序章
「わざとらしい嫌がらせしやがって!!」
ルティアスが大声を上げて騒ぎだした。
「陰険だな」
サイッアルが同意する。
「騒ぐな!魔物に見つかりたいのか!!」
ハイドマークが、地図を握り絞めながら怒りだした。
「「いや、ハークの方がデカイ」」
魔物も出る北側のグビアナト森林。
校外学習の一貫として、[冒険者ギルドで請け負った依頼を3日以内に完遂させる]課題を受けて、クラスで組んだ4人の青年達が歩いていた。
「これって絶対Sだよ」
ギルドでは[B、N、M、E、Ex、Mx]と階級があり、自分達の階級以外の依頼は本来請けられない。
ただし、[S]の依頼は例外で得意な人であれば誰でも受けられる。
本来は、ギルド内の依頼ボードに張り出され早い者勝ちで受ける物だが、分け隔てなくする為、学院側がギルドからMランクの依頼を前もって用意してもらっていた。
課題依頼は、公平に一斉に配るはずなのだが、今回の担当者は教戒側の陰険と評判の教師。
おそらく故意的にランク外を織り交ぜて配ったのだ。
「こうなりゃ絶対一番に達成して帰ってやる」
「前向きな考えいいぞルイ」
「アル煽るな!ルイは突っ走るとろくなことが無い」
……と、ハイドマークが言ってる内にルティアスは走り去ってしまった。
「あのトラブルメーカー!じっとしてる事が出来んのか!!」
いつもなら声に反応して魔物が集まってくるのに、今日はとても穏やかな森に逆に不気味な感じがした。
暫くすると、ルティアスが帰って来た。マントにくるまれた何かを運んで……。
ルティアスが持ち込んだ物で騒動に巻き込まれる嫌な光景にハイドマークは顔を歪めた。
「ルイ今度は何を……」
「この子木の下にうずくまってたんだ。呼び掛けても全然起きなくて」
「「「!!?」」」
「他に人も見当たらないし連れて来たんだけど……どうしようか?」
言葉より行動のルティアスには珍しく、ちゃんと確認はしてきたようだ。
いつ魔物が現れてもおかしくない森の中、子供が一人居るのはおかしい。はぐれたか、連れが魔物に襲われたかどちかだと思われる。
4、5才ぐらいだろうか?この辺りでは見かけない黒髪の少女。いつから居たのか分からないが、かなり冷えきっていた。
「一旦戻って報告しに行こう」
ガルシアルの提案に誰一人反対せず、彼らは少女を連れて森を出て行った。