第一章 楼桑からの使者 2-⑧
半刻後、一同の姿は「謁見の間」ではなく、来客を饗す為の「来賓の間」の中にあった。
使者であるガンツ伯爵が、謁見の間での公式な面会ではなく、非公式な対面を願ったのである。
「此度は礼を欠いた急な来訪にも拘らず、フリッツ大公殿下にはお目通り頂き恐悦至極に存じます」
楼桑国の老伯爵ガンツは、形式通りの口上を述べながら、正面の大公用の大きな飾り椅子に座っているフリッツに、片膝を床に着けて深々と頭を下げた。
「面をお上げくださいガンツ殿。ここは謁見の間ではなく来賓の間です。そのように堅苦しい挨拶はここまでとしてください」
フリッツが笑みを湛えたまま、気安げに声を掛ける。
「さあ、どうぞ椅子に腰を降ろして下さい。ガンツ殿が座らねば、わが国の年寄どもも腰を降ろせません」
「殿下の温かいお言葉、痛み入りまする」
フリッツに促されて、ガンツが椅子に背を預けた。
それに続いて左右に居並ぶ、ガリフォン、ダリウス、ユーディも椅子に掛ける。
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