第一章 楼桑からの使者 2-⑦
ブルースは、六年前に亡くなった父と同じ年のこの老武人を、親しみを込めて親父殿と呼んでいた。
「その通り。殿もダリウスも大人気ない。このような仕儀をガンツ殿に見られたら、それこそサイレン公国の恥というもの。いい加減にして下され」
ガリフォンが疲れ果てたような表情で、二人をねめ回す。
いつものこととはいえ、子どもの喧嘩のような二人の口論に、呆れ果ててしまっているようすである。
「殿、もう子どもではないのですから、事々にダリウスの挑発に乗ってどうするのですか。こやつの無礼な物言いを、一々気になさる必要はないのです。君主の態度ではござりませぬぞ。――ダリウスも主君に対して少しは口を慎め。これではまるで頑固な老人と、生意気な孫の口喧嘩ではないか」
ガリフォンが子どもの喧嘩のようなことを言っている両者を窘める。
「親父殿も剣など抜いて。本当に可愛い娘を斬ったり出来はせぬではないですか。この前もエメラルダが癇癪を起して大きな石を蹴っ飛ばした際に、足の生爪が剥がれたと聞いただけで、なん日も心配してたくせに」
ブルースがダリウスの痛いとこを衝いた。
「余は、余は―――」
フリッツは唇を噛み締めて、身体を小刻みに震わせている。
「おのれ、ブルースめが、小癪なことを・・・・・」
ダリウスも頭から湯気を立てんばかりの物凄い形相でブルースを睨み付け、右手に持った剣を鞘に戻した。
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