第一章 楼桑からの使者 4-13
「なんとも頼もしいお言葉ではないか。ブルガさまが生きておいでであれば、俺の若い頃にそっくりではないか、とどれほど喜ばれたであろう」
そういって沈黙を破ったのは、下座にひっそりと目立たぬように座っていた人物であった。
「な、なんと・・・ペランか・・・」
ガリフォンが驚きを押し殺すように、苦い表情で小さくつぶやいた。
「シャーゼンウッド、おぬしペラン・シャーゼンウッドか。久しぶりじゃな、また髭を伸ばしたのかペランよ」
ダリウスが大声を上げた。
「ダリウス、貴侯もあい変わらず元気そうだな」
ペランと呼ばれた男が髭に埋もれた顔を、くしゃくしゃにして笑った。
「おぬしいままでどこでなにをしておった、確か最後に会ったのはブルガさまの国葬の夜であったな。あれ以来なぜ姿を隠したまま、出仕してこなかったのだ」
「ダリウス、ここは御前会議の場だぞ。積もる話しは後にせよ」
ガリフォンが、昔ばなしでも始めそうな勢いのダリウスをたしなめる。
「ネルバの若さま、いやいまは宰相殿であったな。ここはひとつ若き大公殿下の新しい試みに従ってみようではないか。変わることを恐れてなんとする、ブルガさまの下でわれらも昔はそうであったではないか」
ペランがガリフォンへ意見する。
「ペラン、お前のように長年出仕もせず気儘にしておった者が、いきなり出て来てブルガさまのお名を出し嘴を挟むと言うのか。お前が自分勝手に暮らしていたころ、残された儂たちがどれほどの苦労をしてきたかお前にはわかるまい。いく度戦を経験したと思っておる、いく度国を左右する政変を凌いできたと思う」
こんな硬い表情と冷たい言い方のガリフォンを、ほとんどの者たちは初めて見た。
意味不明なふたりの遣り取りに、その場の重臣たちはどう対応して良いものかわからずただ傍観するしかなかった。
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