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第一章 楼桑からの使者 4-15



「一体あの髭の男はなに者だ、なにを掲げておる」

 フリッツがブルースへ耳打ちする。

「さあ、わたしにもなにがなんだか一向にわかりません。あのような者、家臣団の中には一度も見たことがございません」


 その時、

「あの者は殿の三代前の大公ブルガさまが、最後まで身近に置き信頼されておった、ペラン・シャーゼンウッド男爵でござる。やがては《《公爵》》・《《大丞相》》になる筈であった男です」

 いつの間にかフリッツの側へ歩み寄っていたダリウスが、静かに説明する。


「ブルガさまといえば、父の叔父御にあたられるお方であったな。たしか武勇公と呼ばれた偉大な大公であったと教えられた。お若くして亡くなられたが、そのまま生きておられたならば大領主聯合(DRM)(グレート・ロード・マールヂュ)なる、いままでに誰も考えもしなかった、途轍もない形の国をお建てになったかもしれんと聞いたことがあるが」


 名前だけは知っているが具体的にどういう人物だったかまでは知らないフリッツが、ダリウスに尋ねる。



「いかにも、殿には大叔父にあたられるお方です。当時はこのダリウスもあのガリフォンも、みな若者でござった、むやみに集まっては政をおこなっている重臣どもの、悪口ばかり言い合っておったものです。それこそいまでは偉そうにしておるブラーディンなど、まだほんの洟垂れ小僧であった。ブルースよ、亡くなったお前の父御もその一味であったのだぞ。われらはブルガさまの下で一つの集団を作っておってな、それまでの古めかしい習慣や堅苦しいしきたりを、なんとか変えようと必死であった。大きなお心と自由な考えを持っておいでであったブルガさまは、そのようなわれらをなにくれとなく庇って下されていた。そんな集団の中心となって、ブルガさまに最も寵愛されたのがあのペランじゃ。大聯合構想の元を発案したのもあの者だった」


「・・・・・」


 フリッツ、ブルース、エメラルダの三人は、ダリウスの語る昔話しに黙って聞き入っている。



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