第一章 楼桑からの使者 4-3
ブリギウス準爵、代々バロウズ家に仕える家令の一族である。
表向きの正式な対応から、奥向きの細やかな差配まで、バロウズ家の一切の実務を執り仕切っている人物である。
又、彼の妹ラキリスは、当主フィリップの側室でもあり、家臣とはいえ大きな政治的発言権を持っていると言われている。
ガリフォンの頭の中に、なんどか顔を合わせたことのあるブリギウスの容貌が思い出された。
その言動はなに一つそつがなく、ただ忠実に主に仕えている家令そのもの。
しかしその実、慇懃無礼なものの言い方といい、時折垣間見せる不遜な表情といい、ブラーディンの言葉に頷かざる得ないものがある。
「ここは大事な局面じゃ、ブラーディンにも一役買ってもらおう。二人して使者を務め、必ずよき方向へと国を導いてくれるよう頼むぞ」
「お任せいただきたい」
ブラーディンがにやりと片頬を歪ませる、彼独特の笑みを浮かべた。
「承知・・・」
一方のダリウスも不満気ではあるが、ガリフォンの命に従った。
続けてガリフォンは、
「誠に足労を掛けるがボルス、お前もダリウスに随行してくれぬか」
そういって、若き武人に目を向けた。
「はっ、ご命令とあらばわたしに否応はございません」
宰相の心意を素早く理解したボルスは、立ち上がると軽く一礼した。
犬猿の仲である二人の、緩衝役を期待されての起用なのだ。
頑固な上に直情型のこの老武人を御し得る事が出来るのは、サイレン広しといえどボルス以外には見当たらない。
〝コルデスよ、お前は本当によき息子をサイレンに残してくれた。武ではブルース、そして実ではこのボルスどちらも甲乙つけ難き男だ。死して虎は皮を残すと言うが、お前は素晴らしい息子たちを残してくれたのだな〟
飄々とした風貌の友へ、心の中で彼は語りかけた。
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