口からカードが出てきた。
「あとは通常と同じです。図書カードが道を示します。カードは表面を置きます。専門棚なので、本人以外入れません。あと、其処から持ち出せないので注意してください」
シア義兄が髪を撫でて整えてくれた。
「行ってきていい?」
「ああ、正午までに受付に戻ってくる事。約束だ」
「うん!分かった!」
「気をつけて」
「はい」
側面に上へ行く階段が螺旋状に付いている。足場の角は無く、丸みをおびている。2階から建物に合うように丸く内側に本棚が並んでいる。カードは案内するように光り指し示ている。
「随分上へ行くなぁ」
最上5階に到達した時、光りが導く通り内側へ進むと、景色が一変した。
「って何?この量!!」
今まで数冊しか無かったのに、どう見ても図書室規模の量だ。
試しに近くの本を取って見る。何の反応も無く、パラパラ捲るも幾何学模様に見え、全く読めなかった。
「戻るか」
読めなければ居てもしょうがない。踵をかえそうとした時、啜り泣く声が聞こえた。




