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第一章 楼桑からの使者 1-⑮



 子どもの頃からの習慣で、ブルースはいまだにラフレシアが苦手であった。

 その自分が一番苦手とするラフレシアに、よりにもよって主君のフリッツが恋をするとは。

 いまや諸国に武勇を持って知られるブルース伯爵も、これにはなす術を知らないでいる。


 そのラフレシアの所へゆくのはあまり気乗りはしないが、場合が場合だけにブルースはエメラルダの後ろに付いて太后宮へと入った。


 後宮(サイレン公国では〝内宮〟と言う)へさえ滅多に男は立ち入らないが、それが最奥部の太后宮となると、ほんの限られた人間のみが出入りするだけである。

 ましてや軍人となると、例外中の例外と言えた。


 エメラルダの先導がなければ、幾ら近衛騎士団の指令と言えども、こうも易々と入って行ける場所ではない。

 なにせ、基本的には大公とその一家以外の男の立ち入りが、一切禁止されている場所なのである。

(宦官制度のないサイレン故に、最低限どうしても必要な場合以外に男は内宮には存在しない)



「ここがラフレシアさまのお部屋だ」

 そう言ってエメラルダが立ち止まった。


「ここが・・・」

 ブルースはエメラルダに聞き返した。


 壮大な堂々たる扉を予想していたブルースは、目の前の自分の執務室の扉よりも遥かに小さな扉に、我が目を疑った。

 そもそも大后宮自体が、こぢんまりとした小規模な建物だった。


 それ程に質素な扉なのである。

 しかし地味ながら見るものが見ればそれだとわかる、精巧な彫刻が施されている。


「ああ、ラフレシアさまはなにかにつけて質素を好まれる」

 エメラルダはどこかしら、誇らしげに応えた。


「そ、そうか・・・。あの方は昔から飾り立てるのがお嫌いであったな」

〝本人はあれほど美しいと言うのに──〟

 納得したように頷き小さく身震いすると、ブルースは扉を一気に押し開けた。


読んで下さった方皆様に感謝致します。

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