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第一章 楼桑からの使者 1-⑯



「失礼致します!」


 扉を開けると同時に、ブルースは大声を上げた。


 そこでブルースが目にしたのは、大きなソファーに並んで腰掛け肩を寄せ合い、なにごとかを楽し気に語り合っている、主君フリッツ大公と公太后ラフレシアの姿であった。

 それはどう見てもブルースの目には、仲の良い恋人同士、身を寄せ合い囀り合う小鳥たちの姿としか映らなかった。


「失礼致します」

 ブルースは二人に向かって、再び声を掛けた。


「ブ、ブルース・・・」

 フリッツはそこに、近衛騎士団の略装を身に纏った大男の姿を見つけ、唖然とした顔でじっとその巨体を見上げた。


「殿、このような所に居られたのですか。随分とお探し致しましたぞ」

 ブルースは笑みを浮かべた表情で静かにそう言うと、主君フリッツに深々と頭を下げた。


「・・・・・・」


 昨日の今日で太后宮に入り浸っている所を見つけられ、いつもの調子で怒鳴られると思っていたフリッツは、予想外に優しげな態度に拍子抜けしたまま、呆けた表情でブルースを見詰めた。




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