第一章 楼桑からの使者 3-11
「儂はこの縁組を受けようと思う、みなの意見はどうだ。ヴァビロンのことは別の話しとしても、楼桑国と縁を深くすることはサイレンにとっても利がある。それを相手から申し出てくれるなど、まさに天祐ではないか」
ガリフォンが一同を見回した。
「しかしですぞ宰相殿、先程のお話しからすると、わがサイレンが楼桑国の世継ぎ問題に巻き込まれる可能性が高くはございませぬか。ここは思案のしどころだと思うが」
法務卿であるトリキュス伯爵が、慎重論を唱えた。
「トリキュスの言うことはもっともだ。だがそれを考慮した上で尚、儂はこの話しに乗ってみようと思っておる。この縁組が成れば、楼桑国内での嫡男シリウス殿下の勢いが増大することになろう。そして最終的には次期国王になって頂ければ、それこそサイレンにとっては好都合。これは大きな賭けじゃ。絶対に負けるわけにはゆかぬ賭けじゃよ」
「どうやらお前はガンツ老伯の口車に、まんまと乗せられたようだな。理に敏いお前にしては珍しい、きゃつの漢気に惚れたかガリフォンよ。お主がガンツ殿のことをアルバートと呼んでいるのがその証拠さ。お前ほどの男が信じる人物じゃ、儂もその話しに乗ってやるわい。まあ始めっからこの縁談には大賛成だったのだがな」
ダリウスが賛同の声を上げた。
「わたしは軍人ゆえ、上官の命に従うのみ」
ボルスが冷静そのものと言った態で応えた。
「わたしには男が男に惚れるだの、情だなんだのと言うことはまったく関係ない。そもそも理解の範疇にない、只の愚者の戯言。なにが最良の選択なのかその一時のみが肝心。そうなればこの話しに反対する理由はないことになるな」
ブラーディンも彼独特の言い回しではあるが、楼桑国との縁組に同意する。
「某とて楼桑との縁組そのものに反対する気は毛頭ない。宰相殿がそこまでの覚悟を決めておられるのであれば、この話し進めましょうぞ」
さきほど慎重論を口にしたトリキュスも、一転して賛成の意を示した。
「われらとて異存はござらん」
残りの、外務卿ユーディ、公都行政長官ヒース、内務卿ビンスウェル、情報総監ネールたちも異口同音にガリフォンの案に従った。
こうして重臣たちの間で、大公フリッツと楼桑国の姫ロザリーとの婚姻話は、全員一致で可決されたのだった。
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