第一章 楼桑からの使者 4-11
「大公殿下のーお出ましであ――る――」
独特な節回しの伝播方の良く響く声と共に、星光宮・政務殿『玄武の間(中会議室)』の大扉が開かれた。
一同が直立して出迎える中、サイレン大公フリッツ・フォン=サイレンⅢ世が、場内へゆっくりと入ってきた。
後方に近衛騎士団司令ブルース・ヴァン=デュマ伯爵、聖龍騎士団第二大隊副指令エメラルダ・サウス=マクシミリオン子爵の二名を伴っている。
奇妙なことに、三人揃って目が腫れぼったい上に赤く染まっている。
その様子は諍いをして泣きはらした、無邪気な幼児たちのようである。
長卓上座へ立つと、フリッツは会議の開始を宣言する。
「みなの者ご苦労である、これよりみなの話しを聞こう」
その言葉に、一同が一斉に深々と礼をする。
「大公さまのご尊顔を仰ぎ奉り、誠に恐悦至極にござります」
礼をしたまま、家臣を代表して宰相が挨拶をする。
続いて大公は、正面に据えられた大椅子に座り声を掛ける。
「一同面を上げよ」
そこで家臣一同姿勢を戻して席に着く。
これがサイレンに於ける、御前会議に入る儀式である。
文言まで一字一句変わることなく、代々続いている習わしであった。
御前会議の出席者は、先の合議の人数よりもさらに増え三十人以上が顔を揃えている。
「・・・・・」
座に着いた家臣たちが、訝しげな表情となった。
「殿、これは一体いかがなことでございます」
宰相・ガリフォン・リュード=ネルバ侯爵の口から、驚いたような声が出た。
「いかがとはなにがだ」
「いや、ブルースとエメラルダのことでございます」
フリッツが腰を降ろした後も、両名はそのまま左右に居並んでいる。
「慣例では護衛の者は、殿のご着座後には退出することになっておりますが、両名はそのままこの場に残っておりますもので」
「余がおるように申したのだが、なにか不都合か」
「いままでに前例のないこと、二人に退出するようお命じください。扉の外で警護に就かせればよろしかろう」
サイレン軍元帥のダリウス・サウス=マクシミリオン侯爵が、憮然とした表情で退出を促す。
「左様、その両名にはまだ御前会議に参列する資格がありません。規則は守ってこその規則、みだりに冒すものではないと存じます。それとも殿はサイレン宮廷内に危害を加えんとする者がおると、われらをお疑いなのですか」
財務卿・ブラーディン・ルルエ=ポルピュリオウス侯爵も不満気に進言した。
ざわざわとした空気が、部屋全体に広がって行く。
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