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第一章 楼桑からの使者 3-7

 


「今伝えたのが、昨夜儂とアルバート殿との間で交わした話しの大まかなところだ。儂もアルバート殿の意見とほぼ同じ。これは百年に一度、トールン大乱以来といってもよい国難であると思うが」

 星光宮の外宮・政務殿の一角にある合議の間において、宰相ガリフォンの口から居並ぶ宮廷の重臣たちに、この度のサイレンと楼桑の縁組話しの背景にある事情が説明された。


 昨日のごく内輪にての寄り合いと違い、今朝は星光宮の主立った面々が参加しての話し合いである。

 この合議の結果が出次第、大公であるフリッツ臨席での御前会議を開き家臣の総意を伝達することになっていた。


「ふうむ、それでガンツ伯はいつまでサイレンに逗留するお積もりなのだ。こちらとしても、そうそう容易く返事の出来る問題ではないぞ」

 銀色の髪を一部の隙もなく後ろになでつけた、灰色の瞳を持つ長身痩躯の男が、神経質そうな唇をゆがめ自らの存念を語る。

 財務卿のブラーディン侯爵であった。


「ゆくゆくはこの縁組みを受けるにしても、まずは殿のお心を納得させねばどうにもなるまい。いくら国の行く末を左右する大事とは言え、身体を縛り付け猿ぐつわを掛けたまま、婚礼を挙げさせるわけにもゆくまい」

 特徴的な皮肉交じりの冷笑を口に滲ませ、ブラーディンは居並ぶ参列者たちを見渡す。


「まだ言うておらなんだが、アルバート殿は朝一番でフリッツ様に内々に帰国のご挨拶をされ、すでに帰国の途に就かれた。極秘にての来訪ゆえ、国をそう長く留守にすることが出来ぬとのことでござった。これからは互いの密使同士により、連絡を取り合うことになっておる。これは後には退けぬサイレンの運命を懸けた密議だ、みな思うところがあれば存分に議論を尽くしてくれ。われら重臣一同が、心を一つにせねば成就させることはできんからな」


 ガリフォンの話しを聞いた後しばらくの間、各々は自分の頭の中の答えを整理し、又他の重臣たちの気持ちを推し量ろうとでもしているかのように沈黙した。


「ヴァビロン帝国による大陸統一などとそんな大それたこと──。にわかには信じられませぬな。ロルカ王の考え過ぎなのでは・・・」

 最初に沈黙を破ったのは、いかにも人のよさそうな温和な表情をしている、公都トールンの行政長官・ヒース男爵であった。


「いや、あながちあり得ぬ話しではないと思われる。なにせマーベル枢機卿の考えること、おそらく十年、いや二十年をかけての大事業やもしれぬ。軽々しく油断していると、本当に国が亡びることになりかねん。どのように小さな可能性であろうと、すべてに対応する策を練っておくことこそが、政の基本ではないか」

 財務卿ブラーディンは、ガリフォンの話しにある程度の理解を示した。



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