第一章 楼桑からの使者 2-⑤
続けてダリウスが話しを畳み込む。
「ここはどうあっても殿と楼桑の姫の縁談話、まとめて頂かねばなりませんな。われら小国が生き残る道は国同士が手を結び、大国へ当たるしか手はござりませぬ。楼桑がヴァビロンに取り込まれてしまえば、わがサイレン侵攻への先兵として使われ兼ねん。そのまえにこちらが楼桑と縁を結ぶのが得策だ。色恋だの好きだの嫌いだのは、庶民たちの戯言でござる。一国の主には当てはまりませんぬ。古来より縁談こそがその最も分かり易い手段でござる、よろしいな殿」
「そのようなこと勝手に決めるでない。余の婚礼相手は余の意思で決めること。その方らが口出しするものではない」
フリッツが真っ赤になって怒鳴り返した。
「いいや、これはどうしても聞いてもらわねばならん。家臣一同の総意ですぞ。子どものような我儘が通る話しではござりません。もしどうしても聞かぬと仰せならば、儂の皺首を筆頭に、マクシミリオン一族悉くの雁首を御前に並べてでも、この話しまとめて見せますぞ」
「なにを申す。なにが家臣一同の総意じゃ、お前が一人で決めているだけではないか。ダ、ダリウス、お前・・・。余を脅すつもりか――」
フリッツは悔しげに老武人を睨み付ける。
それは単なる脅し以上のものであった。
この頑固一徹な老人は、本当に一族みなの命さえ掛けてしまう恐れがあるのだ。
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