第一章 楼桑からの使者 4-2
「このような一方的な頼みごとをするのに、呼びつけるわけにもゆくまい。幸いにも儂はグラームスとも親しくしておる、膝を交えてとくと話せば、きっと家臣たちにも理解してもらえよう。なにせあそこの頑固ものたちの主思いはサイレン一だからな。彼らにへそを曲げられたら、フィリップ伯がどう判断されようが話しが巧く行くことはない」
グリッチェランドとは、バロウズ家が治める湖水地方の古くからの地名である。
サイレン公国が誕生する前から、この地方はバロウズ家が代々領主として統治しており、独立意識が強い土地柄でもある。
そのバロウズ家が擁するのが、バロウズ騎士団と呼ばれる子飼いの軍団であった。
サイレン一といわれる程の、忠誠心の高さで知られている集団でもある。
その騎士長が、先ほどユーディの言葉の中に出て来た、グラームス男爵である。
真っ赤に塗られた巨大な二丁斧で有名な、赤鬼と呼称されるサイレンを代表する豪の者だ。
「おお、ダリウスお主が行ってくれるか、それは助かる。善は急げだ、明日、明後日にでも出立してくれ」
「心得た」
ガリフォンの言葉にダリウスが応える。
「宰相殿少しお待ちください、私も同道いたしましょう。単純な武辺もののグラームスはどうか知らんが、バロウズ家の家令・ブリギウスは中々の曲者、ダリウス一人ではいささか手におえる相手ではない」
横から口を挟んだブラーディンを、不快な表情でダリウスが睨んだ。
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