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第一章 楼桑からの使者 3-4



「それで、楼桑国ではこの縁組のことは、みなの了承が得られておるのでしょうか」

「ううむっ。そこでござるが、かなりの者たちが大国であるヴァビロンとの(えにし)を良き話しと歓迎しておるのです。秘かにヴァビロンと気脈を通じている輩もいると噂されているほどで、まだ方針がまとまっている訳ではござらぬのが実情。こちらから話しを持ち込んでおいて、なんともお恥ずかしい・・・・・」

 ガンツが、申し訳なさそうに苦笑いを見せた。


「しかし、ロルカ王の心は固まっておりまする。そして王の側近の者たちはみな、その決定に従っております。なによりも嫡男でありロザリー姫と同じ、正妻であられる故レネヴィア妃のお子様であるシリウス殿下が、サイレン公国との縁組に大いに賛成しておられる。というより、シリウス殿下こそがロルカ王のお心を酌んで、賛同派の旗頭となっておられるのです」


「では、ヴァビロンとの縁組を進めているのは、一体どのような者たちなのです」

「ダ―カイル地方の大領主、ガラムス候ゴズメル・プロ―ネル。確かロルカ王のお母上である王大后さまの弟であり、側室ギャザリンさまの父親でござったな」


「左様、そしてその側室との間に生まれたのが、長子であるヴォーレン・ラン=ローソー王子です。わが楼桑国では近年シリウス殿下とヴォーレン王子、この二人の御兄弟を巡って様々な場面で対立が起こっているのです。儂をはじめとする王の側近や軍事総帥のユンデフォル将軍は、正妻のお子であり嫡男たるシリウス殿下を次期王と考えております。人々は我らを王都であるカーネルの名を取ってカーネル派と呼んでおる。又、長子であるヴォーレン王子こそが次期王になるべきだと押しているのが、豊富な財力を背景とした商業ギルド連合と、大領主ゴズメル侯爵を中心とした一団、通称ガラムス派でござる」



 ガリフォンにはガンツの眉間に刻まれたしわが、殊更深くなったように見えた。



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